「嘯いて」の意味
「嘯いて」は「うそぶいて」と「うそむいて」という読み方がありますが、一般的には「うそぶいて」と読まれています。「嘯いて」とは以下の意味を持つ言葉です。
- とぼけて知らないふりをする。平然と言う。
- 偉そうなことを言う。豪語する。
- 動物が吠える。鳥などが鳴き声をあげる。
- 口をすぼめて息を吐いたり声を出す。口笛を吹く。
- 詩歌を小声で吟じる。
このうち、現代において多く使われているのは1の「とぼけて知らないふりをする」と2の「偉そうに大きなことを言う」です。3〜5の意味で用いられるケースはあまりありません。
「嘯いて」の使い方
「嘯いて」の後には、一般的に事物の動作・存在・性質・状態などを表す語を続けます。たとえば「嘯いていた」「嘯いて言う」「嘯いて強がる」のようにです。
「嘯いて」の例文
【1.とぼけて知らないふりをする】
- 彼はその場に居たのにも関わらず、何も知らないと嘯いた。
- 「そんな約束してたっけ?」彼女は素知らぬ顔で嘯いていた。
- 彼は自分はやっていないと嘯いて言ったが、誰もが彼が犯人だと確信している。
【2.偉そうに大きなことを言う】
- 上辺だけの綺麗事を嘯いても、信用を勝ち取ることはできない。
- 「三日で終わらせる」と彼は嘯いていたが、完成したのは5日後だった。
- 彼はなんともないと嘯いて強がっていたが、相当辛いに違いない。
「嘯いて」と「嘘をついて」は異なる
「嘯いて」と「嘘をつく」は、原則として同じ意味ではありません。後述するように、「嘯」の字義には「嘘」は含まれていないのです。
「嘘をつく」とは、事実とは違うことを伝えるという意味で、本当ではないことを言って相手を騙そうとするニュアンスが込められています。
一方の「嘯いて」には、積極的に相手を騙そうとする意図はありません。ただし、とぼけて、あるいは偉そうに発言した内容に虚偽が含まれている場合には、結果として「嘯いて」=「嘘をつく」になることがあります。
「嘯いて」の類語
しらを切る
「しらを切る」とは、「わざと知らないふりをする」を指す言葉です。2の豪語するという意味はありませんが、1の知らんふりをするという意味において「嘯いて」のほぼ同じように用いられます。
「しらを切る」の「しら」の由来には、「知らぬ」の略という説や、「白々しい(しらじらしい)」だという説などがあります。また、「切る」は、思い切った言動をするといった意味です。
【例文】
- 妻が浮気を問い詰めたが、彼はしらを切りとおした。
- 最初はしらを切っていた彼女も、最後には罪を認めた。
しらばくれる・しらばっくれる
「しらばくれる」とは、「知っているのに、知らないふりをする」という意味の言葉です。「しらばっくれる」と表記することもあります。こちらも1の意味の「嘯く」と同じように使われます。
しらばくれるの「しら」は「白々しい」に、「ばくれる」は「化ける」にそれぞれ由来しており、「白々しく化ける」の意味から「しらばくれる」が生まれたそうです。
【例文】
- しらばくれているだけかと思ったが、どうやら事実のようだ。
- しらばくれた顔をしていられるのも今のうちだぞ。
「嘯」の字義
「嘯」という字は、音読みで「ショウ・シツ・シュク・シチ」訓読みで「うそぶ(く)・しか(る)」と読み、主な意味は以下の通りです。
- 口をすぼめて声を出す
- 口笛を吹く
- ほえる・うなる
- うそぶく
「嘯」にはもともと1や2の意味があり、そこから派生して3の意味が生まれました。さらに4の意味へと派生していったと言われています。
「嘯いて」の語源・由来
上述したように、もともと「嘯」は「口笛を吹く」という意味でした。「嘯く」という言葉の由来には諸説あります。
鳥の「ウソ」の鳴き真似
「ウソ」はスズメより一回り大きい程度の小鳥で、人間の口笛のような鳴き声をしています。そのため、口笛を吹いて「ウソの鳴き真似をした」ことが「嘯いて」の由来のひとつとされています。
ウソの鳴き声は細くて悲しげなので、江戸時代には「弾琴鳥」や「うそひめ」などと呼ばれることもあったそうです。
口笛を吹く様子が「知らんぷり」に
漫画やアニメなどでは、とぼけたり知らんぷりをする際に「口笛を吹く」描写がありますね。まさにそのような仕草のイメージで、口笛を吹く様子が「知らんぷりをする様子」にみえることが、「嘯いて」の由来であるという説もあります。