「鎮座まします」の意味
「鎮座まします(ちんざまします)」とは、以下の意味を持つ言葉です。
- 神霊などがある場所にしずまりとどまっていらっしゃること。
- (人や物などが)どっかりと場所を占めていること。
1は強い尊敬の意が込められている表現です。人を超えた存在である「神霊」や「神仏」などに対して、最大級の敬意を示す意図で用います。
一方、2には皮肉や嫌味のニュアンスがあります。高貴な存在でないのにもかかわらず、「人」や「物」があたかもそのように構えている様子をからかう使い方です。
「鎮座まします」の使い方
神霊・神仏などに対して
前述の1の意味で用いる「鎮座まします」は、かなり敬意を強めた表現です。神霊や神仏に対する畏敬の念や思い入れの強さなどを強調したいときに用いられます。
【使用例】
- この神社に鎮座まします神々は、長年この地域の守り神として住民に愛されています。
- 近くの神社に鎮座まします狛犬さまは、この町のマスコット的存在だ。
- 愛宕山に鎮座まします愛宕神社は、出世のご利益があるとのことで多くの著名人が訪れている。
相手をからかうニュアンス
2の意味で用いる「鎮座まします」には、相手をからかうニュアンスがあります。何かが場所を取っている状況を快く良く思っていなかったり、違和感を感じたりしているときに使います。敬意を抱くとは程遠い存在に対して、あえて大袈裟な尊敬表現を用いた皮肉なのです。
【使用例】
- 居間のソファに鎮座まします息子は、横になりながらずっとテレビを見ている。
- ドアの前に鎮座ましますウチの猫は、一時間経っても動こうとしない。
- 大型テレビが鎮座まします私の部屋は、決して広いとは言えない。
「鎮座まします」のインターネット上の用法
もともと、「鎮座まします」は神霊や神仏などに対して用いる表現ですが、SNSなどではただ単に「人や動物、物などがその場所を占めている」という意味で使われているのをよく見かけます。
上記の2の意味、「どっかりと場所を占めていること」に近いですが、ここではからかいのニュアンスは無く、純粋に対象への敬意や愛着などを含んだ表現です。
たとえば、自分が尊敬する人物や、自分が気に入っている銅像やモニュメント、グッズなどがその場に佇んでいる様子を見て「鎮座まします」と言います。
【使用例】
- 駅前に鎮座ましますキティちゃんの人形は、私の唯一の癒やしスポットです。
- スマホのホーム画面に鎮座ましますのは私の推しキャラです。
- 奮発した本日のランチは、鎮座まします大きなハンバーグだよ。
「鎮座まします」の成り立ち
「鎮座まします」は、名詞「鎮座」と、尊敬の意を表す「まします」が組み合わさった表現です。
「鎮座」とは
「鎮座」には以下の二つの意味があります。
- 神霊などがある場所にしずまりとどまっていること。
- どっかりと場所を占めていること。
神霊などに対しては1の意味で、それ以外に対しては2の意味で使います。後者の意味での用法は、その人や物を揶揄したり、相手の様子や容貌などをからかう場合があります。
なお、本来の語意とは異なりますが、神社の創建を「鎮座」と表現することがあります。そもそも神社は神霊がその地に鎮座することによって建てられるので、「神社の創建=鎮座」がほぼ成り立つからです。
「まします」とは
「まします」は「在る(ある)・居る(いる)」の意の尊敬語です。動詞「ます」の連用形と補助動詞「ます」を並べることで敬意を強調しており、「いらっしゃる」よりも強い尊敬を表します。