「是とする」とは?
「是とする」は、(ぜとする)と読みます。日常会話で用いられることは少ないですが、あらたまった文章や、財政界の談話などでは一般的といえるほどに用いられている言葉です。
前時代的な言い回しで、とくに若い人たちには難しく感じられるかもしれませんね。この言い回しの意味を理解するには、「是」という字の意味を知る必要があります。
「是」は、音読みが(ぜ)、訓読みが(これ、この、ただしい)。代表的な意味は下の4つです。
- 正しいこと、道理にかなっていること
- 正しいと考える(是認)
- 正しいと方針、もしくは正しいとした方針(社是)
- これ、ここ、この。
「是とする」の「是」は、1の意味で用いられています。したがって、「是とする」の意味は、正しいことだと見なすこと、道理にかなっていると見なすこと、よしとすること、などです。
「是とする」の使い方
「是とする」という言い回しは、前提としてなんらかの意見や提案、議題などが存在し、それに対して正しいと見なす、すなわち同意を表す言葉として用いられます。
他の用法としては、他者からの要求・要請を、道理にかなっている、よしとする、として受け入れることも「是とする」と表現します。
どちらの場合でも、「是とする」という言葉を用いる際は、その対称となる提案や要求とセットにする必要があることに、留意しましょう。
「是とする」の文例
- 貴社のご商品を当方のイベントとタイアップして宣伝するというご提案、是とする結論に達しました。
- 総務部長は、部下からの検討依頼のひとつであった経費申請の簡略化を是とした。
- 部活動にヨガ部を新設したいという生徒の訴えを是とした校長は、さっそく職員会議を開いた。
- 経営者として、投資の拡大を是とするか否かが思案のしどころだ。
「是」を用いる他の表現
「是」を用いる表現は、ほかにも多々あります。にかよった言葉ながら意味が異なっていたり、まぎらわしくわかりづらいものもありますので、この機会に整理しておきましょう。
「是非」の意味と使い方
是非(ぜひ)は、きわめて多義的な言葉です。名詞と副詞があり、それぞれに複数の意味があります。古語ではまた別な意味がありますが、今回は割愛します。
名詞:大きく分けて次の二つの意味があります。①良いことと悪いこと。道理あることとないこと。善悪。②是と非、善悪を判断すること。批評すること。
- 是非を論ずるのも大事だが、何事もまずは体験することだ。
- 消費税増税の是非について、議論は尽くされたのだろうか。
副詞:①あることを、なんとしても実現したいという強い願いを表します。是非~たい、是非~ください、のように用います。②あることを強く勧める気持ちを示します。是非~なさい、などのかたちを取ります。
- 是非、秋のパリを旅してみたい。
- 是非、この本を読んでごらんなさい。
「是々非々」の意味と使い方
是々非々(ぜぜひひ)は、わけても政治家が好んで口にする言い回しです。良いことは良く、悪いことは悪い、と物事の善悪を客観的に、個人感情を交えず判断することを意味します。
- 複雑に各所の利権が絡む問題だが、政治家として是々非々の態度で判断したい。
- リーダーには、つねに是々非々の姿勢で大局を見る力が要求される。
「是が非でも」の意味と使い方
是が非でも(ぜがひでも)は、是非(善悪)にかかわらず、すなわちなんとしてでも、という強い望みを表す言い回しです。
【文例】是が非でも、この地に高層マンションを建設せねば、街の発展は望めませんよ。