「一端を担う」とは
「一端を担う(いったんをになう)」とは、ある事柄について、部分的に役割や責任を負っていることを指す慣用表現です。簡単に言えば、手助けするということですね。
「一端」と「担う」の2つの語からなる言葉ですので、それぞれの意味についても見てみましょう。
「一端」とは
「一端」はさまざまな読み方がある言葉です。読み方ごと、おもに次のような意味があります。
- いちはな:一番先。真っ先。
- いっぱし:一人前。人並みに。ひとまず。
- いったん:一方の端。片端。全体の一部分。
- ひとはし:一方の端。片端。全体の一部分。
「一端を担う」というときの「一端(いったん)」は、全体の中の一部分という意味で用いられています。
なお、同じ読み方の「一旦」は、一時的に・ひとたびという意味を表す時、あるいは、仮定の条件を表す時に使用する言葉ですから、「一旦を担う」とは言いません。
「担う」とは
「担う(になう)」には、物を肩にかつぐという意味と、自分の責任として引き受ける・ある物事を支えたり推し進めたりするという2つの意味があります。「一端を担う」においては、「担う」は後者の意味で用いられています。
また、「担う」は「荷う」と表記されることもありますが、「一端を担う」という言い回しでは「担う」の表記が用いられることがほとんどのようです。
「一端を担う」の使い方
「一端を担う」は、物事に対しても人に対しても、そして、良し悪しに関係なく、さまざまな場面で用いられます。
- このダムは周辺地域の治水の一端を担っている。
- この時期の増税は、さらなる財政難の一端を担っていると評されている。
- 彼は、チームの活躍の一端を担っていた。
- 結果として、彼女の行動は、プロジェクトの失敗の一端を担うこととなった。
「一端を担う」の類語
「一助となる」
「一助(いちじょ)」は、わずかばかりの助け、少しの足しといった意味で、「アルバイトをして家計の一助とする」のように使う言葉です。
「一助となる」は、多少の助けとなることを指す言い回しで、「一端を担う」と同じように用いられます。
「一役買う」
「一役買う(ひとやくかう)」とは、ある仕事について進んでひとつの役目や役割を引き受けることを指す慣用句です。
「一役」は「一端」と同じ意味ですが、「買う」に自ら進んでという含みがありますので、「一端を担う」よりも積極的に関わっていくニュアンスがあると言えるでしょう。
「一翼を担う」
「一翼を担う(いちよくをになう)」は、全体のうちのひとつの役割を引き受けることを指す慣用句です。「一翼」には、一枚の翼とひとつの役割という2つ意味がありますが、ここでは後者の意味で用いられています。
これは「一端」と同義ですが、「一翼を担う」はネガティブな事柄に対してはあまり用いられないようです。
「片棒を担ぐ」
「片棒を担ぐ(かたぼうをかつぐ)」は、駕籠(かご)を運ぶ際に棒の前方か後方のどちらかを担ぐことに由来する言葉です。ある仕事に加わって一部を受け持つ、荷担することを意味します。「一端を担う」に似ていますが、こちらはおもに悪事に対して用いられます。
「立役者」
「立役者(たてやくしゃ)」はもともと演劇関する言葉で、一座で主要な役を演じる役者を意味していました。これが、物事の主人公、つまり、物事の中心にあって重要な役割を果たす人を指す言葉として、一般に使われるようになったのです。
物事の一部を担うという意味では「一端を担う」に通ずるところがあります。しかし、「立役者」が負うのは一部といっても特に重要な部分ですので、責任の重さに関わらず用いられる「一端を担う」とはやや異なる表現と言えます。