「さもしい」とは?
「さもしい」は、大きく分けて二つの意味をもつ言葉です。
- 心や品性が、卑しくあさましい。意地汚い。
- 身なりや様子、態度などがみすぼらしい。地位や身分が低く、貧しい。
現代日本語においては、主に1番目の心の状態についての意味で用いられています。2番目に示すような、外見や地位などにおける意味は、今日ではあまり使われなくなっています。
「さもしい」の使い方
「さもしい」は、否定的な意味を強くもつネガティブワードです。心や品性が際立って下劣なことを指し、ときに人格を否定しかねないほどの物言いですので、他者に対して用いる時は細心の注意が必要です。
相手に確たるゆえなくこの言葉を投げてしまえば、交流が途絶えてもおかしくないくらい破壊力のある言葉であることを心に留めておきましょう。
「さもしい」の文例
(A男)
台風で避難所に身を寄せた人々のなかには、その間に根こそぎ自宅の家財を盗難されていたケースがあるそうだ。そういうさもしい行為をする盗人は、許しがたいな。
(B子)
直美さんは、つねに4~5人重複して男性と付き合っているそうよ。誕生日やクリスマスにブランド品をねだっては、売ってお金に換えているんですって。そこまでさもしい女性だとは思わなかった。
(C男)
昨今の政治家は、票と権力のためなら理想はどこへやら、風見鶏だったり太鼓持ちだったり、さもしいことこの上ないよ。
「さもしい」の語源
「さもしい」という言葉を見聞きしたことはあるけれど、明確な意味を説明できない、という人は多いかもしれません。その理由のひとつとしては、「さもしい」に漢字がなく、そこから意味を類推できないことが挙げられるでしょう。
現在は漢字はもたない「さもしい」ですが、諸説ある語源からは漢字をたどることができます。ここでは語源とされる言葉を二つ、ご紹介します。
「様悪し」
一つ目は「様悪し(さまあし)」。字のとおりに「様」(人の様子、態度、言動など)が「悪い」という意味です。
「さまあし」が徐々に変化して「さもしい」となったという説は、現在残っている意味から考えても、なかなか説得力がありますね。
「サマナ」
もう一つの説は、サンスクリット語の「サマナ」。当てられた漢字は「沙門(さもん)」で、沙門とは仏教における「僧侶」のことです。
いにしえの日本では、托鉢などをする沙門(修行者)を、外見がみすぼらしいとして蔑(さげす)む向きもあり、ここから「さもん」が「さもしい」に転じたのではないか、と考えられています。
とはいえ、姿はみすぼらしくとも心は高貴なのが沙門ですし、どちらかといえば、「様悪し」=「さもしい」説のほうが有力なようです。
「さもしい」の類語
「あさましい」
あさましいは、複数の意味をもつ言葉ですが、そのなかの、「品性が卑しく嘆かわしい、意地汚い」という意味において、「さもしい」の類語たりえます。
【文例】
- あのサラリーマン、電車待ちの列に並ばず割り込んで席に座るだなんて、あさましい人だな。
「卑しい」
卑しい(賤しい・いやしい)にも意味が複数ありますが、「品位に欠けている、下劣・下品」という意味が「さもしい」と似ていますね。
また、「身分や地位が低い、貧しくみすぼらしい」という意味も「さもしい」と共通ですので、両者はニュアンスがよく似た言葉であると言えるでしょう。
【文例】
- ラグビーのワールドカップ・ボランティアのためのグッズを、オークションで高値で売っている人々がいるそうだ。そういう卑しいお金儲けはしたくないものだね。