「あやかる」とは?
「あやかる」とは、好ましく思う他者や事象の状態に影響を受けたり感化されたりして、同じようになることを指します。
「あやかる」の意味をごくシンプルにいえば、姿や行動をまねることでご利益をもらう、となるでしょう。少々難しい響きですが、「いいなあ、自分もそうなりたい!」というニュアンスで、若者たちの間でも使われることがあります。
「動揺する」という意味もある
「あやかる」にはもう一つ、ある事柄に触れて動揺する、変化するという意味もありますが、こちらは現代の日本語ではすでに用いられなくなっているため、割愛します。
「あやかる」の使い方
「あやかる」という言葉ですが、「あやかる」というかたちの使い方はあまり見かけません。「あやかりました」「あやかった」という過去形か、「あやかりたい」という願望のかたち、あるいは「あやかって」というかたちが一般的です。
ほとんどの場合が、他者の幸運や好ましい状態が自分にももたらされる、という意味で用いられますが、一部にはもう少し軽いニュアンスで使われる場合もあります。
たとえば、自分の名は○○(偉人など)にあやかってつけられた、という場合、○○の偉大さなどが背景にある場合と、たんに「○○の字をもらった」というくらいの意味で用いられるケースもあります。
また、「あやかる」対象は人だけとは限りません。ブームやヒット商品などに便乗することにも「あやかる」を用いることがあります。
「あやかる」の文例
(A男)
山田君は販売成績で全国一位となって、褒賞のハワイ旅行を獲得した。来年は僕も山田君にあやかって一位を取りたいものだ。
(B子)
恵子ちゃんの結婚式で、ブーケトスをキャッチしたのは私なの。彼女の幸せに絶対あやかれると確信したわ!
(C男)
僕の聖貴という名前は、高名な神父だった縁戚の名にあやかって父がつけたものなんだけれど、神聖すぎてつぶれそうだよ。
(D子)
かつて美白力で売れたクリームの成功にあやかって、同じような商品が次々出てきたけれど、たいした効き目のないものが殆どだったわ。
「あやかる」の漢字について
「あやかる」の漢字表記は「肖る」ですが、読み方が難しいためか、ほとんどが平仮名で表記されています。この「肖」という字を検証すると、「あやかる」の意味が浮かび上がってきます。
「肖」という字には、「似せる・かたどる」という意味があります。例えば「肖像(しょうぞう)」といえば、対象の人間を絵・彫像などで表現すること、つまり人に似せ、かたどった像という意味のことです。
したがって、「肖る」は、対象となる人物や事柄のありように似たものとなる、という基本的な意味をもつのです。
「あやかる」の類語
「便乗する」
「便乗する」とは、次の二つの意味をもつ言葉です。
- 他者の乗り物に一緒に乗せてもらうこと。
- チャンスをたくみにとらえてうまく使うこと。
2.の意味における「便乗する」が、「あやかる」に似た意味ですね。「あやかり商法」「あやかり商品」などの言葉に見られるように、商売にも関係が深い言葉です。
【文例】
- タピオカドリンクの爆発的ブームに便乗して、同じような店が雨後の筍のように後をたたない。
「恩恵にあずかる」の意味と使い方
「恩恵にあずかる」とは、誰かからの情けや恵みをうける、分け前などを恵まれる、という意味の言い回しです。「恩恵にあやかる」と表現する場合もあります。
「あやかる」の場合、「○○にあやかる」の○○にあたる部分は、実に多岐にわたります。一方、「○○の恩恵にあずかる」の場合、○○にあたる部分は、ほとんどが自分より目上の人間や、組織、自然などの大きな存在です。
これは、「あやかる」が個人単位の勝手な信奉であるのに対し、「恩恵」には大いなるものからのお恵みであるというイメージがあるためです。
【文例】
- かつて小樽の浜には鰊(にしん)の群れが押し寄せ、その恩恵にあずかった漁師たちは鰊御殿と呼ばれる豪邸を競い合うように建てたものだった。