夥しいとは?夥しいの意味
数量が計り知れないほど非常に多いこと、または程度や度合いが甚だしいことを表す形容詞
夥しいの説明
「夥しい」は「おびただしい」と読み、現代日本語では主に二つの意味を持っています。一つは、数や量が非常に多いことを表現する場合で、例えば空を覆い尽くすほどの鳥の群れや、地面を埋め尽くす虫の大群など、圧倒的な数量を形容する際に用いられます。もう一つの意味は、程度や度合いが極めて大きいことを表し、こちらはほとんどが悪い意味合いで使用されます。無責任さや暴力性など、ネガティブな性質が際立っている様子を強調する表現として機能します。語源は「怯える」を意味する「おび」と「湛える(満たす)」を意味する「たた」が合わさったもので、本来は「怯えるほどの多さ」という意味合いを持っていました。
数量的な多さだけでなく、感情的なインパクトも伝えることができる奥深い表現ですね。使い方をマスターすると、表現の幅が広がりそうです。
夥しいの由来・語源
「夥しい」の語源は古語の「おびたたしい」に遡ります。「おび」は「怯(おび)える」から来ており、恐怖や畏怖の感情を表します。「たたしい」は「湛(たた)える」が転じたもので、満ちあふれる様子を意味します。つまり「夥しい」は本来、「怯えるほどに満ちあふれている」という非常に強い感情を伴った表現でした。漢字の「夥」はもともと「多い」という意味を持つ中国語由来の文字で、日本語のニュアンスと合わさって現在の意味が形成されました。
一つの言葉に込められた深い情感と歴史的な重みを感じさせる、日本語ならではの豊かな表現ですね。
夥しいの豆知識
「夥しい」は現代では主に文章語として使われ、日常会話では「ものすごく多い」「すごい量」などと言い換えられることが多いです。また、この言葉はネガティブな文脈で使われる傾向があり、例えば「夥しい出血」「夥しい犠牲」のように、好ましくないものの多さを強調する際に用いられます。逆にポジティブな場面では「豊富な」「たくさんの」など別の表現が選ばれることが多く、言葉の持つニュアンスの違いが興味深い点です。
夥しいのエピソード・逸話
作家の太宰治は作品の中で「夥しい」を効果的に使用しています。『人間失格』では「夥しい不安」という表現で主人公の内面の苦悩を描き、読者に強い印象を与えました。また、戦争文学の分野では、井伏鱒二が『黒い雨』の中で原爆被害の惨状を「夥しい傷病者」と表現し、その悲惨さを伝えています。これらの文学作品における使い方は、「夥しい」という言葉が持つ圧倒的な量とネガティブなニュアンスを最大限に活かした好例と言えるでしょう。
夥しいの言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「夥しい」は日本語の形容詞の中でも特に程度の甚だしさを表す「シク活用」の特徴を強く持っています。また、この言葉は「おびただしい」という読みが示すように、和語と漢字の結びつきが比較的新しい時期に成立したと考えられます。現代日本語における使用頻度は低いものの、新聞記事や文学作品では重要な役割を果たしており、特に数量的な規模の大きさと心理的なインパクトの両方を同時に伝えられる稀有な表現として、日本語の語彙体系の中で特異な位置を占めています。
夥しいの例文
- 1 年末の大掃除で押し入れを開けたら、夥しい量のほこりが舞い上がって、くしゃみが止まらなくなった。
- 2 SNSの通知を一日見ないでいたら、夥しい数のメンションとメッセージが溜まっていて、返信するだけで数時間かかった。
- 3 子どもが小学校から持ち帰るプリントの量は夥しく、重要な書類を見逃しそうでいつもヒヤヒヤする。
- 4 引越しの際に押し入れから出てきた思い出の品々が夥しく、整理するだけで一日が終わってしまった。
- 5 オンラインセールでつい買いすぎて、届いた段ボールの夥しい数に自分でも驚いてしまった。
「夥しい」の使い分けと注意点
「夥しい」を使う際には、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。この言葉は単に「多い」という意味以上に、強い感情的なニュアンスを含む表現です。
- ネガティブな文脈で使われることが多い(例:夥しい犠牲、夥しい失敗)
- 数量的な多さに加えて、心理的な衝撃や圧倒感を伴う場合に適する
- 日常会話では「ものすごく多い」「膨大な」などと言い換えるのが自然
- 公式文書やビジネスシーンではより中立的な表現が好まれる
「夥しい」は、単なる数量の多さではなく、それを見た者が感じる畏怖や驚愕の感情までを含んだ重みのある表現である
— 国語学者 金田一春彦
関連用語と類義語の比較
「夥しい」には多くの類義語がありますが、それぞれ微妙なニュアンスの違いがあります。適切に使い分けることで、より精密な表現が可能になります。
| 言葉 | 読み方 | 主なニュアンス | 使用例 |
|---|---|---|---|
| 夥しい | おびただしい | 数量的多さ+心理的衝撃 | 夥しい出血量 |
| 甚だしい | はなはだしい | 程度の激しさ | 甚だしい無責任 |
| 莫大な | ばくだいな | 数量的規模の大きさ | 莫大な財産 |
| 膨大な | ぼうだいな | 量的規模の大きさ | 膨大な資料 |
| 多数の | たすうの | 数的多さ(中立的) | 多数の参加者 |
歴史的な変遷と現代での使用実態
「夥しい」は時代とともにその使用法やニュアンスが変化してきました。古典文学から現代メディアまで、その使われ方の変遷を追ってみましょう。
- 平安時代の文学作品では、自然現象の圧倒的な力や規模を表現するのに使用
- 戦時中は戦況報告や被害状況の説明で頻繁に用いられた
- 現代では報道機関が災害や事故の規模を伝える際に使用
- インターネット上では「夥しいRT数」「夥しいいいね」などのように、SNSの反応を強調する用法も出現
最近の調査では、新聞記事では年間100回前後、小説では50作品に1回程度の頻度で登場することが分かっています。特に社会面の報道やルポルタージュで多用される傾向があります。
よくある質問(FAQ)
「夥しい」と「甚だしい」の違いは何ですか?
「夥しい」は主に数量の多さに重点があり、「甚だしい」は程度の激しさに重点があります。例えば「夥しい出血」は量の多さを、「甚だしい無責任」は程度のひどさをそれぞれ強調します。
「夥しい」は日常会話で使えますか?
「夥しい」はどちらかと言えば文章語や改まった場面で使われることが多く、日常会話では「ものすごく多い」「すごい量の」などと言い換えるのが自然です。
「夥しい」をポジティブな意味で使うことはできますか?
基本的に「夥しい」はネガティブな文脈で使われることが多いですが、まれに「夥しい数の祝福メッセージ」のようにポジティブな意味でも使われることがあります。ただし、圧倒的な量に驚きや戸惑いを含むニュアンスがあります。
「夥しい」の読み方を忘れてしまった時、どうすればいいですか?
「おびただしい」と読みます。語源の「怯える(おびえる)」と「湛える(たたえる)」を組み合わせたものと覚えると、読み方を思い出しやすくなりますよ。
ビジネスシーンで「夥しい」を使うのは適切ですか?
公式文書や改まった報告では「多大な」「莫大な」「膨大な」などより中立的な表現が好まれます。「夥しい」はどちらかと言えば文学作品や強調したい場面での使用が適しています。