「功を成す」とは?
「功を成す」(こうをなす)という言葉の意味は、使われている漢字二字から自然に類推されます。順番をひっくり返すと、「成」と「功」。そのまま「成功すること」を意味する言葉です。
「功を成す」の字義
「功」は、音読みが「こう」「く」、訓読みが「いさお」です。手柄、働きや効き目、成果や結果などの意味をもつ漢字です。
「成」は、音読みが「せい」「じょう」、訓読みは「な・る」「な・す」。この漢字は、大きくわけて下の3つの意味を持ちます。
- できあがる、なす、などの意味(用例:成立)
- なしとげる、なす、という意味(用例:成就)
- 育つ、育てあげるという意味(用例:成長、養成)
「功を成す」の使い方
日常会話においては、「成功」の方がよく用いられますが、「功を成す」もあらたまった場やビジネスシーンなどでは頻繁に用いられています。
「功を成す」の主語は、基本的には人間です。人間が絡むという意味で組織が主語となることもありますが、かなり稀な例と言えます。この言葉を使うときには、その点に注意しましょう。
例えば、イルカが輪くぐりに成功した、とは言いますが、イルカが輪くぐりで功を成した、とは言いません。「功を成す」は、人間が、ある分野において成功をおさめた場合に用いられる表現なのです。
(A男)
鈴木氏は、我が社の商品のヒットメーカーとして功を成し、商品企画部の部長をへて、今や副社長に昇り詰めたよ。
(B子)
友人の美智子は、キャリアウーマンとして優秀だけれど、功を成すことに懸命になりすぎて、昔の無邪気な面影はもうないわ。
(C男)
私の会社が大きく功を成すことができたのも、社員ひとりひとりの地道な努力あってのことなのです。
「功を成す」の関連語
「功成り名遂げる」の意味と使い方
「功成り名(を)遂げる」は、仕事で立派な成績をおさめたり、なんらかの分野で大成功をおさめることで、著名な人物として世間的な名声も得る、という意味の言い回しです。
【文例】地方から、着の身着のままに近いかたちで東京に出てきた山本君は、ユニークな写真をプリントしたTシャツを売り歩き、今では功なり名遂げて、立派なアパレル企業の社長となった。
「功を奏す」の意味と使い方
「功を奏す」(こうをそうす)とは、アイデアや計画、施策などが見事に成功することを意味する言葉です。「功を成す」の主語が人間であるのに対し、「功を奏す」の主語は、施策などの事柄であることに注意しましょう。
「功を奏す」と同意の熟語として、「奏功」を用いる場合もあります。この二つの文例を挙げてみましょう。
- 花屋をオープンしてから3年目に、購入者に花を一輪プレゼントする企画を立てた。このアイデアが功を奏し、売り上げが倍増したのには驚いた。
- 新入社員研修で、芝居形式で各部門の実践のシュミレーションを体験してもらったことが奏功し、業績が大いに伸びた。
「心力を尽くして私なき者、必ず功を成す」の意味
二宮尊徳(にのみや・そんとく)をご存知でしょうか。江戸時代後期の農政家、思想家です。かつては、小学校などの校庭に、薪を背負って歩きながら本を読む、彼の少年時代の姿の銅像を多く見かけたものです。
早くに両親をなくし、さまざまな苦労の中勉学に励み、生家を再興、出世をとげたというまさに、「功を成した」人物です。その二宮尊徳の言葉とされているのが、「心力(しんりょく)を尽くして私(わたくし)なき者、必ず功を成す」です。
心力とは、心の働きや精神力を意味します。エゴを排して、世間のために心の力を用いるものは、必ず成功する、という名言です。