「馬力」の意味とは?1馬力とはどれくらいの大きさなのかを含めてご紹介

若い方には馴染みはないかもしれませんが、『鉄腕アトム』に登場するアトムの7つの力のひとつは「10万馬力」の力でした。この「馬力(ばりき)」とはどんな意味でしょう?今回はこの「馬力」の意味を、1馬力とはどのくらいの力に相当するのかを含めて解説します。

目次

  1. 「馬力」とは
  2. 「馬力」の種類
  3. 仕事率とは
  4. 馬1頭は1馬力か?
  5. 人間は1馬力を出せるか?
  6. 身の回りの乗り物は何馬力?

「馬力」とは

「馬力」の意味

「馬力(ばりき)」は、次のような意味を表す言葉です。

  1. 仕事率の単位で、1馬力=75kgの物を毎秒1m動かす力
  2. 物事を精力的にこなす力
  3. 荷馬車

「馬力」の使い方

  1. 「客船タイタニックの出力は4万6000馬力だったそうだ。」
  2. 「彼は線は細いが、見かけによらず馬力がある。」
  3. 馬力が激しく往来している。」

単位「馬力」の由来

イギリスの発明家ジェームズ・ワットは、従来の蒸気機関に改良を施し産業革命に大きく貢献しましたが、当初は自身が開発した蒸気機関のパワーをどのように宣伝するか悩んでいました。

ワットは当時の紡績や交通など主な動力を担っていた「馬」に着目し、馬一頭の力に換算することで蒸気機関のパワーを分かりやすく表現できるのではないかと考えました

そこで実際に馬に荷物を引かせ、1馬力を「1秒間に重量550ポンドの物を1フィート動かす力」と定義したことが「馬力」の由来となりました。これをメートル法に換算すると、おおよそ「1秒間に75kgの物を1m動かす力」と言い換えることができます。

「馬力」の種類

英馬力(ヤード・ポンド法)

主にイギリスで用いられている馬力「英馬力(えいばりき)」では、[HP]という単位を用いており、計算にはヤード・ポンド法を使用しています。[HP]は「Horse(馬)Power(力)」の略語で、文字通り「馬力」を表しています。

仏馬力(メートル法)

メートル法発祥の地がフランスであることから、メートル法を用いて馬力を計算している場合は、「仏馬力(ふつばりき)」と呼ばれています。日本で用いられているのも仏馬力で、単位はドイツ語に由来する[PS]です。

「馬力」に当たる言葉は言語によって違うので、言語に基づくそれぞれの単位が用いられていますが、同じメートル法で計算した値なので、数値自体は等しくなります。

  • フランスでは[ch]:「cheval-vapeur(馬に換算した蒸気の力)」の略。
  • ドイツや日本では[PS]:「Pferde stärke(馬の力)」の略。
  • イタリアでは[CV]:「Cavallo Vapore(馬に換算した蒸気の力)」の略。

仕事率とは

仕事とは

ここでいう「仕事(W)」は「力(F)×移動距離(s)」で表される数値のことで、力はニュートン[N]、仕事はジュール[J]という単位を用いています。例えば、ある物体を2[N]の力で5[m]移動させる場合、仕事は10[J]となります。

仕事率とは

「仕事率」とは、「仕事の能率」のことで、「単位時間当たりどれだけ仕事をしたか」で表現されます。仕事率の単位には国際単位系のワット[W]が用いられ、1[W]=1[J]÷1[秒]と定義されています。

例えば、10[J]の仕事を1[秒]でこなした場合の仕事率は10[W]、同じ仕事に10[秒]かかったら仕事率は1[W]となります。

馬力を変換するには

英馬力[HP]や仏馬力[PS]をワット[W]に変換するには、次のようなレートとなります。なお、1kW=1000Wです。

1HP 0.7355kW
1PS 0.7457kW


また、ワット[W]を英馬力[HP]や仏馬力[PS]に変換するレートは次の通りです。
1kW 1.341HP
1kW 1.360PS

馬1頭は1馬力か?

「馬力」は馬1頭を基準にした値ですが、馬の最大馬力は1馬力よりも大きく、競走馬などでは3馬力ほどです。それは、「馬力」という単位が、馬の最大の力ではなく、長時間にわたって出せる力を元に考えられているからです。

人間は1馬力を出せるか?

一般に、人間が瞬間的に発揮できる馬力は0.5、持続して発揮できる馬力が0.1と言われています。75kgのバーベルなどを持って1m移動することを考えれば、1馬力を出す大変さがなんとなくイメージできるでしょうか。

また、「1馬力=体重73kgの人間が100mを10秒で走りきる力」とも言い換えられます。2017年に100m走で日本人史上初の9秒台となる9秒98を記録した桐生祥秀選手の体重が約70kgであることから、極限まで鍛え上げた人間が、限られた距離でなら1馬力を出すことは可能と言えます。

しかし、一流の短距離選手でも、1馬力を発揮したままで何kmも走り続けることはできませんから、1馬力を1人の人間が出すのは、やはり不可能なのです。

身の回りの乗り物は何馬力?

では、身の回りの乗り物は何馬力くらいになるでしょうか?原動機付自転車(原付)は4.5〜7.5馬力、普通自動車は60~300馬力くらい、F1カーともなると900馬力台の出力があります。

また、新幹線は2万馬力以上、ジェット戦闘機は8万~20万馬力以上、ロケットのエンジンは300万馬力以上と言われています。

日頃馴染みのある普通自動車ですら、何百頭もの馬が長時間走り続けるのと同じだけの出力があるわけですから、それぞれの乗り物のパワーの大きさがお分かりいただけるでしょう。


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