「小賢しい」の意味
2016年に大ヒットしたTVドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」では、ガッキーこと新垣結衣さんが「小賢しい」女子をかわいらしく演じていたので、プラスのイメージでとらえている方もおられるかもしれません。ですが本来は、批判する意味を込めて嫌味たっぷりに使う言葉です。意味は「利口ぶっていて、生意気である。抜け目がなく、悪賢い」です。
「小賢しい」と表現されるものは、主に人間が対象となります。また、人間がしたこと・行動・つくったものに対しても使用が可能です。性別で言うと男性・女性どちらでも使えますが、男性側から女性に対して「小賢しい」と使うと、女性差別とも受け取られかねないので気を付けたいところです。
「小賢しい」の由来
「小賢しい」は、接頭辞(語)の「こ」と「さかしい」から成り立っています。「さかしい」は文語の「さかし」の口語体です。「こ」を取って「さかし」だけにすると「賢い(かしこい)、優れている」あるいは「才知、分別があってしっかりしている」という褒めたたえる意味になります。「さかし」は「さく(割く)」からの変化で「物事をすぱっと割くように、明快に判断できる」という意味からきているとの説が有力です。ですからもし「賢しい人だ」と言われたらむしろ、喜んでよいでしょう。
こ・さかし
接頭辞の「こ」は、もとになっている「賢しい」に意味を添える役割を果たしています。「さまよう」の「さ」や「かよわい」の「か」のようなものです。
ちなみに「さかし」は万葉集の時代(平安時代)から、「こさかし」はもう少し後の中世あたりから使われていた言葉です。
意味はむしろ「さかしら」「さかし(ら)がる」
「さかし」から派生した言葉に「さかしら」「さかし(ら)がる」があります。こちらは「利口ぶることや分別ありそうにふるまうこと。あるいは人を陥れるための告げ口・讒言(ざんげん)」の意味があります。「さかし」とは逆に、批判の色を帯びています。意味だけにフォーカスするとすれば、「こさかし」は「さかしら」「さかし(ら)がる」に近いと言えるでしょう。
「小(こ)」がついて意味が変わる言葉
接頭辞の「小(こ)」がついて意味が変化する言葉は、「小賢しい」の他にも多数あります。接頭辞の中でも「小」の役割は多様だという分析があります。大きく3つの役割に分けて、具体例を挙げてみます。
程度が小さい(少ない)ことを表す
小細工、小ぎれい、小悪魔、小振り、小銭、小一時間、小耳にはさむ、小首をかしげる、小ざっぱり、小高い
軽んじたり、ややバカにしたような意味を加える
小難しい、小うるさい、小器用、小憎たらしい
語調を整えたり、強めたりする
小癪(こしゃく)、小汚い
「小」の程度にはっきりした基準はなく「何となく・だいたい」とあいまいにしてある点が特徴的です。「小賢しい」の「小」には主観的なマイナスの意味が込められているので、2番目の「軽んじたり、ややバカにしたような意味」に分類してよいでしょう。
「小賢しい」の使用例
「小賢しい」のイメージが明確になったところで、使用例をいくつか挙げてみます。近頃は単に、「ゲスな奴」と誹謗中傷するときに使われるケースも見受けますが、意味的にはややズレます。
「彼のような小賢しい男とお付き合いすると、見下された気分になるよ」
「一部の人間の小賢しい提案によって、友好関係が危ぶまれる状況にある」
「安易に合意を引き出そうとした小賢しい戦略ではないか」
「小賢しい発言が度を越え、チーム全員の感情を逆なでした」
「小賢しさを前面に押し出して、個性的なキャラクターを作り上げる」
「都会に住む人々の小賢しい一面を、つぶさに描き出した内容だ」
「小賢しい」と似た言葉
「小賢しい」と似た意味を持つ言葉としては「生意気」「僭越(せんえつ)」「利いた風な(口をきく)」「あざとい」「小利口」などが挙げられます。また、俗語としては「知ったか」というのも近いイメージです。