「腕が鳴る」の意味
「腕が鳴る」とは、自分の優れた能力や技術を発揮して見せたくて、気持ちがはやり、むずむずする様子を言います。
「腕」とは
「腕」は、人や猿の肩の付け根から手首までの部分を言います。古くは、肘から手首までを「腕」と言い、肩から肘までを「かいな」と言いました。現代でもお相撲さんたちの間では、この「かいな」という表現が使われています。また、肩から肘までは俗に「二の腕」とも言われています。
「鳴る」とは
一方、「鳴る」には二つの意味があります。
- 音がする。音が出る。(「雷が鳴っている」「今日は電話が鳴らない」など)
- よく知られている。(「資産家で鳴る一家」など)
「腕が鳴る」とは
『例解新国語辞典』を見ると、「腕が鳴る」の「鳴る」は上述の1の「音がする・音が出る」の方の意味に分類されています。
また、『明鏡ことわざ成句使い方辞典』では、「腕が鳴る」は「腕がぶるんぶるん回したときのように音を立てる」ところから来ているとされています。自分の技量を試そうと気合い十分で、腕をぶるんぶるん振り回して音がする、という様子をイメージすると、「腕が鳴る」の意味も覚えやすいかもしれませんね。
「腕が鳴る」の例文・用例と使い方
では「腕が鳴る」の例文、用例と使い方を見ていきましょう。
「腕が鳴る」の例文
- 週末のテニス大会を前に腕が鳴るよ。
- 久しぶりの大ホールでの演奏を前に、今から腕が鳴ってしかたない。
- 今夜は我が家でホームパーティー。いつもとは違う豪華食材に腕が鳴る。
「腕が鳴る」の用例
太宰治『ロマネスク』
これは、次郎兵衛がいけ好かないお金持ちに喧嘩をふっかけようと目論む場面です。次郎兵衛は、喧嘩が強いことで有名な男でした。
「腕が鳴る」の使い方
上記の例文や用例のように、「腕が鳴る」は、自分の力を発揮できそうな場面を前にして使われる表現です。「昨日のテニスの試合で腕が鳴って、勝利をおさめることができた」のように、自分の技術を発揮できた、という使い方はしませんので、注意してくださいね。
「腕が鳴る」と「腕を鳴らす」の違い
「腕が鳴る」に似た形の表現として「腕を鳴らす」があります。「腕が鳴る」と「腕を鳴らす」の意味には違いがあるのでしょうか。
「腕を鳴らす」とは
「腕を鳴らす」には、「腕が鳴る」と同じように、「技能や能力を発揮する機会を待ち構える」という意味があります。しかし、それだけではありません。その他に「技能を人々に示して、名声を広める」というもう一つの意味があります。
- 若いころには球界屈指の左腕として腕を鳴らした。
- この本の著者、本場フランスのコンテストで受賞して、かつては一流シェフとして腕を鳴らしたけど、最近全く名前を聞かなくなったね。
「腕を鳴らす」は、このような形で使われます。「腕が鳴る」はこうした使い方はしませんので、使い分けに気をつけてくださいね。
「腕が鳴る」の類語
- 腕を撫(ぶ)す
- 腕を摩(さす)る
「撫す」「摩る」というのは、手のひらを当てて軽く動かすことを意味します。力を発揮する機会がなかなかなく、そのことを残念に思いながらじっとその場で腕を擦る、といった様子です。つまり、「腕を撫す」「腕を摩る」はどちらも「自分の力を発揮したいと機会を待ってじりじりする様子」を表しています。
「腕」が含まれる表現
「腕」とは「肩の付け根から手首まで」のことですが、「腕力」から転じて、「身につけた技能、ことをなす能力」という意味も持ちます。「腕=技能、腕前」が含まれる表現は多く見られますので、いくつかご紹介します。
【腕を上げる】腕前が上達すること。
【腕を振るう】自分の持っている技術や能力を十分に発揮すること。
【腕を磨く】技術力をさらに高めるために、努力や修行をすること。
【腕が立つ】技能が優れていること。
【腕によりをかける】自分の技術力を最大限に発揮しようと意気込む様子。