「病は気から」とは
「病は気から」とは「病気を起こすのも治すのも(重くなるのも軽くなるのも)、気の持ちようひとつである」という意味です。「病は気より」としても同じ意味になります。
戯曲「病は気から」
フランスの劇作家・モリエールの1673年発表の作品に「病は気から(Le Malade imaginaire)」という題名の戯曲が存在します。死と医者を極端に怖がる、憂鬱性の男を主人公にしたブラックコメディーです。ちなみに、モリエールはこの劇の上演4日目に舞台で喀血して倒れ、そのまま帰らぬ人となったそうです。果たしてモリエールの「気の持ちよう」がどうだったのか、気になるところです。
「病は気から」の使い方
予防的に
- 「そんなにふさぎ込んでいると、病気になってしまうよ。病は気からと言うじゃないか」
- 「病は気からですから、常に前向きに考えていれば、病気もしませんよ」
病気の人への励まし
- 「病は気からだ。日々、明るい気持ちで過ごしていると、症状は改善するに違いない」
- 「病気に負けないためには、病は気からと言う通り、気持ちを強く持つことが大事だ」
「病は気から」の由来
日本の古典文学『太平記』(1370年ごろ)には、以下のような記述があります。
病に伏せた足利直義の北の方(正妻)を診察した医者が言った言葉の中に、こうした言い回しがありました。「病気は気が滞ることによって起こるものなので、気の流れを良くするような薬を飲むとよいでしょう」と言っています。つまり、古くはこの「気」の考え方が、「病は気から」の元になったと考えられます。
「気」とは
それでは「気」とは何かについて、解説していきます。中国の漢代の医学書(『素問』『霊枢』)の中に、「気」の考え方について触れた部分がありました。それによると、人の体には12の経脈とその分枝である脈管が存在し、そこを気と血が流れているとしています。
気は四季や時刻の移り変わりに対応して形や強さを変え、人体の生理現象を営んでおり、気の調和が取れていれば健康であるし、調和が乱れれば病気になるといいます。ですから、現在の「病は気から」というときの「気」=「気の持ちよう」という捉え方とは、だいぶ異なっていたようです。
「気」=「気の持ちよう」で正しい?
では「気」を「気の持ちよう」と解するのは誤りかというと、決してそうではありません。
プラセボ効果
プラセボとは偽薬のことで、薬理効果のない薬のことです。臨床医学において、薬物の効果を比較・判定するための対象薬として使用されます。一般に内服薬では乳糖、注射薬としては生理食塩水が用いられるそうです。そして、薬理作用によらない暗示的な治癒効果のことを、プラセボ効果と言います。つまり、病気とは直接関係ない偽薬を飲んでいても「効いたぞ! これでよくなる!」という意識を持てば、本当に症状が改善する(ことがある)ということです。ただし、この効果が表れる人とそうでない人がいるようです。
ストレスに起因
ストレスを抱えている場合、ストレスホルモンであるコルチゾールが大量に生産されます。このコルチゾールが過度に、長期間にわたって生産されれば、免疫系を抑制してしまうことがあるのだそうです。影響は様々ですが、インフルエンザなどの感染症にかかりやすくなったり、頭痛、あるいは心臓発作を引き起こす原因となることもあります。「気の持ちよう」をストレスのコントロールだとすれば、「病は気から」は的を射ている表現だと言えるでしょう。
似た表現・似ているようで違う表現
同じ意味で
「病は気ひとつ」「病は気で勝つ」
やっぱり食欲?
「病は食い勝つ」
食べてばかりも危険
「病は口から(入り、禍は口から出る)」
たまには病気もしたほうが?
「病上手に死に下手」「病と命は別物」
やっぱり病気はないのが一番
「病は身の惚け(ほうけ)」「病と不運は付いて回る」