「気もそぞろ」の意味
「気もそぞろ」を分解してみると、「気」は、心の動き・状態・働きなどの意味をもち、「そぞろ」には、そわそわすることや、気持ちが落ち着かないさまという意味があります。
つまり、「気もそぞろ」の意味は、あることが気にかかり心が落ち着かないこと、そわそわすることです。
「気もそぞろ」の「そぞろ」は漢字では「漫ろ」と書き、「気もそぞろ」は「気も漫ろ」とも書くことができます。(「そぞろ」については、記事の最後にさらに詳しくご紹介します。)
「気もそぞろ」の使い方・例文
- プロポーズをした彼は、彼女の返事を待つあいだ気もそぞろだった。
- 気もそぞろだった母は娘が帰宅したことに気づかず、娘の言葉で我に返った。
- 第一志望の大学の合否が分かるまでは、私は気もそぞろで何も手につかなかった。
- かけっこが速い息子は運動会前で気もそぞろになっているのか、最近は毎日のように何か忘れ物をする。
どの例文でも、何かに気を取られているために、注意力・集中力を欠いていたり、何かを忘れていたりする情景が浮かぶのではないでしょうか。
「気もそぞろ」の類語
「気もそぞろ」の類語として、以下のような言葉があります。複数の意味をもつ言葉は、「気もそぞろ」と類似した意味のみご紹介します。
【上の空(うわのそら)】
- 意味:他に心を奪われて、いま必要なことに精神が集中しないこと。
- 例文:親友が悩みを話しているとき上の空だったことで、姉は親友から絶交された。
【浮足立つ(うきあしだつ)】
- 意味:期待・不安などで先が気になり、今のことに気分が集中できなくなること。
- 例文:お正月休みの海外旅行で浮足立ち、彼は仕事にいまひとつ身が入らない。
【心ここに在らず(こころここにあらず)】
- 意味:心が他のことにとらわれていて、いま直面していることに注意が向かないこと。
- 例文:目前にせまった結婚式のことで、彼女は心ここに在らずだ。
【そわそわする】
- 意味:気がかりなことがあり(言動が)落ち着かないさま。
- 例文:ピアノの発表会の日は、孫は朝からそわそわしていた。
【気が気でない】
- 意味:気にかかって落ち着いていられないこと。
- 例文:飼い猫が行方不明になってから、私は猫が見つかるまで気が気でなかった。
「気もそぞろ」の英語表現
「気もそぞろ」には決まった英単語はなく、文脈により使用するワードは異なります。「気もそぞろ」の意味に近い英語表現の一部をご紹介します。
【distracted】(取り乱した、迷った)
- 例文:His wife’s words gave ease to his distracted mind.
- 意味:気もそぞろだった彼は妻の言葉に安らいだ。
【restless】(落ち着きのない、不安な)
- 例文:Next week's presentation makes me restless.
- 意味:来週のプレゼンテーションで私は気もそぞろだ。
【mind wandered】(心がさまよった)
- 例文:Our mind wandered because the lecture dragged on.
- 意味:講義が長引いたので我々は気もそぞろだった。
「気もそぞろ」の雑学
「気もそぞろ」が使われている楽曲
ロックバンド「筋肉少女帯」のアルバム『THE SHOW MUST GO ON』のなかに、大槻ケンヂ氏作詞、本城聡章氏作曲の『気もそぞろ』というタイトルの楽曲があります。
「~気もそぞろなのさ 照れ隠しじゃないか 今日のショーが終わる 気もそぞろなのさ~」と、歌詞の中にも「気もそぞろ」が使われています。
「そぞろ」について
「そぞろ」は、古語においては「すずろ」と同じ語として扱われています。「そぞろ」を用いた表現で、両方の読み方ができる言葉がある一方、「そぞろ」のみ存在する言葉や、両者で読み方が少し異なる言葉もあります。
以下に「そぞろand/orすずろ」を使用した語とその意味をいくつか挙げてみましょう。
- 【漫ろ心(すずろごころ/そぞろごころ)】…何となく落ち着かない気持ち、浮ついた心。
- 【漫ろ言・漫ろ事(すずろごと/そぞろごと)】…つまらぬ言葉、くだらない話、つまらぬこと。
- 【漫ろく(すずろく/そぞろく)】…心がおちつかなくなる、そわそわする。
- 【漫ろ歩き(そぞろあるき/すずろありき)】…気の向くままに歩きまわること。(「そぞろ」と「すずろ」では、その後に続く言葉が相違)
- 【漫ろ雨(そぞろあめ)】…思いがけなく降る雨。
- 【漫ろ寒(そぞろさむ)】…秋が深まって、それとなく感ずるほどの寒さ。
- 【漫ろ目(そぞろめ)】…見るとはなしに見る目つき。
- 【漫ろ神(そぞろがみ)】…何となく人の心を誘惑する神。
- 【挨拶もそぞろに】…挨拶を十分にしないで。