「一概には言えない」とは?
「一概(いちがい)には言えない」の意味を知るためには、まず副詞「一概に」をしっかりと理解することが先決です。「一概」は、強情なこと、すべてをひっくるめるさま、という2つの意味をもちます。
「一概に」は、ひっくるめて、おしなべて、ひとくちに、という意味の言葉です。細かな異なりは考慮せずに一様に扱うさまを表現し、用例の多くが打消し、否定の言葉を伴って「すべてが同じようには扱えない」という文意を構成します。
「一概に言えない」は、上記の「一概に」に「~ない」という否定の言葉を伴ったもので、ひとまとめにそうだと言えない、すべてがそういう訳ではない、という意味をもつ言い回しです。
「一概には言えない」の使い方
「一概には言えない」を使った文章構成
「一概には言えない」という言葉は、その前のどこか、あるいは、この言葉の間に入れ込むかたちのどちらかで、言及されている内容とセット使います。例えば、「~だと(は)一概には言えない」か、「一概に(~だとは)言えない」などの文章構成です。
会話であれば、相手の言うことを受け、「一概には言えないな」などと、この言い回しのみで応答する場合もあります。それもやはり、「(~だとは)一概に言えないな」が正確な表現であり、指示内容が省略されているかたちと理解しましょう。
「一概に言えない」という、「は」が省略された言い回しもよく使われますが、この2つの意味はまったく同じです。
「一概には言えない」のニュアンス
「ニュアンス」という言葉がぴたりとはまるほど、「一概には言えない」は、曖昧で微妙な空気感のある言い回しです。どのような感じの含みをもって使われているのか、いくつかの例を挙げてみましょう。
- そうだと思うが、100%断定はできない。
- 例外もあるのではないか。
- ひとくくりにはできないと思う。
- 一言で~というのもどうかと思う。
- ~と言えない場合もあるのではないか。
(ほとんどその通りとは思うが、多少違う場合もあるのでは…)という、別の小さな可能性を表す状況から、(そうかもしれないが、まったく違うこともありえる)という、正反対の可能性を示唆するニュアンスまで、かなり幅広い異なりを含む言い回しだといえます。
「一概には言えない」の例文
- 宝くじの一等に当たることが幸せと一概には言えない。そこから人生が転落する例もあるのだ。
- 一概には、彼女だけの責任だと言えない。
- オリンピックの誘致が経済発展に結びつく?一概には言えないな。
- 一概には言えないが、自分としては、家族の平穏な関係については、血のつながりよりも相性の良さの要素がまさると思っている。
「一概には言えない」の類似表現
「あながち~とは言えない」
「あながち」は、必ずしも、という意味を表す副詞で、「一概に」の類語といえます。「一概に」と同じく、多くは打消しの語を伴って用いられます。
「あながち~とは言えない」は、「必ずしも~とは言えない」という意味を表します。
【例文】
- あながち、高学歴だから仕事ができるとは言えない。
- この結果は、あながち大失敗とは言えない。
「必ずしも~とは言えない」
「必ずしも~とは言えない」は、ある状態、結果、評価などが完全なものとして定まっているわけではない、例外がある場合も考えられる、などの意味を表す言い回しです。
「必ずしも~ではない」「必ずしも~というわけではない」など、さまざまな否定形を伴って言い換えることができます。
【例文】
- 必ずしも、バイリンガルであることが就職に有利になるとは言えない。
- 病をもつことが不幸だとは、必ずしも言えない。そこから学べるものもあるのだから。