「幼少のみぎり」とは?
「幼少(ようしょう)のみぎり」という言葉は、若い人々はとくに見聞きしたことがないかもしれません。「みぎり」は、漢字では「砌」と書きますが、この字を初めて見たという人も多いことでしょう。
「幼少のみぎり」とは、「由緒ある家柄の人、高貴な人や社会的地位ある人の子ども時代」を表します。この言葉をより理解するため、「幼少」と「みぎり」それぞれについて解説していきます。
「幼少」の意味
「幼少」とは、年齢が低いこと、幼いこと、そのさまやその人のことを意味します。「幼少に」「幼少では」「幼少時」などのように用いることが一般的です。
「幼少のみぎり」とは異なり、すべての人を対象として使えます。ただし、人間以外の動物に使うことはありません。
文例:オリンピック代表のA選手は、幼少の頃から水泳に親しんでいたそうだ。
「みぎり」の意味
「みぎり(砌)」は、多義的な言葉で、意味は以下の通りです。
- 時、時節、時期、折、頃。
- 軒下にある、雨垂れを受けるための石畳。
- 庭。
- あることが行われる場所。
- 水際、池。
1の意味のみが現在に残り、他のほとんどは現代日本語で用いられていません。したがって、「幼少のみぎり」で用いられるのは1の「時期、頃」という意味が該当します。
とはいえ、「みぎり」という言葉を見聞きすることは稀でしょう。「幼少のみぎり」以外には、手紙などでの「時候の挨拶」として、「暑さのみぎり」などと使われることがあります。
文例:寒さのみぎり、お風邪など召されませんようご自愛くださいませ。
「幼少のみぎり」の使い方
「幼少のみぎり」は、高貴な身分、社会的地位のある人を尊敬するニュアンスで使いますから、「御」をつける場合もあります。とりわけ本人がいる場面では「御幼少のみぎり」とすべきでしょう。
一方で、小説や広い読者を対象とした文章などでは、「~王の幼少のみぎりには」などといった表現が望ましく、「御」をつけるのは不自然です。
もうひとつの注意点は、たとえ自分に家柄や社会的地位があったとしても、自身の幼少期を「幼少のみぎり」とは表現しないことです。あくまで、他者が身分の高いものへの敬意を表して用いる言い回しです。
「幼少のみぎり」の文例
- 世界的ゴルファーのA氏は、幼少のみぎりに子ども用のクラブでプレーしていたそうだ。
- 国王は、幼少のみぎりに二人の乳母がいたそうだ。
- ご紹介させて頂く理事長のB様は、御幼少のみぎりから長く英国で過ごされ、大変グローバルな視野をお持ちです。
「幼少のみぎり」の類似表現
「幼少のみぎり」は、高い身分や地位の人を対象とする以上、類語は丁寧語や尊敬語を伴うものとなります。
単なる「幼少時」の類語であれば、幼年期、幼時、年少時、幼いころ、小さい時、子ども時代など、類語は多々存在します。
「幼少のみぎり」が古めかしく使いづらい時には、上記に挙げたような「幼少時」の類語に、丁寧な言葉を補って用いるのがよいでしょう。
文例①:A様は、ご幼年のころから、すでにピアノの才能を示されたと伺っております。
文例②:B様は、お小さい時にご両親が離婚されたことを今でも悲しく思われています。
文例③:まだ幼くていらっしゃるC様が、絵本に感動して涙を流されたのは驚きでした。