「腑に落ちる」とは
「腑に落ちる」は、「納得する。合点する」という意味の慣用句です。次に、この言葉を構成する「腑」と「落ちる」について見ていきましょう。
「腑」の意味
「腑」とは、「はらわた。内臓」という体の一部分を表す他に、「心。心根」という意味をもっています。「腑に落ちる」という際の「腑」は後者、つまり、「心の奥底」という意味です。
「落ちる」の意味
「落ちる」の意味はたくさんありますが、大きく分けると次のようになります。
- 上から下へ移動すること。その場所からなくなること。(落下する。雨や雪が降る。ついていたものがとれる。減って細くなるなど)
- 物事の程度、価値が下がること。物事の終わりの状態に行き着くこと。(衰える。地位が下がる。落札する。陥るなど)
- 1、2以外(納得する。落第する。都から地方へ移るなど)
「腑に落ちる」の「落ちる」に相当するのは、3の中の「納得する」という意味です。
「腑に落ちる」の使い方
「腑に落ちる」の使い方は、単に理解できるということよりも、心からすんなりと理解できるさまを表現する際に使われます。
【例文】
- 彼は彼女の出生の秘密を知っって、彼女の言動が腑に落ちた。
- 社長から解雇の本当の理由を聞いて腑に落ちた。
- 彼女は腑に落ちるような説明をしないため、二人の溝が深まるばかりだ。
- 警察から事件の真相を聞いてようやく腑に落ちた。
「腑に落ちる」の類語
「膝を打つ」
「膝を打つ」とは、「急に気付いたり、感心した時の動作」を表しています。納得する様子が瞬間的であるため、「腑に落ちる」のように「じんわりと理解する」というニュアンスとは若干違っています。
【例文】
- 選手の好プレーに観客のほとんどが膝を打った。
- 進路に悩んでいた時に先生からの助言を聞いて思わず膝を打った。
「腹落ちする」
「腹落ちする」(はらおちする)とは、「納得する。よくわかって承知する」ことを指します。「腑」の代わりに「腹」を用いたたとえ言葉で、意味も「腑に落ちる」と同じです。
【例文】
- 社長から今後の社の経営方針を聞いて腹落ちした。
- 彼は子供達が腹落ちするように丁寧に説明した。
内臓の名前を使った慣用句
上で説明したように、「腑」には「内臓」という意味もありましたね。「腑に落ちる」のほかにも、内臓についての意味をもつ言葉を使った、「心」に関する例えがたくさんあります。その中からいくつか見ていきましょう。
「肝がすわる」
「肝がすわる」とは、「めったなことに驚かず、落ち着いている。度胸がある」という意味です。「肝」は肝臓のことで、「気力や精神力、要」という意味ももっています。「肝が据わる」とも表記します。
【例文】
- 彼は肝がすわった人間だから、プレッシャーがあっても大丈夫だろう。
- 今度来た新任の教師は若いながらも肝がすわっている。
「心臓が強い」
「心臓が強い」とは、「厚かましい。ずうずうしい」、または、「物おじしない」という意味です。どちらにしても「どんなことにもめげないような気持ち」ということですね。
【例文】
- 彼はどんなことにも動じない心臓が強い男だ。
- 彼女は心臓が強いから、大勢の前でのスピーチも平気だろう。
「断腸の思い」
「断腸」とは、腸が引きちぎれるくらい悲しいことを指します。よって、「断腸の思い」とは、「はらわたがちぎれるくらい、とても悲しい気持ち」という意味です。
【例文】
- 学校の休校延長を断腸の思いで決定した。
- 平静を装っているが、彼女が断腸の思いをしているのは明白だ。
「腹を割る」
「腹を割る」とは、「本心を打ち明ける。心の中をすべてさらけ出す」ことを表しています。
【例文】
- 長い年月が経って、ようやく彼と腹を割った話ができた。
- 腹を割って話さなければ、信頼関係は築けない。