「舌の根も乾かぬうちに」とは?
「舌の根も乾かぬうちに(したのねもかわかぬうちに)」とは、何かを話し終わったか終わらないうちにということです。前に言ったことに対して、言ってあまり時間も経っていないのに、もうそれをくつがえすようなことを言ったり、行動したことを非難するときに使う言葉です。
ほかにも、「舌の根も乾かないうちに」「舌の根の乾かぬ(乾かない)うちに」「舌の根が乾かぬ(乾かない)うちに」と表現されることもありますが、同じ意味です。
「舌の根も乾かぬうちに」使い方
- 自分が使ったものは自分でかたづけるという約束を昨日子どもとしたばかりなのに、もう散らかしっぱなしにしている。舌の根も乾かぬうちにこんなことになるなんて、もっとしっかり言い聞かせるべきだった。
- この間の健康診断で良くない数値が出たから食事制限をするって言ったのは、あなただよね。そんなに大量のおやつを買ってくるなんて、舌の根も乾かぬうちに嘘をついてどうするの。
- 上司に言われて仕事のマニュアルを変更し終えたばかりなのに、何が気に入らないのか、舌の根も乾かぬうちにまた同じ部分の変更をするように言われた。こんな上司のもとでは落ち着いて仕事なんかできないよ。
「舌の根も乾かぬうちに」英語での表現
「舌の根も乾かぬうちに」を英語で表すと、次のようになります。
- in the same(next) breath
- hardly had the words been said
- no sooner were the words out of one’s mouth than
「舌」の慣用句
「舌の根も乾かぬうちに」の他にも、次のような「舌」の慣用句があります。
- 舌が肥える: 美味しいものに詳しく、美味かそうでないかがわかるようす。美味しいものを好んで食べるようす
- 舌が回る: 話が達者で、すらすらよどみなくしゃべること
- 舌がもつれる: 舌がうまく回らないで、上手にしゃべることができないようす
- 舌先三寸: 口先だけの言葉で、中身がともなっていないこと。口先だけで人をあしらうようす。「舌三寸」ともいうが、「口先三寸」は誤用
- 舌の剣は命を断つ(したのつるぎはいのちをたつ):よく考えないで話してしまったことが原因で命を落としてしまう。軽率な発言は慎むべきであるということ
- 舌は禍の根(したはわざわいのね):何かを話したとき、その言葉によっては災難を招いてしまうということ
- 舌を出す: 心の中で馬鹿にして、あざ笑うこと。失敗や恥ずかしさをごまかすこと
- 舌を巻く: 相手の振る舞いなどに感心して驚くようす
- 筆舌に尽くしがたい: 文章や言葉では表現することができないくらいにはなはだしいようす
乾かないのは舌の根?舌の先?
文化庁は、平成7(1995)年度から毎年、国語施策の参考にする目的で、全国の16歳以上の男女から抽出された人たちに個別の面談の形式で「国語に関する世論調査」を行い、漢字や慣用句などに対しての理解度や関心などといった日本語についての意識を調査しています。
「舌の根の乾かぬうちに」の調査結果
この調査で、本来の使い方である「舌の根の乾かぬうちに」と、本来の使い方ではない「舌の先の乾かぬうちに」のどちらを使うかを調べたところ、次のような結果が出ました。
【平成18年度の調査】
「舌の根の乾かぬうちに」:53.2%
「舌の先の乾かぬうちに」:28.1%
【平成30年度の調査】
「舌の根の乾かぬうちに」:60.4%
「舌の先の乾かぬうちに」:24.4%
ここから、およそ2割から3割くらいの人が、「舌の先の乾かぬうちに」と、本来の使い方ではない使い方をしていることがわかります。
年代的には、平成18年度の調査で、16~19歳の若い年代と、50代、60歳以上の年代で「舌の先の乾かぬうちに」を使っている人の割合が3割以上と高くなっています。平成30年度の調査では、16~19歳と20代で「舌の先の乾かぬうちに」を使う割合が3割を超えています。