「胸を借りる」とは
「胸を借りる」とは、「相撲で上位の力士にけいこの相手をしてもらうこと。実力のある者に練習の相手をしてもらうこと」という意味です。つまり、「力量のない者が実力や経験を兼ね備えた者に自分の練習の相手をしてもらうこと」を表しています。
「胸を借りる」の語源
「胸を借りる」は、相撲用語から由来していると言われています。相手力士の胸めがけて、ぶつかっていく相撲の稽古風景が思い出されますね。下位の力士は、上位の力士から稽古をつけてもらう。相撲の世界では、稽古も実力上位が優先されます。
相撲で使われていた言葉が、一般的に広まり、自分より技量のある相手に練習相手になってもらうという意味で比喩的に使われるようになってきました。
なお、上位の者が下位の者にけいこをつけたり、練習相手になることを「胸を貸す」と言います。「胸を借りる」の反対語に位置付けられ、このフレーズも一般的に使われています。
「胸を借りる」の使い方・例文
- 明日は強豪校の胸を借りて試合を行う。思い切って戦うように。
- いままで師匠の胸を借りて練習してきた。恩返しの意味も込めて試合で勝利したい。
- 我が社とA社が入札プロポーザルの最終審査に残った。相手は大企業ですが、胸を借りるつもりで正々堂々と臨むだけです。
- 先輩力士の胸を借りて日々稽古に打ち込んでいます。
「胸を借りる」の類語
- 稽古をつけてもらう。
- 稽古の相手を乞う。
- 相手をしてもらう。
- 練習相手になってもらう。
「胸」を使ったフレーズ
「胸が熱くなる」
「胸が熱くなる」とは、「感動がこみ上げてきて、胸がじいんとする」という意味です。体の奥底から感動や感激が静かに湧き上がってくる様子を表しています。
【例文】
- 卒業式でクラスメイトが泣く姿を見て胸が熱くなった。
- 彼の全身全霊の演技を見て胸が熱くなった。
「胸が痛む」
「胸が痛む」とは、「ひどく心配する。良心がとがめる」という意味です。「痛む」という表現を使って心配の度合いを表しています。
【例文】
- 悲惨な交通事故に胸が痛む。
- 彼女に悪いことをしたようで胸が痛む。
「胸が一杯になる」
「胸が一杯になる」とは、「感慨ひとしおで他のことはなにも考えられなくなる」という意味です。
【例文】
- 合格発表当日、自分の受験番号を掲示板で見つけ胸が一杯になった。
- 旅先で多くの人に親切にされて胸が一杯になった。
「胸を突く」
「胸を突く」とは、「はっとする。驚く。さまざまな思いがつのる」という意味です。動揺して、激しく心を動かされる様子を表しています。
【例文】
- 彼女の一言に胸を突かれしばらく立ち直れなかった。
- 社会人としての生活が始まりこれからの不安に胸を突かれた。
相撲用語を語源とする表現
日本語には相撲用語を語源とする表現がたくさんあります。相撲は日本の国技として広く親しまれるばかりでなく、その用語までもが表現方法の一つとして用いられています。
「勇み足」
「勇み足」とは、「相手を土俵際まで追い詰めながら、勢いあまって自分からさきに足を土俵の外に踏み出すこと」「調子づいて、やりすぎたり、仕損じたりすること」という意味です。
【例文】
- 新任大臣の勇み足の発言が問題になっている。
- 今回ばかりは警察の勇み足による誤認逮捕のようだ。
「土俵際」
「土俵際」とは、「相撲の土俵上で内外の境界となる俵のそば」「物事が決着する瀬戸際。土壇場」という意味です。
【例文】
- 土俵際からの大逆転により勝利することができた。
- 二国間の貿易交渉は、土俵際をむかえた。
「待ったなし」
「待ったなし」とは、「相撲や碁、将棋などで待ったができないこと」「少しの猶予もないこと」という意味です。そこから転じて、先延ばしすることができず、時間的に差し迫っている様子を表現しています。
【例文】
- 感染拡大を阻止する待ったなしの状況となっています。
- 景気浮揚に向けて待ったなしの対策が求められています。
「一人相撲」
「一人相撲」とは、「二人で相撲をとっている様子を一人で見せること」「相手がないのに自分だけ気負いこむこと。または、実りのないことに必死で取り組むこと」という意味です。
【例文】
- この試合の敗因は二番手投手が一人相撲のピッチングをしたことです。
- 彼は助言を無視してむなしい一人相撲の行動をとってしまった。