「うつつを抜かす」の意味
「うつつを抜かす」とは、ある物事、趣味、人物などに対して程度が激しいくらいに夢中になることを言います。
「うつつ」は漢字で「現」と書き、現実や実在していること、正気(正常な意識、平常心のこと)を表します。「抜かす」は自ら抜けた状態にする、失われた状態にすることです。
「うつつを抜かす」の使い方と例文
「うつつを抜かす」は、さまざまなシーンに対して用いることができますが、やや否定的なニュアンスを含んでいることが多いでしょう。代表的な場面を挙げて使い方を紹介します。
現実を忘れるくらい熱中する
上述の通り「うつつを抜かす」は、物事に対し、現実を忘れるくらいに熱中していることを表すのに使います。時間が経つのを忘れるくらい趣味に没頭している様子、部活動に熱心に参加している様子などがあてはまるでしょう。
しかし、目に余るくらい一生懸命に打ち込み過ぎると、生活に支障がでたり体調を崩したりと問題が起こることもありますね。「うつつを抜かす」は、過度な取り組みに対して、ネガティブな印象を受けた時に用いる傾向があります。
【例文】
- 父は骨董品の収集にうつつを抜かし、寝食を忘れることもある。
- 友人はサークル活動にうつつを抜かすあまり、単位を落としまくっている。
良くないこと・必要ないことにのめり込む
周囲から見て悪いことや、常識から考えて道徳的に良くないことにのめり込んでいる様子を表すのに、「うつつを抜かす」が使われることもあります。
また、実際にしなければいけないことがあるにも関わらず、現実から目をそらして他の娯楽などの楽しいことや、くだらないことや必要のないことに夢中になっている場合にも使われます。
【例文】
- 賭け事にうつつを抜かす。
- 控えるべきだと分かってはいても、つい夜遊びにうつつを抜かしてしまう。
異性に夢中になる
「うつつを抜かす」は、異性に夢中になっているという意味合いでも使うことができます。片思いをして他のことが手につかなくなる、両思いになったばかりで相手のことしか目に入らない様子を描写できますね。
周囲の人から見て感心しない人に、欠点に気づかずに一方的に惚れ込んでいるというニュアンスでも使えます。
【例文】
- 学校で一番人気の彼にうつつを抜かして、勉強に身が入らない。
- 後妻業と噂される女性にうつつを抜かして、財産を失いそうな人がいる。
「うつつを抜かす」の類語
上の空
「上の空」(うわのそら)には、複数の意味があります。文字通り空の上、つまり天空を表すこともありますし、漠然とした根拠のないこと、軽率で不用意な様子などを指すこともあります。
現代では、他のことに夢中になって実際のことに集中できない様子や、気持ちが浮ついて落ち着かない状態を示すのに使うことが多いでしょう。「うつつを抜かす」と似た意味であるといえますね。
【例文】
- 好きな子と遊びに行く約束が楽しみで、上の空で授業を受けている。
- 両親が言い聞かせても上の空で、遊びに出かけることしか頭にない。
病膏肓に入る
「病膏肓に入る」(やまいこうこうにいる)は、中国の『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』が元になっています。
もともとは、難しい病にかかりなかなか病気が治らないことを指しました。そこから転じて、あることに夢中になってやめずにどうしようもない様子を意味するようになりました。「膏肓」は身体の部位で「膏」は心臓の下、「肓」は横隔膜の上の場所です。
晋の景公(しんのけいこう)が病気になった時、病の精が2人の子供の姿になって、薬が効かない「膏」と「肓」の場所に逃げ込みました。そのため、不治の病となり手の施しようがなくなったということです。
【例文】
- 3月に開幕すると、プロ野球のことばかり考えていて病膏肓に入るという感じだね。
- ダイエットし始めると、まさに病膏肓に入るのように食べ物が頭から離れない。
血道を上げる
「血道を上げる」(ちみちをあげる)は、主に恋愛や趣味などの道楽に分別がなくなるくらいのめり込む、異性にのぼせ上がって夢中になることを言います。
「血道」とは別名「血の道」のことで、女性のホルモンバランスからくる不快な症状を指します。熱くなって顔が紅潮しのぼせたような感じの症状から来ています。しかし、「血道を上げる」は女性だけでなく男性にも使える表現です。
【例文】
- ゴルフの血道を上げて、仕事をおろそかにしちゃだめだよ。
- 格好いい男性に血道を上げて、お金を貢ぎまくっている。