「格好の餌食」意味
「格好の餌食」(かっこうのえじき)とは、利益や欲望のために狙われている存在や、非難や攻撃などのはけ口などの犠牲にさらされるのに適切とされる人物のことを言います。
この場合の「格好」は姿かたちや身なり、物事の状態や年齢の意味ではありません。前後につく語句(この場合は「餌食」)に対してふさわしい様子であることを表します。
「餌食」は、餌として食べられる動植物から転じて、他人が得するために犠牲になる人物や団体という意味です。
「格好の餌食」使い方
「格好の餌食」の使い方を代表的なシーンごとに紹介します。対象となった人物や団体は、犯罪者から何らかの被害を受けたり、小さな出来事が大きく取り沙汰されて私的に罰せられるなど、大変な思いをすることもあるでしょう。
インターネットの発展により情報の伝達が早く、また、多くの人が自由に意見を述べられるようになったため、芸能人でも一般人でも「格好の餌食」となる人が増えています。
詐欺やいじめなどの被害者
電話で家族を装ってお金を騙し取る「オレオレ詐欺」や、大人でも子供でも集団でのいじめなどが社会問題となっています。詐欺被害に陥れやすい人やいじめ被害に遭う人のことを犠牲者に見立て「格好の餌食」と表現する場合があります。
- インターネット環境が整っていないと、素早く情報が得にくいので、詐欺師の格好の餌食になりやすい。
- 大人しく優しい人や子供は、いじめの格好の餌食にされる。
注目されて狙われやすい人
全国的な有名人というわけではなくとも、行動の仕方や発言に問題があり、限られた空間やグループの中で狙われやすい人や集中して非難を受けやすい人を「格好の餌食」とすることもあります。
- 治安に悪い地域で露出の多い服装で歩くと、格好の餌食になってしまうよ。
- 何かと目立っている彼を疎ましく思っている社員も多く、彼が失敗をすると格好の餌食にされてしまう。
インターネットでの炎上
現在で格好の餌食になりやすいのが、SNSやブログ、掲示板などの書き込みです。多数の閲覧者から集中して非難されたり、曲解して中傷めいた多数の書き込みをされたりして炎上し、収拾がつかなくなる場合もあります。
アカウントを閉鎖しても、画面のハードコピーが取られてインターネット上に残ります。そのため、何年経っても問題となった書き込み蒸し返されるケースも多いのです。
- SNSにアイドルとのお付き合いを匂わせて、ファンからの格好の餌食になった女性がいる。
- 不倫を肯定するネット書き込みをしたら、非難を浴びて格好の餌食となった。
「格好の餌食」由来
「格好の餌食」の「格好」は本来「恰好」という字が当てられていました。「恰好」を読み下し文にすると、「恰も好し」(あたかもよし)となります。「あたかも」はちょうど、「よし」は良いという意味で、ちょうど良くふさわしいこと、適切なことを表しています。
「恰好の餌食」となると、ちょうどよく他人の犠牲になるのにふさわしいという恐ろしい意味になりますね。時代が下って、ちょうど良い形のことを表すようにもなり、姿や形、身なりという意味が派生し、「格好」という字が使われるようになりました。
鳥の「カッコウ」は関係ない
ネットでの書き込みで、「格好の餌食」を鳥の「カッコウ」に由来するのかとの質問が見られます。しかし、上で説明にしたとおり、「恰好」に由来していますから、「カッコウに食べられる生き物」から来ている訳ではありません。
「格好の餌食」類語
格好の的
「格好」という言葉を使った他の表現に、「格好の的」(読み:かっこうのまと)があります。「格好の餌食」とよく似ている表現で、ちょうどよい標的という意味です。
この場合の「的」は、悪意があって狙いを定めて攻撃したり、笑い者にしたりする相手を指します。詐欺などの犯罪の被害者の意味でも使われます。
- 美人で頭も良いので、嫉妬深い人からのいじめの格好の的になりやすい。
- 詐欺を働くのには、鈍い人が格好の的だ。
スケープゴート
「スケープゴート」(scapegoat)とは、人の罪を神に赦してもらうために、ヤギに罪をきせて荒野に放ったという故事から取られています。
多くの人の不満や怒りを解消させるために、攻撃の対象となる人物や集団のことをヤギにたとえています。ただし、「格好の餌食」のように詐欺やいじめなどの被害者といった意味では使われません。
- 不祥事を起こした会社の社長が記者会見でスケープゴートにされている。
- 世間の目をそらすために、スケープゴートが必要だった。