「猫に鰹節」の意味とは?
「猫に鰹節」(ねこにかつおぶし・ねこにかつぶし)の意味は以下の通りです。
- 油断できない状態を招く
- すでに危険で取り返しのつかない状況になる
人でも動物でも、好物を前に置かれて我慢するのは難しいことです。「猫に鰹節」は、猫に好物の鰹節の番をさせることが非常に難しいことから、よく考えもせずに不適任な者に物事を任せて、危機的な状況に陥ることを表しています。
「猫に鰹節」の由来
「猫に鰹節」の由来は、二つあります。
『甲陽軍鑑』
戦国時代の甲斐国大名武田信玄に代表される武田氏の軍学書『甲陽軍鑑』の一節に、「取たる国郡(くにこおり)を人の方へ渡すといふ儀は、下劣の喩(たとえ)に猫(ネコ)に鰹(カツヲ)の節(フシ)を預たると申も」とあるところから由来しています。
「戦で手に入れた領土を人に預けるということは、下品な例えをするなら、猫に鰹節を預けるということと同じ」で、信頼できない人間に物事を任せることは、油断できないことであるということです。
『根無草(根南志具佐)』
江戸時代の発明家で、戯作、医学、薬学など多方面に活躍した平賀源内(ひらがげんない)が、風来山人(ふうらいさんじん)というペンネームで著した『根無草(根南志具佐)』(ねなしぐさ)という講談本の一節です。
「焼鼠を狐に預け、猫に鰹節の番とやらにて、必定、しくじりの番なり」、好物の番をさせると我慢できずにしくじる(食べてしまって失敗する)のは当たり前ということです。
狐は、穀物の神様「お稲荷様」の御使いというだけあって、米を食べてしまう鼠が好物のようですね。神社の狐の像にいなりずしをお供えするのは、鼠に似ているからという説もあります。
「猫に鰹節」使い方
「猫に鰹節」は、危機に瀕するのが予想され、まだ事が起こっていなくても油断できない状態やもうすでに取り返しのつかない状態に陥っている状態の両方の場面で使えます。
文例・油断できない状態
- 鯵(あじ)をベランダに干すと鳶(とび)や烏が狙っていて、猫に鰹節の状態になりそうだ。
- 和菓子好きの父の側にどら焼きを何個も置いて我慢しろと言うのは猫に鰹節と同じなので、1個だけにするつもりだ。
文例・取り返しのつかない状態
- 釣り上げた魚に野良犬が前足をかけている。猫に鰹節の状況だ。
- お客様に出そうとした日本酒を置いておいたら、彼が全部飲み干してしまい、猫に鰹節だったと呆れてしまった。
「猫に鰹節」誤用に注意
「猫に鰹節」を使う際に意味の取り違えをしている場合があります。代表的な例を2つ紹介します。
誤用①猫の好物
鰹節は猫の好物なので、「猫に鰹節」は、猫がとても好きな物のことを表す、または、与えることで猫が喜ぶことから効果が高まるという意味と考える方もいます。この場合は、「猫にまたたび」が適しているでしょう。
「またたび」が、猫の大好物とされているところから、「猫にまたたび」は、大好きな物や、それを与えれば著しい効果があがることを意味することわざです。
誤用②思いがけない幸運にあう
「猫に鰹節」は、予想外の幸運に出くわすという意味と取り違えている方もいます。大好きな食べ物が出されることから、思いがけぬチャンスが巡ってきたと考えられたのでしょう。この場合は、「棚から牡丹餅(たなからぼたもち)」が適しているでしょう。
「棚から牡丹餅」は、「たなぼた」とも言い、棚から落ちてきた牡丹餅が、ちょうど開けていた口に入るということから、めったにない幸運が舞い込んだことを意味することわざです。
「猫に鰹節」の同義語や類義語
同義語
- 猫に乾鮭(からざけ:塩を振らずに陰干しにした鮭のこと)
- 猫に鰹
- 猫に鰹節の番または、猫に魚の番
- 狐に小豆飯(あずきめし:お稲荷様に供える小豆入りご飯。狐の好物)
- 金魚にぼうふら
- 羊の番に狼(おおかみ)
類義語
- 盗人(ぬすっと)に鍵を預ける
- 盗人に蔵の番