「面食らう」とは
「面食らう」とは、「突然の事に驚きとまどうこと。まごつくこと。」という意味です。「驚く。とまどう。」という表現ではなく、「面食らう」とは不思議なフレーズですね。
では、このフレーズはどのように用いられるのでしょうか。また、どのようなことから、このような意味をもつようになったのでしょうか。言葉の使われ方と由来について見ていきます。
「面食らう」の使い方と例文
「面食らう」という言葉は、一見すると「悪いイメージの場面」で使われると思われる方も多いのではないでしょうか。しかし、悪いイメージだけではありません。
むしろ、「予想もしていなかったうれしい知らせなどが舞い込んでくる」など「良いイメージの場面」でもよく使われます。言葉は外見だけでは判断できませんね。
例文
- 宴会も終わりの時間になってきた。司会から思いがけず、終わりのあいさつの指名を受け、すっかり面食らってしまった。
- 慣れない土地で仕事をすることになった。すべてが面食らうことばかりだ。
- 彼からの突然の告白に面食らうばかりです。
- 今回の人事異動で部長に昇格してしまった。予期しないことですっかり面食らってしまった。
「面食らう」の由来
「面食らう」は「栃麵棒(とちめんぼう)を食らう」の略とされています。栃麵はその原料としてトチノキの実を使いますが、練りこむとすぐ固まってしまうのです。
そのため、固まってしまわぬうちに急いで麵棒をふるって麺にしている様子から「不意をつかれてとまどったっり、まごついているさま」を表現した言葉となりました。
栃麵は、あく抜きしたトチノキの実の粉を小麦粉やそば粉に混ぜてうどんのように作った食品です。今ではあまり見かけません。しかし、同じようにトチノキの実を用いた「栃餅」は、土産物店で販売されています。
「面食らう」を分解してみると
「面食らう」を構成する「面」、「食らう」はそれぞれが意味をもっています。この二つの言葉がお互いを補完しながら、「面食らう」の意味をつくっています。それぞれのもつ意味について見ていきます。
「面」の意味
「面」は、主に、「顔面を保護する防具」、「物の外側の平な広がり」や「方面」ということです。また、「剣道の技の一つ」という意味ももっています。「面食らう」の面とは直接に関係はありません。
しかし、「面食らう」の由来とされている「栃麺」の「麺」に、「めん」という読みをかけ合わせています。
「食らう」の意味
「食らう」は、「食べる」や「飲む」という行為を「乱暴でいい加減」な言い方で表現したものです。「パンチを食らう」というフレーズからも「迷惑などを身に受ける」という意味ももっています。
また、「食らう」は「喰らう」とも表記される言葉です。「喰らう」は「食らう」と同様に食べることを表現しています。ただし、「喰らう」は動物がものを食べる様子など野生的な表現として使われることが多いです。なお、常用漢字ではありません。
「面食らう」の類義語
「面食らう」の類義語には、「思いがけないできごとにあわてたり、不意をつかれてとまどったりしている様子」などを表す言葉が挙げられます。
- 狼狽する:あわてふためくこと。うろたえること。
- 泡をくう:驚きあわてること。
- 動転する:驚きあわてること。
- 鳩が豆鉄砲を食う:思いがけないことにあわてるさま。
「面食らう」の英語表現
「面食らう」は、「困惑する」や「はっとする」と解釈することもできます。英語では、「困惑する」を「be confused」、「はっとする」を「be taken aback」と表現します。
例文
- She was very confused by his questions.
- I was taken by surprise aback.
「面食らう」が使われた記事
新聞や雑誌などのメディアにおいて、思わぬ体験や信じられない光景などにより驚かされた事例が「面食らう」という表現を使って紹介されています。理想と現実のギャップや予期せぬできごとなど、社会には「面食らう」ことが多いですね。
2018年1月21日 日本経済新聞
〃寄席「岩本」に、「夏目先生著 吾輩ハ猫デアル 松林伯知述」という看板出ていて、面食らった。〃
2016年8月5日 サライ