「先立って」の読み方
「先立って」は、「さきだちて」の音が変化した言葉。したがって、「さきだって」と読むのが一般的です。さらに音が変化した言葉が「せんだって」です。多くの場合、「先だって」と、ひらがな表記するときは「せんだって」と読みます。
また、「先立って」を「先達て」と書かれることもあります。この場合には、「さきだって」と「せんだって」、どちらとも読めるのですが、「せんだって」と読むことが多いようです。
「先立って」の意味
「先立って」には、以下のような意味があります。
- さきごろ。この間。先日。
- 前もって。あらかじめ。
1の意味は、時間的に現在に近い過去のことを表します。一方で2の意味は、何かしらの出来事が起こるよりも前であることを表します。
また、「先達て」と表記した場合には、さきごろやこの間といった1の意味のみを表します。
「先立って」の使い方
1.さきごろ
- 先立ってご提案した件につきまして、採用していただきありがとうございました。
- 先立ってお会いしましたが、とても素晴らしい方でした。
2.前もって
- イベントの開催に先立って、会場の最終チェックをしておいた。
- 先立って話を通しておいた甲斐あって、スムーズに事を運ぶことができました。
「先立って」の語源
最初に説明したように、「先立って」は、「さきだちて」という言葉の音便です。音便とは、日本語を構成している音節(母音のみや子音+母音といった音声の単位)の一部分が抜け、もとの読み方とは変わってしまう現象です。
「先立って」は「さきだちて」が変化したものであることから、「さきだちて」の意味である「先に」「以前に」「前もって」という意味を持ちます。
「先立って」の類語
現在に近い過去を表す類語
「最近」「近頃」といった、「先立って」の類語には次のような言葉が挙げられます。これらの言葉は、少し前から現在にいたるまで、ある程度その状況が続いている場合に用いられることが多いようです。
- 今日この頃:「暖かくなってきた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。」
- この頃:「この頃は天気の悪い日が続いている。」
- このほど:「私の子どもは、このほど留学先から戻ってきたばかりです。」
- このところ:「このところ忙しい日々が続いているせいで寝不足だ。」
- この節:「この節は私の周りでは明るい話題が続いている。
また、「先般(せんぱん)」や「最近」といった類語は、状況が続いている場合だけでなく、ただ一回の出来事を表す際にも使うことができます。
- 先般:「先般申し上げました通り、大会の開催場所は変更されました。」
- 最近:「彼の息子は最近、就職が決まったばかりだ。」
「前もって」「あらかじめ」という意味の類語
【予て(かねて)】
「予て」は、「兼ねて」とも書き、以前から見込みを立てて、前々からずっとという意味です。「予てよりやりたいと願っていたことを、ようやく実現することができた」のように使います。
【兼ね兼ね(かねがね)】
「兼ね兼ね」は「予予」とも書くことができ、以前からずっと、前々からという意味があります。「兼ね兼ね行きたいと思っていたこの地にようやく来ることができて嬉しい」のように用いられる言葉です。
「先立って」の慣用句
「先立って」という一つの言葉としても使われますが、「先立って」を含む慣用句もあります。
先立って中
「先立って中(さきだってじゅう)」はこの間中という意味です。「さきだってうち」とも読みます。
「先立って」に「中(じゅう)」という「その間ずっと」という意味を持つ語を付けることで、継続のニュアンスを伝えることができます。
【例文】
- この問題について先立って中考えているが、さっぱりわからない。
- 先立って中体調が悪いので、気分がすぐれない。
先立って来
「先立って来(さきだってらい)」には、さきほどからという意味があります。「先立って」に続く「来(らい)」には、「ある時点からここまで」というニュアンスが含まれているのです。
【例文】
- 先立って来、先方から連絡をもらっていたことに気がつかずにいた。
- 先立って来、疑問に思っていることがある。