「市井の人」とは
「市井の人(しせいのひと)」とは「市中に住む人・庶民」という意味です。助詞を省いて「市井人(しせいじん)」とも言われます。
「市井の人」の使い方
- 彼女は芸能界を引退してからは故郷に戻って市井の人として暮らした。
- この作品はごく平凡な市井の人たちを描いた作品だ。
- 王は市井の人と親しく交わり、善政を行った。
「市井」とは
「市井」は、人家が集まっている場所・町(街)・市・ちまたという意味です。「市井」を含む慣用句には次のような言葉があります。
- 市井の臣(しせいのしん):庶民。「市井の人」と同義。(「臣」=一般市民)
- 市井の賢人(しせいのけんじん):隠れた人材。世間での知名度は低くとも優秀な人。
- 市井の埋れ木(しせいのうもれぎ):「市井の賢人」と同義。
- 市井の徒(しせいのと):市中に住むならず者。(市井の無頼の徒)
「市井」の語源
「市井」の語源には諸説あります。おもな説のひとつは、古代の中国で井戸の周りに人家が集まって市を形成していったこと。もうひとつは、市街では道が交差して「井」の字の形をしていることです。
「市井の人」の類語
「一般人」
「一般人」は普通の人・特別な身分や地位を持たない人を指す言葉です。一般ピープル、一般ピーポー、またはパンピーといった俗語もありますね。ここでの「一般」はありふれている・普通という意味ですから、「一般人」は「市井の人」と同義と言えます。
「凡人」
「凡人(ぼんじん)」には、(貴族などに対して)身分の低い人・平民、あるいは、普通の人・平凡な人という意味があります。いずれの意味であっても「市井の人」に類する言葉です。
「大衆」
「大衆(たいしゅう)」は、一般的には、多くの人・社会の大部分を占める人々(特に労働者や農民)という意味で用いられています。「民衆」も同義です。
「市井の人」はひとりの人を指す場合と複数の人を指す場合とがありますが、「大衆」は複数の人を表すという点では異なります。
「草の根」
「草の根(くさのね)」は、「草の根を分けても探し出す」のように草の根元・隠れて見えないところといった意味もありますが、政党や労働組合などの組織に属さない一般人・一般大衆という意味をも持っています。
後者の意味は、英語で世論などの重大な要素としての一般大衆を指す'grass roots'に由来するものです。
「無辜の民」
「無辜(むこ)」とは、罪のない・無実のという意味です。「無辜の民(むこのたみ)」は罪なき人々を表しており、多くの場合は、悪政や国家間の紛争などに巻き込まれる人々を指すのに用いられます。
「市井の人」の英語表現
ところで、1980年にアカデミー賞を受賞したロバート・レッドフォードの初監督作品は『普通の人々』というタイトルでした。原題は"ordinary people"。'ordinary'は「普通の・通常の」という意味ですから、'ordinary peplpe'は直訳でも「市井の人々」となりますね。
そのほかにも、「市井の人」の英語表現には次のような言葉が挙げられます。
- ordinary citizen(普通の市民)
- a parson on the street(通り・街頭にいる人→専門家などに対して言う市井の人)
- everyday people(ありふれた・平凡な人々→市井の人々)
「市井の人」の対義語
「市井の人」は庶民という意味ですから、対義語となるのは普通ではない人を指す言葉です。とはいうものの、何を以って普通とするかは状況によっても異なりますから、反対の意味となる言葉もさまざまです。
上でご紹介した「市井の徒」は市井の人に害をなす存在なので、「市井の人」の対義語になり得ます。また、時代劇などでは、普通ではない人といえば「貴族」や「武士」など身分の高い人でしょう。
普通の人を中流階級の人たちとするならば「富裕層」「富豪」、才能や才覚についての話題であれば「専門家」や「天才」「英雄」「傑物」、政治に関する文脈であれば「為政者」「支配層」などの言葉が「市井の人」に対する言葉として考えられます。