「有り体に言えば」の意味
「有り体に言えば(ありていにいえば)」は、「有り体」という名詞に「に言えば」が付いた慣用句です。この「有り体」には、以下の二つの意味があります。
- ありのまま。うそ偽りなく。
- 世間並み。
1は、自分の思いや考えをありのままに告げたいときに使います。また、2の意味のように「世間並み」「一般的」といった意味で用いることもできます。それぞれの使い方を見ていきましょう。
「有り体に言えば」の使い方
「ありのまま」の意で用いる場合
「有り体に言えば」を「ありのまま。うそ偽りのない」の意で用いるのは、「自分が知っている事実や情報を、正直に、包み隠さず話したい」ときや「ちょっと言いにくくて遠慮していたけれど、思い切ってはっきり話したい」ときなどです。
イメージとしては、若者言葉の「ぶっちゃけて言うと」に近いかもしれません。「ぶっちゃけ」は砕けた表現ですのでビジネスシーンなどでは使えませんが、「有り体に言えば」なら問題なく使えます。
「世間並み」の意で用いる場合
「有り体に言えば」を「世間並み」の意で用いるのは、これまで説明してきた事柄や状況などを、平易な表現や一般的な言い方に置き換えて分かりやすく説明したいときです。
イメージとしては、「世間的に」「俗に」や「一般的に」などの言葉に意味が近いでしょう。
「有り体に言えば」の例文・使用例
「ありのままの」の意の例文
- 現在進行中の案件ですが、有り体に言えば、このままだといずれ失敗するでしょう。
- 年齢による肉体の衰えは避けられず、有り体に言えば、今後これ以上記録を伸ばすことは不可能でしょう。
- 有り体に言えば、戦局は今後こちらに不利な状況となるでしょう。
「世間並み」の意の例文
- 肉と野菜をフライパンに入れた後、最後に卵とご飯を入れて炒める。有り体に言えばチャーハンだが、彼にとっては全く別物らしい。
- 紺色のスーツにシルクハット。彼の見た目は有り体に言えば英国紳士だった。
「有り体に言えば」の成り立ち
「有り体に言えば」は、名詞の「有り体」に「に言えば」が付いた言葉です。さらに言うと「有り体」は動詞「有り」に、名詞の「体(てい)」が付いた表現です。
「有り」は「事物が存在する」「ある事柄がはっきり認められる」などを意味する言葉です。一方の「体」は「外から見た物事のありさま」「見せかけ。体裁(ていさい)」を表します。
つまり「有り体に言えば」は「事物が存在するありさま」や「事物や事柄の見せかけや体裁」を表しており、そこから「ありのままの」「世間並み」といった使い方をするようになったと考えられます。
「有り体に言えば」の類語
端的
「端的(たんてき)」とは、以下の意味を持つ言葉です。
- はっきりとしているさま。明白。
- まのあたりに起こるさま。たちどころであるさま。
- てっとりばやく要点だけをとらえるさま。
「端」という字には「正しい。きちんとしている」という意味が、「的」という字には「あきらか。はっきり」という意味がそれぞれあります。つまり「端的」で「正しくあきらかなさま」を表しており、それが上述の意味へとつながっていきました。
「有り体に言えば」は上述のとおり、少し言いにくいことをはっきり言う際に用いますが、「端的」にはそのようなニュアンスは無く、ポジティブな文脈においても用いることができます。
率直
「率直(そっちょく)」とは、「ありのままで隠すところがないこと」を指す言葉です。「率」という字には「ありのまま。自然の」という意味が、「直」という字には「まっすぐ。すなお」という意味がそれぞれあります。
「率直」はこの二つの字を組み合わせた言葉で、「ありのまま素直なさま」を表しています。なお、「率直」も「端的」と同じように、ポジティブ・ネガティブ両方の文脈において使うことができます。
赤裸々
「赤裸々(せきらら)」とは、以下の意味を持つ言葉です。
- からだに何もつけていないこと。まるはだか。
- 包み隠しのないことや、そのようなさま。あからさま。
「赤」という字には「むきだし。何もない」という意味があります。また「裸々」は「裸」を並べて意味を強調させている表現です。つまり「赤裸々」は「まったく何もない」「本当に隠し事がない」ことを強く強調した表現と言えます。