「趣向を凝らす」とは?
「趣向を凝らす」は、「しゅこうをこらす」と読み、ある対象が、より面白く、風情や趣きが増すように工夫することを意味する言い回しです。
「趣向を凝らす」への理解をより深めるために、まずは「趣向」と「凝らす」の言葉の意味をそれぞれ解説します。
「趣向」
「趣向」は、大きくわけて次の4つの意味をもつ言葉です。
- 趣き(おもむき)、心持ち、趣意、趣旨。
- 面白さ、趣き、味わいが出るために工夫すること、またその工夫。
- 歌舞伎、浄瑠璃における作劇のさいに、その背景となる類型的な世界に対して新しい変化を与える工夫をすること、またはその工夫。
- 俳諧の用語で、句の構想、句案。
「趣向を凝らす」における「趣向」は、2番目の意味で用いられています。1番目の意味も近いのですが、「趣向を凝らす」の主なニュアンスである「工夫する」という意味が含まれていません。
「凝らす」
「凝らす」には、大きく分けて次の3つの意味があります。
- 意識、心の働き、感覚を一つの対象に集中させること。
- ある対象に、一心に考えをめぐらせ、思いを注ぎ込むこと。
- 物が凝り固まるようにする。
「趣向を凝らす」に用いられているのは2番目の意味です。1番目の意味は、似ているようですが、「目を凝らす」「息を凝らす」などのように、おもに身体感覚における集中を意味しています。
「趣向を凝らす」の使い方
「趣向を凝らす」の「趣向」が、上記のように「面白さ、趣き、味わい」などへの工夫であることから、この言い回しを使う対象はある程度定まってきます。
すなわち、「趣向を凝らす」は、感性、感覚、センスを用いて他者の関心を集めるようなジャンルにおいて最も使われている言い回しです。
具体的な例を挙げれば、芸術作品、文芸作品、映画や舞台などの演出、料理、各分野におけるデザインや装飾、あるいはパーティーなどイベントにおける演出や飾りつけ、などが「趣向を凝らす」ものの代表といえます。
「趣向を凝らす」の文例
(A子)
シャガールの絵画は、色も鮮やかで、モチーフにもさまざまに趣向を凝らしてあるから大好きなの。
(B男)
この小説は、トリックが何重にも仕掛けられている趣向の凝らし方で、実に面白かったよ。
(C男)
昨夜観た芝居には度肝を抜かれたよ。舞台自体が回るという、あんな趣向を凝らした演出は初めてだ。
(D子)
良子ちゃんの料理は味つけも抜群だけど、見た目も繊細で、趣向の凝らし方が素晴らしいの。
(E男)
一郎君の結婚式に出席したけれど、披露宴は映像を駆使して趣向を凝らしたもので、感激したよ。
「趣向を凝らす」の類語
「技巧を凝らす」
「技巧を凝らす」とは、とくに芸術や文芸などの制作において、その表現の技術的な工夫をきわめること、制作、創作する技術(テクニック)をたくみに工夫することを意味する言い回しです。
【文例】
- 今回刊行された詩人Aの詩集は、どの篇も技巧を凝らした力作ばかりだった。
「創意工夫する」
「創意工夫する」とは、これまでにないような新しい方法、手段を見つけるために考えをめぐらせることを意味する言い回しです。
「趣向を凝らす」「技巧を凝らす」に比べて、ビジネスや生活の工夫など、その対象をより幅広く含む言葉です。
【文例】
- このたび完成した新しい社屋は、あらゆる部門が連携しやすいように創意工夫されている。
- 料理の手順や調理器具の収納がスムースにいくように、自分なりに創意工夫したキッチンに満足している。