「なかなかどうして」とは?
「なかなかどうして」は、最初はたいしたことがないと予想していたものが、実際は思っていた以上であったことを意味する言葉です。
「なかなか」も「どうして」も、なじみ深い言葉でありながら、二つ重なると意味が取りづらいという、珍しい言い回しではないでしょうか。
思っていた以上に~だった、とさまざまな予想と結果の落差を表現する場合に用いられますが、基本的には予想を上回って素晴らしかった、という賞賛を表すときに使われる表現です。
「なかなか」と「どうして」の意味
「なかなかどうして」の意味をより深く理解するために、「なかなか」と「どうして」をそれぞれにわけて検証していきましょう。
「なかなか」とは?
「なかなか」は、漢字では中々、中中と書きます。「中」という漢字は、大、中、小という並びの真ん中に位置するように、中くらい、平均的な、という意味です。ところが中中と重なると、異なる意味もおびます。
「なかなか」には、物事が予想したようにうまくいかないさま、という意味もあります。「今回の販売目標はなかなか達成できない」のような用法は、頻繁に見聞きしますね。
「なかなか」のもう1つの意味は、「予想をかなり上回るさま」です。「あなたの発想力が素晴らしいのは以前から知っていたが、行動力もなかなかのものだ」と言われれば、行動力がかなり高いと評価されていることになります。
「なかなかどうして」の「なかなか」は、この後者の用法、「思った以上に」という意味です。
「どうして」とは?
「どうして」も単体ではお馴染みの言葉です。とくに、副詞としては頻繁に以下の用法で使われています。
- 方法への疑問としての、どのようにして。(例:この瓦礫をどうして撤去したらいいのか?)
- 原因への疑問としての、なぜ?(例:どうしてそんなに頑固なのだろう?)
- 強い否定の、決して~ない(例:こんな仕打ちをうけて、どうして怒らずにいれる?)
- 前言を、予想外として強く否定する、それどころか(例:彼は一見ひ弱そうだが、どうして気骨ある男だ)
「なかなかどうして」の使い方
(A男)
新入社員の田中君は、一見内気そうに見えるが、なかなかどうして大胆な営業をしてくるよ。あっぱれな実績をあげてくれた。
(B子)
真由美ちゃんは、女らしさのかけらもないみたいに言われているけれど、なかなかどうして、料理も上手でこまやかな愛情の持ち主なのよ。
(C男)
この机は簡単に組み立てられるということで買ったのだけど、なかなかどうして難しいよ、参ったな。
(D子)
良子ちゃんは、名前のとおりの良家の子女、という噂だったけれど、なかなかどうして、高校時代はヤンキーでかなりのワルだったみたい!
まとめ
お馴染みの「なかなか」も「どうして」も、二つ重なると複雑な意味をおびるものですね。
上記の文例でもお気づきかと思いますが、「思った以上に~だ」という意味で用いられつつ、その内容は良くも悪くも、手ごわいものが多いといえます。
たとえば、相手が思った以上にか弱い時には用いづらい表現です。「A子さんは、クレーマーという噂だったけど、なかなかどうしてか弱い女性だ」とはまず言いません。
その逆なら「か弱いという噂だったけれど、なかなかどうして大したクレーマーだ」と、違和感なく使うことができます。
「なかなかどうして」には、(すごいものだなあ、驚きだなあ)という賞賛に近い感情が含まれているからかもしれません。「クレーマーという噂だったけれど、なかなかどうして優しい女性だよ」ならしっくりきますね。
「なかなかどうして」という言葉の意味や用法には、なかなかどうして深いものがありそうです。