「相容れない」の意味
「相容れない(あいいれない)」とはお互いに相手を受け入れることができないという意味です。「相」は相手や相互、「容れる」は許容や容認の意味です。単なる不和ではなく、根本部分からの対立に使われます。
どちらか一方を取ればもう一方が立たず、逆の一方を取っても同じ。少なくとも両立はできない状態です。
「相容れない」の使い方
「相容れない」の使い方について、「お互いが嫌い」「折り合いがつかない」の二つの観点から詳しく見ていきましょう。
お互いが嫌い
「相容れない」がよく使われるのは人間関係です。例えば、二人の人がいたとして、双方がそれぞれ相手を嫌っているような状況です。仲良くできないというだけではなく、敵対しているという意味でも使われます。
ケンカ中のような一過性のものではなく、性格や気質のような根本部分から敵対しあっているような状態が「相容れない」関係です。「そりが合わない」とも言えますね。深くかかわらない、距離を置いて付き合うくらいが限界の間柄といえるでしょう。
【例文】
- ムサシとコジロウは本当に仲が悪く、互いに相容れない。
- 「どこまでいっても、君とは本当に相容れないようだね。」
- 「お前は私の人生を台無しにした。相容れるわけがない。」
折り合いがつかない
「相容れない」は思想や立場、文化に関しても使われます。個人的な好き嫌いは別として、思想や利害関係で対立して妥協点を見いだせない状態です。根本部分からすれ違っているので、話し合いや交渉でまとまるような対立ではありません。
【例文】
- 自由で理屈っぽいこの男と私の考えとは本質的に相容れないところがある。
- 制度の上で合併したとはいえ、互いに相容れない企業風土を持った会社だ。気を付けていなければすぐにトラブルが起きるだろう。
- 歴史を振りかえってみても、資本主義と共産主義は相容れない存在だ。
「相容れない」の類語
二律背反
「二律背反(にりつはいはん)」とは、互いに矛盾することが同時に主張されることです。元となったドイツ語のまま「アンチノミー」と呼ばれることもあります。
「世界は有限である」と「世界は無限である」のような例がよく挙げられます。あるいは、「私はいつも嘘をつく」など。「二律背反」とはこれらのような矛盾した主張、パラドックスを指します。
さらに似た言葉に「アンビバレンス」があります。これは矛盾する二つの感情を同時に抱くことという心理学用語です。「好きと嫌いが入り混じっている」「好きなところも嫌いなところもある」のような気持ちであり、「両価感情」ともいいます。
不倶戴天
「不倶戴天(ふぐたいてん)」とは互いにこの世にいることはできない、殺したいほど恨みや憎しみが深いことです。書き下すと「倶には天を戴かず」。これは、共(倶)にこの世(天)に生きてはいない、どちらかは死ぬしかないという意味です。
元々は親の仇について言った言葉で、『礼記』には「父のあだは倶には天を戴かず」とあります。現代では身内の仇にかかわらず、単に憎んでいることや嫌っていることも表現します。
氷炭相容れず
「氷炭相容れず(ひょうたんあいいれず)」とは性質が全く違うもの同士は共存できないという意味です。
「氷炭」は文字通り、氷と炭です。まるで違うもののたとえとして引き合いに出されます。いわゆる「月とすっぽん」ですね。「相容れず」はもちろん、互いに受け入れられないことです。
同じような関係を表す言葉は他にもあります。「水と油」や「犬猿の仲」などは聞いたことがあるでしょう。