「垣間見える」とは?
「垣間見える」は「彼女の本性が垣間見えた。」などのようにも使われますが、本来の言葉の形は「垣間見る」です。
この語に関しては多くの議論が持たれています。自発や可能の意で使われることもありますが、「垣間見える」を誤用と考える人も少なくありません。
言葉は時代につれて変わるものですが、現状では「グレーゾーン」というところでしょう。それを踏まえた上で、本来の形である「垣間見る」について、意味や使い方をご紹介します。
「垣間見る」:読み方
元々は「垣間見る」を「かきまみる」と読んでいました。それがだんだんと変化していき(イ音便と呼ばれます)、「かいまみる」と読むようになりました。
「かきまみる」も間違った読み方ではないのですが、一般的に広く使われているのは「かいまみる」ですので、こちらを使った方が無難です。
「垣間見る」:意味
古文などに登場する「垣間見る」という語は、「物のすき間から、こっそりとのぞき見る」という意味で使われています。これが原義と言えるでしょう。現代語の「垣間見る」には大きく分けて、二つの意味があります。
- ちらっと見る。
- 事態・物事のわずかな面を知る。
ちらっと見る
「かいまみる」を「かきまみる」と読む場合は、基本的には「ちらっと見る」という意味で使われます。
「垣間(かきま)」というのは、垣根(かきね)の隙間のことです。垣根というのは、家の周囲や庭などの囲いや仕切りのことで、生垣のようなもののことをいいます。家と外の境界線のようなイメージですね。
童謡の"たき火"に「垣根の垣根の曲がり角〜」という歌詞がありますね。東京都中野区上高田には、モデルになった垣根の曲がり角が残っているそうです。垣根の隙間から見るということから、「ちらっと見る」という意味になりました。
事態・物事のわずかな面を知る
「垣間見る」には、もう1つ、「事態・物事のわずかな面を知る」という意味があります。日常生活で「垣間見る」を使う場合、こちらの意味で使う機会の方が多いでしょう。
「見る」とは、視覚によって、物の形・色・様子などを知覚することです。つまり「ちらっと見る」というのは、実際に目という体の一部を使って"見る"という動作的なものです。
一方で、「見る」という言葉には、存在を確認したり、認める、判断するなどの意味もあります。「隙間から見る」という意味から転じて、「物事のわずかな面を感覚的に知る」というのが、こちらの意味です。
冒頭の「彼女の本性を垣間見た」は、実際に目で見たニュアンスではなく、「本当の姿を知ってしまった」という感覚的なものです。今まで知らなかった側面を知った時などに使われます。
「垣間見る」:語源
平安時代、貴族の女性は人前に出ることはほとんどなく、家で過ごしていました。そのため、男性が女性を見るために垣根の隙間からこっそりと覗いていたと言われています。
そこから「垣間見る」は「かきまみる」で「物のすき間から、こっそりとのぞき見る。」という原義が生まれました。そこから「チラッと見る」いう意味に転じました。
「垣間見る」:使い方
ちらっと見る
- やり手だと有名なあの人を、展示会で初めて垣間見た。
- 彼女は社内で垣間見た男性の正体ばかり気にしている。
- ファッションのセンスは、垣間見ればすぐに分かる。
事態・物事のわずかな面を知る
- あのプレゼンから、彼の実力の一端を垣間見た。
- 彼女の成長を垣間見ることができた。
- 違う一面を垣間見た気がした。
「垣間見える」まとめ
「垣間見える」という使い方は、誤用とまで強く言えないのが現状です。実際、「垣間見える」や「垣間見せる」なども、日常的に広く使われており、意味も通じます。
「垣間見える」は見るつもりがないのに見えてしまったという感覚で使われていることが多いようです。「うかがえる」のような意味合いですね。
一般的な意見としても、文法的に正しくなくても理解できるので、使用に関しては許容範囲であると言われています。
それでも、聞く人によっては、誤った言葉を使っているという印象を持たれることもありますから、「垣間見る」「垣間見ることができる」という使い方をするのが、無難かも知れません。