「自明の理」とは?
「自明」(じめい)とは、証明をする必要がないほど、内容が明らかであることを意味する言葉です。「理」は、「道理」「法則」などの意味をもちます。
したがって、「自明の理」(じめいのり)とは、「証明や説明や解説をするまでもなく、それ自体で明らかな論理や道理」を意味する言い回しです。
「自明の理」の使い方
たとえば、教師に指導力や道徳心が必要とされることは、証明、学説、などを持ち出すまでもない当然ののことです。したがって、「教師に指導力や道徳心が必要なのは、自明の理だ」と言い表すことができます。
つまりは、一般的に「分かり切ったこと」「当然なこと」を、少々堅苦しく言い表したのが「自明の理」だともいえましょう。「自明」「理」という漢語的表現、言葉の響きからも大上段に構えたような感じを受けるので、日常会話ではあまり使われません。
「自明の理」がよく使われるのは、やはり新聞記事や論文のような、格式ばった論理的な文章においてです。「そんなの、当然じゃん!」と言っている若者たちも、社会人となれば「~は自明の理である」という文章を書くことになるかもしれません。
(A子)
ゴールデンウィークで遠方にドライブするなんて、渋滞するのは自明の理でしょ?今更、到着時間の遅れで文句言わないでよ。
(B男)
独裁的な社長にとって、自分の方針に反対を唱える部下がうとましいのは自明の理だよ。
(C子)
幼児の身体につねに痣や傷があったら、虐待されているのは自明の理なのに、なんで児童相談所はあの子を保護しなかったの?
「自明の理」の類語
「火を見るよりも明らか」
「火を見るよりも明らか」もしくは「火を見るより明らか」という言い回しは、疑いをはさむ余地なく、きわめて明白なことを意味します。
この言い回しは、中国最古の政治史・政教を記した「書経」に出てくる文章を由来とした故事成語です。燃え盛る火は、誰が見ても火であることは明らかだ、という分かりやすい例えですね。
【文例:冷夏ののちの秋に大型台風が立て続けに襲来すれば、農家が窮地に陥るのは火を見るより明らかだ】
「歴然」
「歴然」(れきぜん)とは、はっきりと間違えようもないさま、まぎれもなく明白なさまを表す言葉です。
【文例:先進国の子供たちの栄養状態が、発展途上国の子供たちよりも良いレベルにあることは、歴然とした事実だ】
「事理明白」
「事理明白」(じりめいはく)の「事理」は、「物事の道理」という意味をもち、「明白」は、「はっきりと明らか」であることを指します。
したがって、「事理明白」は、「物事の筋道・道理がきわめて明白ではっきりとしていること」を意味する四字熟語です。
【文例:山田君があの日、火事の現場に何度も足を運んでいたことは、隠しカメラの映像が証明している事理明白な事実なんだよ】
「分かり切った」
「分かり切った」という言い回しは、それこそ「分かり切っている」ほど頻繁に用いられる、「当たり前の」「明らかに分かっている」という意味を表す言い回しです。
単純に「当然の」という意味で用いるだけでなく、「分かり切った~」には、「分かって当然なのに」という、少々非難めいたニュアンスが含まれる場合もあります。
【文例①:佐々木課長の部長昇格は、分かり切った人事で課内に驚きはなかった】
【文例②:この場におよんで、そういう分かり切った意見を言うなよ】