「望郷の念」とは?
皆さんには「故郷」と呼べる場所がありますか?生まれ育った町であったり、愛する家族が暮らす場所であったりと、人によってさまざまでしょう。
「望郷の念」とは、その故郷をなつかしく思う気持ちのことをいいます。懐郷(かいきょう)、思郷(しきょう)とも言い換えることができます。
「望郷の念」:意味
望郷
「望郷」は「故郷を懐かしく思う」「故郷に思いを馳せる」という意味があります。「懐かしむ」わけですから、進学や就職などの理由により、現在は違う土地にいる状況であり、もうそこにはいないということです。
例えば、「毎日遊んだあの川はまだあるのかな。」「いたずらばかりして、隣の家のおじいさんによく怒られたなぁ。」など、思い出の場所や情景などを思い出して、ふとその場所に帰りたくなるような、そんな気持ちが「望郷」です。
念
「念」とは、「思い・気持ち・考え」のことや「かねてからの望み・希望」のことで、常に心の中にある思いを意味しています。
「感謝の念」「念が残る」など、感情的な意味を表します。「思い」などと比べると、より強い気持ちを表すことが多いようです。
他にも「念のため」「念には念を入れる」などに使われる「念」の意味としては、「気をつける」「注意をする」という意味も持ち合わせています。
「望郷の念」:使い方
「望郷の念」は、それ単独というよりは「~に駆られる」などの表現の中で用いられることが多い言葉です。いくつか使用例をご紹介します。
望郷の念に駆られる
- この土地の暮らしは気に入っているが、時々どうしようもなく望郷の念に駆られることがある。
「駆られる」には、ある激しい感情に動かされるという意味があり、「念に駆られる」とは、その思いに激しく動かされるということです。
故郷を懐かしむ気持ちや、帰りたいという気持ちが溢れ出して、胸を締め付けるような感情になることをいいます。
例えば「故郷から手紙が届く」「似た景色を見る」など、何かがきっかけで、ふっと湧き上がるような一過性の感情であるといえます。
望郷の念を募らせる
- 彼女は嫁ぎ先の夫の田舎に馴染めず、望郷の念を募らせていたようだ。
「募らせる」というのは「あることへの感情が次第に強くなっていくこと」を意味しています。つまり、「念を募らせる」とは、その気持ちがどんどん強くなるということです。
故郷へ帰りたいと思う気持ちが膨れ上がっている様子を表しており、「駆られる」などの一過性のものではなく、長い期間、心に秘めている思いのようなものです。
望郷の念を胸に抱く
- 戦地に赴いた兵士たちは、国のために戦いながらも、みな望郷の念を胸に抱いていた。
「抱く」は<いだく>と読み、ある考えや気持ちを心の中に持つという意味があります。この文では「胸」は「心」のことを指し、「望郷の念」を「心の中に秘めていた」ということです。
「望郷の念」:類語
「望郷の念」とは、小説や詩など文章に使われることが多く、情緒的な語であるといえます。日常会話などに使われることは少なく、「ホームシック」「ノスタルジア」などという言葉で表すことが多いようです。
ホームシック
「ホームシック」は、日本語では本来「懐郷病」と呼ばれているもので、自分の家族や故郷から遠く離れている者が、それらを異常なほど恋しがる病的状態のことをいいます。
現代では、病気というほど重い症状としてではなく「望郷の念」と同じ程度の感覚で使われることが多くなっています。
ノスタルジア
「ノスタルジア」は英語の「nostalgia」から来ており、「離れた故郷を懐かしむ気持ち」「過ぎ去った時代を懐かしむこと」を意味しています。
フランス語の「ノスタルジー」、形容詞の「ノスタルジック」とともにカタカナ語としても、よく使われています。
里心がつく
「里心」は<さとごころ>と読み、故郷を思い出して、自分の家や郷里へ帰りたいと思う心が生じることをいいます。
例えば、進学や就職を機に都会に出てきて落ち着いた頃、なんだか故郷が恋しくなってきた時に「里心がついた」と表すことができます。