「慙愧に堪えない」とは?意味や使い方をご紹介

「慙愧に堪えない」は「遺憾の意」と並んで政治家や著名人がよく使う表現です。実は「慙愧」には残念や悲しいという意味はありません。恥ずかしいという意味の仏教用語だったのです。今回は「慙愧に堪えない」の意味や由来、使い方などを紹介します。

目次

  1. 「慙愧に堪えない」の読み方
  2. 「慙愧に堪えない」の意味
  3. 「慙愧に堪えない」の使い方
  4. 「慙愧に堪えない」の由来
  5. 「慙愧に堪えない」の関連語

「慙愧に堪えない」の読み方

「慙愧に堪えない」は「ざんきにたえない」と読みます。まれですが、「ざんぎにたえない」と読むこともあります。

「慙愧に堪えない」の意味

「慙愧に堪えない」の意味は反省して恥ずかしく思うことです。過去に自分がとった行動や行い、それが見苦しいものであったと反省したり後悔したりすることをいいます。

恥ずかしくて恥ずかしくて顔を表に出せない気持ちを表す言葉ですから、ことわざの「穴があったら入りたい」と同じような意味で使われます。

「慙愧に堪えない」の使い方

「慙愧に堪えない」は役人や著名人が好む表現です。例えば、文科省職員が覚せい剤取締法違反で逮捕された時に柴山昌彦文科相が使いました。また、松岡農相が自殺した際には安倍内閣総理大臣が使用しています。

しかし、安倍総理の発言は不適切ではないかという意見もあります。自殺に追い込むようなことをしたのか、それとも自殺して逃げるような行動が恥ずかしいのかという批判です。もちろん、自殺を防げなかったことを恥じているとも解釈できます。

誤解されそうなタイミングでは、「恥じ入る」や「恥ずかしい」などに言い換える方が良いかもしれませんね。

使用例

  • 国民全体のためとはいえ、一部の人にだけ負担を強いるのは慙愧に堪えない思いです。
  • 若気の至りでは済まされない。彼女にしたことを思うと慙愧に堪えない。
  • 弊社社員がこのような騒動を起こしてしまい、慙愧に堪えません。

NG例

  1. スポーツマンシップを宣誓したばかりだというのに、相手チームは不正行為を繰り返した。こんなことは慙愧に堪えない。
  2. 何度もいやがらせを繰り返すなんて慙愧に堪えない。絶交してやる。
  3. 天災とはいえ、結婚を前に婚約者を失うとは慙愧に堪えない思いだ。

上記の例は全て誤用です。1の文では相手の不正行為が残念であると主張しているので、「遺憾に思う」の方が適切です。恥ずかしいと主張しているのであれば、同じスポーツマンとして、と付け加えましょう。

2の文は怒りを表しているので、「堪忍袋の緒が切れた」や「怒髪、冠を衝く」を使いましょう。3は悲しんでいるので、「胸が裂ける」や「断腸の思い」が望ましいでしょう。

「慙愧に堪えない」の由来

「慙愧に堪えない」の由来は仏教にあります。浄土真宗の開祖、親鸞(しんらん)が著した『教行信証』に書かれています。

それによると、「慙」とは自分の行動を恥じることです。特に、仏教の戒めや教えを破ったことを自分の中で恥じ入ることです。一方、「愧」は他者に対して恥じることです。人と関わるうえで守るべきもの、つまりマナーや法を破ったこと恥じているという意味です。

両者を合わせた「慙愧」は、自分にも他人にも恥じ入るという意味になりますね。

「慙愧に堪えない」の関連語

忸怩

「忸怩(じくじ)」とは深く恥じ入ることです。迷惑をかけたことを反省する時や、謝罪する時に使われます。後悔が残っているというよりはむしろ恥ずかしい、反省しているという意味の強い言葉です。

記者会見や始末書などで使われることも多く、フォーマルな表現です。「忸怩たるものがある」や「忸怩たる思い」といった形で使われます。

遺憾

「遺憾(いかん)」は思い通りにならなくて残念であるという意味です。現代では謝罪や非難の意味で使われています。しかし、元々はそういった意味を持たず、後悔や残念を表しているだけでした。

政治家が多用する「遺憾の意」や「遺憾に思う」は謝罪や非難のどちらでも使われています。直接「謝罪します」や「不満だ」と言わずに、婉曲的に伝えているわけです。

打ち消しを伴う「遺憾なく」は残念なところがなく充分に、という意味です。申し分ない、満足のいく状態を表します。

痛恨

「痛恨」は残念で心残りがあることです。痛いほどに残念であるという意味です。ここに出てくる「恨」は復讐や逆襲につながるような怨恨ではありません。「せっかくのデートなのに振り出した雨を恨みに思う」など不満や残念という意味です。

非常に心残りで未練があることを「痛恨の極み」、残念でならないことを「痛恨に堪えない」と表現します。なお、「痛恨の一撃」はスクウェア・エニックスのゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズに由来する表現です。大きなダメージを受けた、という意味で使われています。

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