「手を打つ」の意味と使い方
「手を打つ」には三つの意味がありますので、意味とそれぞれの使い方を見ていきましょう。
「手を打つ」の意味と使い方その1
【意味】両手を打ち合わせて音を出すこと
【例文】
- 決勝の舞台でのスーパーショットの応酬に、観客は手を打って大喜びした。
「打つ」という動詞には「何かを勢いよく他の物に当てる」という意味があります。つまり、「両手を打ち合わせて音を出す」というのは、慣用表現ではなく単純に「手を打つ」という行動そのものを表しています。感情が高ぶったとき、合点がいったときなどに見られる行動ですね。
「手を打つ」の意味と使い方その2
【意味】話し合いや交渉などにおいて合意すること
【例文】
- オプションを追加していただけるなら、今回は十万円で手を打ちましょう。
- 裁判にはしたくないから、示談金百万円で手を打つことにしました。
ビジネスなどにおいて交渉や取引が妥結する際などに用いられます。契約や商談などが成立した際に、関係者一同がしゃんしゃんと手を打ち鳴らすことから、慣用的にこうした意味で使われています。
「手を打つ」の意味と使い方その3
【意味】前もって必要な処置をしておく
【例文】
- 倒産だけは何としても避けたい。何とか早く手を打たなければ。
- 相手チームは逆転勝ちを狙って、何らかの手を打って来るだろう。
この意味における「手」は、「方法」「手段」「やり方」を意味します。起こり得る事態を予測し、事前に必要と思われる様々な手段を講じておく、ということです。
「先手を打つ」とは
「手を打つ」に似た形の表現として「先手を打つ」という表現もあります。「先手を打つ」は「他より先にしかけて、相手の気勢をくじいたり有利な立場に立ったりする」という意味です。「監事が難癖をつけてくるのはわかっていたから、先手を打って綿密な打ち合わせをしておいた」などと使います。
「先手」というのは元々、囲碁や将棋で相手より先に着手したり、先にいい所にさしたりすることを言います。「先手を打って投了に追い込んだ」のように用います。
「柏手を打つ」とは
「柏手を打つ」は「かしわでをうつ」と読みます。「柏手を打つ」とは、神社などで神を拝むときや神棚などを拝むときに、パンパンと開いた両手を鳴らすことです。「両親の真似をして、幼い子どもたちが柏手を打っている様子は本当にかわいらしかった」などと使います。
「〇〇を打つ」の慣用句
「手を打つ」の他にも、「打つ」が含まれる慣用句がありますので、いくつかご紹介します。
「膝を打つ」
「膝を打つ」は、急に何かを思いついたときやひどく感心したときなどに思わず座っている膝の辺りを手のひらでたたく様子を言います。「テレビを観ていたら突然いいアイデアが頭に浮かび、思わず膝を打った」などと使います。
「水を打つ」
「水を打つ」は、「水を打ったよう」という形で使われます。その場にいる人がいっせいに静まり返る様子を例えた表現です。「オリンピックメダリストの渾身の演技に、一瞬会場が水を打ったように静かになった」などと使います。
「ピリオドを打つ」
「ピリオドを打つ」は、「終止符を打つ」とも言い換えられます。それまで続いてきた物事を終わりにする、という意味です。「ピリオド」とは、英語文などの一番最後につける「.」のことです。「長年の選手生活にピリオドを打つ決意を固めた」のように、それまで結論を出さずにいたことにけじめをつける、という気持ちが込められた表現です。
「胸を打つ」
「胸を打つ」とは、何かを見聞きした人を感動させる、という意味です。「小さな犬が体を張って必死に飼い主を熊から守ろうとする姿に多くの人々が胸を打たれた」などと使います。類似表現には「心を打つ」があります。
「打つ」と「撃つ」と「討つ」
「手をうつ」という慣用表現では、「打つ」という漢字が用いられます。同じ「うつ」という動詞でも、「撃つ」「討つ」という漢字もありますが、意味が違います。
「撃つ」は、目標に向けて弾丸を発射する、「討つ」は、敵を攻めてやっつける、という意味です。「手を討つ」と書くのは誤りですので気をつけてくださいね。