「見栄を張る」とは
「見栄を張る」とは、「他人を意識してことさらに外観を飾ること」という意味の言葉です。
もともと、「見栄」には「他人の目を気にして、うわべを飾ったり体裁(ていさい)を取りつくろったりすること」という意味があります。
「見栄っ張り」と、名詞として使う場合もあります。また、あまり耳慣れないかもしれませんが、「見栄坊(みえぼう)」とも表します。どちらも、意味は「見栄を張る」と同じです。
さらに、「見栄も外聞(がいぶん)もない」という言葉があります。これは、「人目や世間体を気にする余裕もない」さまを表すものです。「彼女は、見栄も外聞もなく泣きわめいていた」などが使用例です。髪を振り乱し、声をあげて涙を流す光景が浮かぶようです。
「見栄を張る」の例文と使い方
- 私の彼氏は、いつも見栄を張って食事を奢ろうとする。
- 見栄を張って「料理は得意です」と言ってしまったが、本当は台所に立ったこともない。
- 彼女は会うたびにブランド物のバッグや靴を自慢してくるが、ただの見栄っ張りだと思う。
このように、本当の自分を隠して「とにかく良く思われたい」と、嘘を吐いたり必要以上に着飾ったりしていることがわかります。本人としては、他人に好かれる手段として見栄を張るのかもしれません。
「見栄を張る」心理の根底には、自信のなさがあるのかもしれません。「自分はこれでいい」と揺るぎない自信があれば、他人の目を気にしすぎることもないでしょう。
「見栄を張る」の類語
「見栄を張る」と似たような言葉は多くあります。その中でも普段あまり目にしないような、珍しい言葉をご紹介します。
- こけおどし:「外見だけおおげさで内容の伴わないこと」という意味です。「こけおどしの宣伝文句だ」などと使います。また、「浅はかな見えすいた手段・方法による脅し」のこともいいます。
- 糊塗(こと):「一時を逃れるために、うわべを取りつくろっておくこと」という意味です。「糊」は「ねばり・米などを煮て作ったねばりけのあるもの・貧しい暮らし」、また、「塗」は「ぬりかざる・ぬり消す・汚す」という意味があります。
「見栄を張る」と「見得を切る」
「見栄を張る」と似た響きの言葉で、「見得を切る」というものがあります。漢字だけでなく、意味合いも違います。
まず、「見得(みえ)」とは「歌舞伎で劇が最高潮に達したとき、役者が一時その動きを止め、印象的な動作や表情をする演技」のことです。ポーズを決め首を回したり、寄り目をする役者さんを、皆さんもテレビなどでご覧になったことがあるのではないでしょうか。
「見得を切る」とは、前述した「役者が見得のしぐさをすること」という意味です。また、「ことさら自分を誇示する態度を取る」ことも表します。例文としては、「私なら絶対に社長になれる、と見得を切る」などがあります。
「見得を切る」は思い切りのいい言動を表しますが、「見栄を張る」は他人の評価を気にして背伸びをする場面で使います。どちらかといえば、前者はポジティブ、後者はネガティブな印象があります。
「見栄を張る」という映画
「見栄を張る」という題名の映画をご存じでしょうか。2018年3月に公開された、藤原明世さん監督の作品です。主演は久保陽香さんが務めています。葬儀の際に、参列者の涙を誘うため、泣く演技をする「泣き屋」という職業が描かれています。
主人公は、故郷を離れ女優を目指していますが、なかなか芽が出ないまま28歳を迎えました。そんな折、彼女の姉の突然の訃報が届きます。姉は「泣き屋」を生業(なりわい)にしていました。主人公は、姉の跡を継ごうと奮闘します。
「見栄」という世間体や体裁が描かれた物語です。「見栄」は、張り過ぎると自分が疲れてしまうかもしれません。とくに優れたところがなかったとしても、そのままの自分を見つめ認めてあげると、心が楽になるかもしれませんね。