「癪に障る」と「癇に障る」の違い
意味の違い
「癪に障る(しゃくにさわる)」と「癇に障る(かんにさわる)」は、同じように腹を立てている様子を表す言葉ですが、以下のように微妙にニュアンスの違いがあります。
- 癪に障る…腹を立てている様子
- 癇に障る…何か気に入らないことがあって腹を立てている様子
現在ではほとんど同じように使われている言葉ですが、使うときにはどちらの言葉が適しているのかよく考えて使うと良いでしょう。
「癇」は「触る」こともできる
「癪に障る」の「癪」は、腹痛を起こしている「状態」を指しているため、触ることはできません。そのため、「癪に触る」という表現は使うことができません。
一方、「癇に障る」は、過敏に反応する神経に触ってしまって(神経を刺激してしまって)いらいらしていることを表しているため、「癇に触る」と表現することもできます。
以下、「癪に障る」と「癇に障る」、それぞれの意味や使い方、語源などを深めていきます。
「癪に障る」とは?
「癪に障る(しゃくにさわる)」とは、不愉快で腹を立てている様子を表す言葉です。
「癪に障る」使い方
- 何が悪いっていうわけではないんだけど、彼女の話し方はなんだかいちいち癪に障るよね。
- 残業続きでやっと仕上げた仕事だったのに、上司の一声でひっくり返されてやり直しになってしまうなんて、癪に障って仕方がない。
- 反抗期の息子にとって、母親の言葉は何かと癪に障るもののようだ。
「癪」とは?
「癪」は、胸部や腹部が突然けいれんを起こして激しい痛みを伴っている状態、さしこみのことを言います。時代劇で、若い女性が「持病の癪が…」と言って倒れこむ場面を見たことがある人も多いのではないでしょうか。
何かに腹を立てていると、胸部や腹部に痛みがあるように感じることがあります。その痛みを「癪」として、「癪に障る」が不愉快で腹を立てている様子を表すようになったと言われています。
「障る」とは?
「障る」は、差し支える、妨げになる、という意味です。次のような言葉にも使われています。
- 体に障る(からだにさわる):健康を害する原因をもたらすこと。健康に悪い影響を与えること。
- 気に障る(きにさわる):他の人の行いが不愉快だと思うこと。いやな気持ちになること。
- 目に障る(めにさわる):目に良い影響を与えないこと。転じて、見ていてよい気持ちがしない、不愉快になること。
「癇に障る」とは?
「癇に障る(かんにさわる)」とは、自分の思うようにならなかったり、気に入らないと感じ、いらついたり怒ったりする様子を表す言葉です。
「癇に障る」使い方
- ごめんなさいって謝られても、本心から出た言葉じゃないのがわかる言い方だから、かえって癇に障るんだよね。
- 隣に引っ越してきた家の奥さんは、旦那さんの社会的地位が高いのを自慢してこちらを見下している様子で、言葉の端々にそれを感じて癇に障る。
- 何が癇に障ったのか知らないが、関係のない人にまで不機嫌な気持ちをぶつけるのはやめてくれないか。
「癇」とは?
「癇に障る」の「癇」には、次のような意味があります。
- ひきつけなどの原因になる病気のこと。
- ちょっとしたことにでも過敏に反応してしまい、いらついてしまう性格や気持ち、神経のこと。「癇が強い」、「癇性(かんしょう)」などの言葉で使われる。「疳(かん)」とも書かれる。
「癇に障る」の「癇」は、2.の意味で使われています。そのため「癇に障る」は、「癇に触る(さわる)」、「疳(かん)に障る」と書かれることもあります。また、「癇に触れる(ふれる)」も同じ意味の言葉です。
「癇癪」とは?
「癇癪(かんしゃく)」という言葉があります。ささいなことで怒り出し、感情を抑えることができない様子を表し、「癇」と「癪」、双方の字が使われています。
癇癪は、赤ちゃんや子どもが気持ちのコントロールができなくなったときに起こしやすいと言われています。身体的な能力や言葉で表現する能力が自分の欲求に追い付いていないため、泣きわめいたり暴れたりする行動に出てしまうのです。
大人でも癇癪を起こすことがあります。大人の場合には病気による癇癪の可能性もあるため、必要に応じてカウンセリングなどの適切な治療を受けると改善することがあります。