「やりがい」とは?
「やりがい」とは、「何かをするだけの価値」という意味の言葉です。
漢字では「遣り甲斐」と書き、「勉強を遣(や)る」などに見られるように「自ら物事を行う」という意味の「遣る」と、「ある行動をしてみるだけの価値、行動の結果・効果」という意味での「甲斐」が合成された言葉です。
「やりがい」の使い方
「やりがい」は、「やりがいがある」「仕事のやりがい」といった形で、何らかの物事を実行するだけの価値を差して使います。
何を「やりがい」と呼ぶかは個人によって異なりますが、慣習的には、他のもの(金銭的報酬など)では代えられないような「大切な価値」「最優先すべき動機付け」というニュアンスを持つことがしばしばです。
例えば、望みもしない業種に就職し、自分の適性を生かせずに働いているとしたら、どれほど報酬が充実していても、それは「やりがいのある仕事」とは言えないかもしれません。もちろん、人によっては報酬の多寡が重要なやりがいとなる場合もありえます。
「負」のイメージもある
「やりがい」は、簡単に言えば「(個人の)行動」によって発生する「無形の価値」です。無形ゆえに、その言葉だけが独り歩きして、「しかるべき対価がないまま、個人の行動の価値を先行規定する甘言・空言」という負のイメージもあります。
例えば、社会には「きつい仕事でこそ成長できる」「報酬は少ないが君の将来のためになる」といった「やりがい」を刺激する文句で、労働者を酷使・搾取する「ブラック企業」と呼ばれるような悪徳企業も存在すると言われています。
行動の動機を支え、人生を豊かにするための価値は「やりがい」だけではないことを念頭に、無形の価値・概念に振り回されないようにご注意ください。
例文
- 今の仕事にやりがいを感じられなくなった彼は、「人を助ける仕事をしたい」という気持ちで医療業界へ転職した。
- プログラム言語を書く仕事は、入力したぶんの結果がすぐに表れるのでとてもやりがいがある。
- デザイナーとしてやりがいが感じられる瞬間は、何といっても満足できる仕事ができ、顧客にも認められた時だ。
- 興味のない仕事でも、後からやりがいがついてくることもある。まずは始めてみることが大事だ。
「やりがい」の類語
する価値
「やりがい」は、そのまま「(それを)する価値」と言い換えることができます。「続ける価値」「挑戦する価値」「勝負する価値」のように、他の動詞を前に置くのも良いでしょう。
【例文】:新しいスキルを覚えられるという点だけでも、今の仕事を続ける価値がある。
手応え・歯応え
「手応え」(てごたえ)や「歯応え」(はごたえ)といった言葉は、物事を行った際の「手もとに受ける感じ」や「反応」を意味する言葉です。
物事から十分な反応を得られることは「やりがい」と言えるでしょう。「やりごたえ(がある)」という言葉もあります。
【例文】:こんなに手応え(歯応え)のある試合は久しぶりだ。
有意義
「有意義」(ゆういぎ)とは、「意義(意味)のあること」「価値のあること」という意味の言葉です。例えば「有意義な仕事」は、「やりがいのある仕事」ともいえるでしょう。
ただ、「価値のある/なし」についてではなく単純に「意味のある/なし」について用いられることがある点と、行動を伴うとは限らない点にご注意ください。
【例文】:ただ寝て過ごすのに比べれば、忙しかったが有意義な休日となった。
「やりがい」の「がい(かい)」とは?
「遣り甲斐」の「甲斐」は、もともとは「交ふ(かう)」という言葉で、「何かを交換する・取り替える」という意味であったと考えられています。
何かを何かと交換するということは、「交換するだけの価値を見出す」と解釈できますから、行動によって価値ある結果と交換するという「遣りがい」の意味もうなずけますね。
この「かい」を「甲斐」と表記するのは当て字とされています。「甲斐」は、現在の山梨県あたりの古い地名であり、人名にも使われていますが、なぜこの字が当てられたかについては詳しくわかっていません。