「背筋が伸びる」とは?
「背筋が伸びる」という言葉は、精神的な意味で使う場合は、「せすじがのびる」、運動などの身体的な意味で用いる場合は、「はいきんがのびる」と読みます。身体的な意味で「せすじがのびる」と読む場合もありますが、かなり珍しいケースです。
同じ漢字で表記されますが、「せすじ」と「はいきん」は表す部分が異なります。「背筋(せすじ)」とは、背骨とその両外側の部分、背中の中心線。「背筋(はいきん)」は、端的には背中の筋肉の総称です。
「背筋(せすじ)が伸びる」の意味
身体的な意味で、「背筋(せすじ)が伸びる」という言い回しを用いると、背中の中心線がまっすぐに伸びることを意味します。「背筋が伸びる運動」「背筋が伸びる椅子」などの使い方以外は、「背筋を伸ばそう」「背筋が伸びた」などの言い回しが自然です。
「背筋(せすじ)が伸びる」という言葉は、ほとんどの場合精神的な意味合いで使われます。以下のような意味を持つと解釈するのが妥当です。
- 緊張などから、ぴしっと姿勢を正すような気持ちになること。
- なんらかの新たな体験や、取り組むべき課題などを前に、気合を入れ、頑張ろうと心身をシャンと整えること。
「背筋が伸びる」の使い方
身体的な「背筋が伸びる」は、上述したように、運動などによる動作の結果や、なんらかの影響を受けて実際に背筋が伸びる場合にかぎり使われます。
精神的な「背筋が伸びる」の使い方のポイントは、この言い回しの前に、背筋が伸びるようなシチュエーションを必ず紹介すること。なんの説明もなく、「私は背筋が伸びる思いだ」などと言い出したら、まわりは驚いてしまいますね。
例えば、入学式で校長先生の祝辞を聞いて、卒業式で卒業証書を授与されて、初めての仕事をまかされ、など、日常とはちょっと離れて、あらたな挑戦の場などに臨む際によく使われる言いまわしです。
「背筋が伸びる」の文例
「背筋が伸びる」の具体的な使用例を挙げてみましょう。最初の一例のみ、身体的な「背筋が伸びる」の文例です。
- パソコンワークが多くて背中が凝るので、背筋が伸びるという特別な椅子に買い替えた。
- 入社式で社長の訓示を聞きながら、思わず背筋が伸びる思いがした。
- 初出勤で自社ビルの前に立ったとき、これから頑張るぞと背筋が伸びた。
「背筋が伸びる」と似た表現
「身が引き締まる」の意味
「身が引き締まる」は、身体の動きを用いて精神的な意味を表している点においても、「背筋が伸びる」と大変よく似通った表現です。
「身体が引き締まる」と言い換えれば、実際の身体的な変化を表現する言葉となりますが、「身が引き締まる」という言い回しには、精神的な意味合いしかありません。
「身が引き締まる」は、刺激を受けたり、感化されるようなときに、前向きな思いで気合がはいる、などの意味を表します。
「背筋が伸びる」と同じく、気持ちがしゃきっとすると、自ずから姿勢もぴしっとするものです。そうなれば、背を丸めてはおれず、背筋は伸び、背筋が伸びれば身体のラインも締まります。心と身体は連動している部分が多いのです。
「身が引き締まる」の文例
- 第一希望だった大学での初講義で、教授が教室に入ってきたときは身が引き締まる思いだった。
- 会社のビッグプロジェクトの責任者に任命され、身が引き締まる思いで最初の会議に臨んだ。
「気合が入る」の意味と使い方
「気合が入る」(きあいがはいる)の「気合」には、いくつかの意味がありますが、この場合は、精神を統一してなにかに向かう際の気持ちの勢いを意味します。
したがって、「気合が入る」とは、集中して物事にあたる際に、意気込む思いが湧きおこるさまを表す言葉です。「気合を入れる」という言い回しもありますが、「気合が入る」よりも、意識的な感情コントロールのニュアンスを持ちます。
「背筋が伸びる」は、シャンとした気持ちになる、という意味合いですので、やはり意気込みが湧いてくるという意味で、「気合が入る」が類語表現としてより適切です。
【文例】新入社員研修をおえ、ようやくの初仕事を前にして、気合が入った。