「危ぶまれる」とは?
「危ぶまれる」(あやぶまれる)は、「危ぶむ」という動詞の未然形「危ぶま」に、助動詞「れる」を接続する形で構成された言い回しです。助動詞「れる」は、受身、尊敬、自発、可能の4つの働きを持ちますが、「危ぶまれる」においては、受身または自発の助動詞として機能しています。
「危ぶまれる」は「危ぶむ」ありきの言葉です。まずは、この動詞「危ぶむ」をしっかり理解することによって、より深く意味を理解することができます。
「危ぶむ」の意味
マ行五段活用の動詞「危ぶむ」は、大きく分けて以下の3つの意味を持ちます。
- 物事が、よくない結果になるのではないかと心配し、不安に思うこと。危ないと思うこと。
- 望んでいること、望ましい状況が実現しないのではないかと思うこと
- 危うい状態にする。苦しめる。
現代では、3の意味で「危ぶむ」を使うことはほぼありません。「危ぶまれる」として用いられているのは、1と2の意味においてです。
したがって、「危ぶまれる」は、物事や状況が悪い方向や結果になるのではと思われること。もしくは、望んでいる状況が実現しがたいと思われること、という意味になります。
「思われる」は「推察される」という自発の意味で用いていますが、単純に、動詞「危ぶむ」の受身形として、他者から「~と思われてしまう」という意味で使われる場合もあります。前後の文脈からの区別が必要です。
「危ぶまれる」の使い方
「危ぶまれる」の使い方で注意すべき点の1つとして、助動詞「れる」の用法について、読み手や聞き手が混同してしまう危険性が挙げられます。
「よくない結果になることが(自然と)予想される」(自発)なのか、「よくない結果になるのでは、と(他者、世の中の人)に思われる」(受身)なのかは、かなり区別が難しい問題です。
「危ぶまれる」の文例
- 来週、長野の野外会場で予定されているロックフェスティバルは、当日に台風が直撃する可能性が高く、その開催が危ぶまれている。
- 私の街では、タピオカブームでタピオカ店が10店も乱立し、3店ほどは存続が危ぶまれる状況だ。
- 鈴木君は、受験の山場という高三の夏休みにゲーム三昧だ。彼の志望校合格は危ぶまれるな。
- 全身黒づくめに黒マスクでコンビニに入ったら、店員に強盗かと危ぶまれてしまった。(単純な受身)
「危ぶまれる」の類語
「案じられる」の意味と使い方
「案じられる」は、動詞「案じる」の未然形と、助動詞られる(受身、尊敬、自発、可能)で構成される言い回しです。
「案じる」の意味は、心にかけて心配する、あれこれと気にかけ思い悩む、という意味です。この動詞を語幹とする「案じられる」は、おもに「気にかけられ、心配される」という意味で用いられます。思い悩む、という意味で用いられることはありません。
文例:ほとんど英語もしゃべれずにアメリカ暮らしを始めた由美さんは、友人たちから将来を案じられている。
「危惧される」の意味と使い方
「危惧される」は(きぐされる)と読みます。動詞「危惧する」の未然形「危惧さ」と、助動詞れる(受身、尊敬、自発、可能)で構成される言い回しです。
「危惧する」は、うまくいかないのではないかと危ぶみ恐れることを意味します。したがって「危惧される」は、うまくいかないのではないかと(おのずと)危ぶみおそれること、もしくは、そのように他人から危ぶまれ心配されることを意味します。
文例①:婚約者の彼女の乱暴な言葉遣いが今から気になるのでは、結婚がうまくいくか危惧されるなあ。
文例②:創業者の息子が社長を継いでから、赤字続き。これでは会社の先行きが危惧される。