「エールを送る」とは?
「エールを送る」は、基本的には大きな声をあげて声援を送る、という意味の言い回しです。
ただし、必ずしも実際に声をあげることがこの言葉の定義ではありません。心のなかでひっそりと声援を送る場合にも使うことができる言葉です。
「エール」は英語の「yell」
「エールを送る」の「エール」は、「yell」という英語の動詞(名詞もあり)に由来します。詳しくは後述しますが、その基本的な意味は「大声をあげる」というもので、「yell」単体で「エールを送る、声援を送る」という意味とはなりません。
発音もカタカナ語の「エール」とはかなり異なりますので、アメリカ人に「エール」と発音しても「yell」のことだとはわかってもらえないでしょう。したがって、「エール」はほぼ和製英語と言ってもいいカタカナ語です。
「エールを送る」の使い方
「エールを送る」を使う場面は、下に紹介するように実にさまざまです。文章で書き表すさいの注意点は、「送る」を「贈る」と誤らないことです。
「贈る」は、「贈り物」でも使われるように、なにかを実際に与える時の言葉です。応援の気持ちや祈りをギフトのように「贈る」という感情と解釈すれば使えないこともありません。しかし、それは詩や文芸での表現として、一般的には「送る」を用いましょう。
さまざまな場面での「エールを送る」
もっとも本来の意味に近い「エールを送る」場面といえば、スポーツの試合での応援団やチアリーダーたちの応援のかたちです。
訓練を重ねた大声をあわせて声援を送る「エール」は迫力があり、選手ならずとも競技場全体のテンションもあげてくれます。「エールの交換」として、応援団が対戦チームのために激励のエールを交わし合うこともあります。
また「エールを送る」は、スポーツ以外でも、日常のあらゆる場面で、頑張る人、励ましたい人などに送る声援として用いることができます。この場合は、実際に大声で叫ぶわけではありません。「頑張れよ、みんなでエールを送るよ」などと、応援の気持ちを表明します。
さらに、まったく声を出さない「エールを送る」もあり得ます。心のなかでそっと思いの(声援)を送る、祈りにも近いものです。
「エールを送る」の文例
- 甲子園の高校野球試合では、実際の試合とともに、両チームの応援団やチアリーダーがエールを送る風景も見逃せない。
- 我が社初めてのアメリカ支店の支店長として赴任する鈴木君に、役員一同は口々にエールを送って励ました。
- リレーのアンカーとして走りだした息子をみつめ、母親は心のなかでエールを送っていた。
「エールを送る」の類語
「声援を送る」
「声援を送る」とは、声を出して応援することを意味します。「エールを送る」を日本語で表したかたちですが、「声援」という日本語による具体的な印象が強いため、実際に声を出しての場面で使われることがほとんどです。
「心のなかでエールを送る」と同じように使いたい場合は、「心のなかで声援を送る」ではなく、「心のなかで勝利を祈る」「心のなかで応援する」などと表すほうが一般的です。
【文例】
- 正月に行われる選抜大学による箱根駅伝では、沿道でたくさんの人々が旗をふり、選手たちに声援を送る姿も風物詩のひとつだ。
英語の「エールを送る」
「yell」の意味
カタカナ語「エール」の由来、英語の「yell」にも触れておきましょう。「yell」の意味は、以下の通りです。
【動詞として】
- 叫ぶ、大声をあげる。
- エールを送る。
【名詞として】
- 叫び声。
- スポーツ選手への応援の叫び声。
英語の「yell」に「エールを送る」という意味がもともとありますが、それ単体では「叫ぶ」が主な意味となってしまいます。
「エールを送る」の英語表現
「~にエールを送る」という意味での「yell」の使い方は、「~yell for」として表現します。まれに「~yell at」と表現する場合もありますが、こちらの場合はたいていは「怒鳴りつける」という意味になるので、慎重に使いましょう。
【文例】
- He yelled for his team at his local baseball field.(訳文:彼は地元の野球場で、ホームチームにエールを送った)