「身をやつす」とは?意味や使い方をご紹介

「身をやつす」とはどのような意味でしょうか。「身」は体に関係することとは分かっても、「やつす」という動詞が何を表すのかと難しく感じるかもしれませんね。「やつす」ともともとの語句「憂き身をやつす」を踏まえて「身をやつす」の意味や使い方について紹介します。

目次

  1. 「身をやつす」の意味
  2. 「身をやつす」の詳しい意味と使い方
  3. 「憂き身をやつす」とは
  4. 「憂き身をやつす」の詳しい意味と使い方

「身をやつす」の意味

「身をやつす」の「身」とは姿かたちのことです。「やつす」は漢字で「窶す」と表記し、「目立たないように格好を変える」「人よりも見劣りするようなみすぼらしい格好をする」「やせ細る」「姿が変わるくらい夢中になる」などの意味を持っています。

「身をやつす」の大きな意味は、「姿かたちが変わる」ことであるといえます。ニュアンスの違った使い方がありますので、大きく三つに分けて説明していきます。

「身をやつす」の詳しい意味と使い方

①みすぼらしい姿に身なりを変える

「身をやつす」の一つ目の意味は、普段の格好から変えて、みすぼらしく見えるような身なりになることです。普段立派な格好をしている人が、あえて目立たないような地味で質素な格好をするというニュアンスが含まれています。

単に落ちぶれたり、貧しい境遇に転落したりするわけではありません。何事か目的があって貧しい身なりになっていたり、目立たない格好をしていたりする印象です。

【例文】

  • 旅に出る時の水戸光圀公(みとみつくにこう)は「越後のちりめん問屋の隠居」に身をやつしている。
  • 敵を欺くために、町人に身をやつして仇討ちをする。

②物事に熱中する

「身をやつす」には、物事や人物に熱中する夢中になるという意味もあります。体つきが細くなったり、痩せて容貌が変化したりするのにも本人が気づかないくらい、何かに熱中していることを表しています。

この「身をやつす」からは、一心不乱に対象になっている物事にのめり込み、力を注ぎ込んでいる様子がうかがえます。熱中する対象は、良いこと悪いことどちらの場合もあります。

【例文】

  • 芸事の稽古に身をやつす。
  • 賭け事に身をやつして、普通の生活に戻れなくなっている。

③思い悩む

物事に熱中する意味から転じて、あることに対して思い悩むという意味合いで用いられることもあります。体が痩せてしまうくらい深い悩みを抱えていることを表しています。そして、その悩みはたいてい恋愛問題です。

この場合は、思い悩むというだけでなく、恋をして痩せて体や顔つきが変わるくらい相手に夢中になるという、②の意味でも使うこともあります。

【例文】

  • 友人は、浮気者の彼への気持ちを諦めきれずに身をやつしている。
  • 彼は、学校で一番人気のある高嶺の花の女性に恋焦がれて身をやつしている。

「憂き身をやつす」とは

「身をやつす」は「憂き身をやつす」という語句の一部から取られています。古語では「やせ細って外見に辛さが見えるくらいに苦労をしている」ことを表しました。「憂き身」とは辛いことの多い境遇を指します。

現代では「苦労している」という意味合いよりも、「熱中する」などの派生した意味で使われることが多いです。「身をやつす」の①みすぼらしい格好をする、③思い悩むといった意味では使われません。

「憂き身をやつす」の二つの意味について見ていきましょう。

「憂き身をやつす」の詳しい意味と使い方

①熱中する

「身をやつす」の「物事に熱中する」と同様です。身体がやせて細くなるほどに、ある物事に熱中することを表します。

【例文】

  • 今の大学生は早い時期から就職活動に憂き身をやつしていて、学問どころではなさそうだ。
  • 報われない恋に憂き身をやつすなんて、生産的じゃないと思う。

②のめり込む

「のめり込む」は「熱中する」と似ていますね。しかし、こちらの意味においては、浮ついた身の上ということで「浮き身」と表記されることもあります。

世間一般から見てあまり価値があるようには感じられない、役に立たないような無駄なことにのめり込んでいるというニュアンスで使われることが多いようです。

【例文】

  • 朝から晩まで仕事をせずに、オンラインゲームに憂き身をやつす。
  • SNSで炎上して注目を浴びることに浮き身をやつしている。

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