「途方に暮れる」とは?
「途方に暮れる」は、(とほうにくれる)と読みます。ある出来事、事態への対処方法、手段が尽きて、どうしてよいかわからなくなることを意味する言葉です。
この言い回しの意味をより深く理解するために、「途方」と「暮れる」それぞれの意味を確認してみましょう。
「途方」「暮れる」の意味
「途方」という言葉は、もともと次に挙げる3つの意味を持つ言葉でした。
- 手立て、方法、手段。
- 多方向、向かう方向。
- 道理や筋道。
現代日本語では、ほとんどの場合に①の意味で用いられています。「途方に暮れる」の「途方」もこの意味での用法です。
「暮れる」という言葉は多くの意味を持ちます。「途方に暮れる」での意味は、(自分が直面している状況に対して)「どうしてよいかわからず、思い惑うこと」、「道筋、見通しを立てることができずに困惑すること」です。
「暮れる」という言葉が、「途方に暮れる」と同様の意味で使われている例としては、「思案に暮れる」などがあります。
「途方に暮れる」の使い方
「途方に暮れる」は、ある問題への対処法が尽きて困惑している状態を表す言葉ですが、使用者がおかれている状況は、「絶望する」というほど切羽詰まったものではないことが多いです。
つまり、「どうしていいかわからない」とはいえ、まだ「困惑している」段階であることが使い方のポイントとなります。
たとえば、会社から突然にリストラされてしまったら、多くの人は「途方に暮れる」ことでしょう。当面次の仕事が決まらず、どうしていいかわからなくなるかも知れませんが、打てる手はまだあります。
しかし、もし、家が火事になり、逃げ場を失いそうなときは、「途方に暮れ」ている場合ではありません。絶体絶命の状況を表すときに、「途方に暮れる」は適切とは言えない言葉です。
「途方に暮れる」の文例
(A男)
昔、山の中腹にある温泉を目指して山道を歩くうち、迷ってしまったことがある。夕暮れは迫るし、あの時は本当に途方に暮れたよ。
(B子)
芝居がやりたくて上京して劇団員になったの。でも、生活のために働くことに追われ、肝心の芝居の勉強ができず、途方に暮れているわ。
(C男)
財布をすられてしまった!現金、クレジットカード、キャッシュカード、保険証、運転免許証…なにもかも失って、途方に暮れるばかりだよ。
「途方に暮れる」の類語
「五里霧中」の意味と使い方
「五里霧中」の由来は、中国後漢の張楷という人物が、得意な術で五里にわたって霧を巻き起こすことができたという故事です。
ここから、「五里霧中」は、深い霧にとりまかれたように、物事の状態、状況を見定めることができず、どう対処してよいかまったくわからない、という意味をもつようになりました。
【文例】パリに出張したが、約束の場所、時間に通訳が来なかった。フランス語がまったくわからない僕は、どうすることもできず、まさに五里霧中だった。
「八方塞がり」の意味と使い方
「八方塞がり」は、(はっぽうふさがり)と読みます。もともとの意味は陰陽道で、東西南北、北東、東南、南西、西北の八方、どの方向にも障りがあって進めない、という状態を指す言葉です。
転じて、「八方塞がり」は、とるべき手段、方法がなく事態の解決もできず、活路も見いだせない状態のことを指す言葉になりました。
「八方塞がり」という言葉は、厳密にいえば「とるべき手段がなにもない」という状況を表すのみで、「どうしていいかわからない」という気持ちまでは表現していません。
したがって、「これでは八方塞がりだ、と鈴木君は途方に暮れた」と書いても、重複表現にはなりません。
【文例】起業を目指してクラウドファンディングに挑戦したが、目標額に及ばず、さらに支援を約束してくれていた叔父の気も変わり、八方塞がりになってしまった。