「推して知るべし」とは?意味や使い方をご紹介

「推して知るべし」。古風な言い回しで、若い人には馴染みの薄い言葉かもしれませんが、年配者を中心に、意外によく使われる表現です。漢字から意味は「推」測して「知」ることができるのではないでしょうか。今回は「推して知るべし」の意味と使い方を類語を含めご紹介します。

目次

  1. 「推して知るべし」とは
  2. 「推して知るべし」の構造
  3. 「推して知るべし」の使い方
  4. 「推して知るべし」の類語

「推して知るべし」とは

「推して知るべし」(おしてしるべし)とは、次のような意味を持つ言い回しです。ある事実(状況など)を根拠として推し量れば、容易に分かるはずだ自明のことだ

さらにわかりやすく言い換えれば、「これだけの事例や根拠があるのだから、そこから推測すれば、当然、分かるだろう」というところでしょう。

「推して知るべし」の語源

「推して知るべし」の語源は、漢文の「可推而知」です。日本語に訳すと、推測すれば知ることができる、という意味になります。

「推して知るべし」の構造

「推して知るべし」は、「推す+知る+べし」で構成されています。「推」は、音読みで(すい)、訓読みで(す)と読み、前へおす、おしはかる、よいものとしてすすめる、など多義的な意味を持ちます。

ここでの「推す」は、推し量る、たずねもとめる、という意味、「知る」は、知る、わかる、という意味です。

「べし」は、助動詞。推量(~にちがいない、~だろう)、意志(~しよう、~するつもりだ)、可能(~できる、~できるはずだ)、勧誘(~するのがよい、ふさわしい)、当然、義務、(~はずだ、~すべきだ)、命令(~せよ)を表します。

「推して知るべし」の「べし」は、推量、可能、当然の意味で用いられています。

「推して知るべし」の使い方

「推して知るべし」には、理解できて当然だ、容易に推測できるはずだ、というニュアンスがあるため、目下の人間から目上の人間に対して使うべきではないことに注意しましょう。

ただ、部下が上司に「推して知るべしですよ」と使うことは失礼に当たりますが、「知るべき」なのが上司自身でない場合なら問題はありません。

例えば、一般的な話題として、「~は~なので、~なることは(一般的に)推して知るべしですよね」という使い方をするのであれば、その上司に、「わかって当然でしょう?」と告げているわけではないので、非礼には当たりません。

「推して知るべし」の文例

(教員A)

一郎君は、この夏休みを遊び暮らしたのだから、東大を受けても、結果は推して知るべしだ。

(B子)

部下が上司を評価するシステムができたの。パワハラがお手の物の小林部長への評価は推して知るべしね。

(C男)

エースピッチャーの怪我が治りきらないままの勝負では、A高校が負けることは推して知るべしだった。

「推して知るべし」の類語

「想像に難くない」

「想像に難くない」(そうぞうにかたくない)とは、たやすく想像できる、説明をまたずとも容易に理解できる、という意味の言い回しです。

さまざまな論拠のあるなしには関係なく、その事実が周知のことや、当然のことであるときに用いる場合が多いようです。

【文例】あらゆる部門の長として実績をあげ続けた山本さんが、次期社長となることは、想像に難くない。

「自明の理」

「自明の理」(じめいのり)とは、説明するまでもなく明らかな道理それ自体で明らかなものや論理を意味する言葉です。

「推して知るべし」に比べると、周辺の状況を根拠とせずとも、それ自身が明らかな論拠を持っているというニュアンスが強い言葉です。

【文例①】海外のおもなコンクールで優勝や入賞を重ねてきたピアニストなら、日本で活躍できることは自明の理だ。
【文例②】営業部員全員が一丸となって頑張った今期、当支店が全社売上のトップを飾ったのは自明の理と言える。

「火を見るより明らか」

「火を見るより(も)明らか」とは、疑いをはさむ余地なく、きわめて確実、明白であることを意味する言い回しです。ネガティブな例に用いられることが多い表現です。

火は、誰が見ても火だとわかります。それ以上に明白だと言うのですから、「推して知るべし」を超えて、確実であることの最上級の表現と言えましょう。

また、周辺に根拠となるものがあって推測するというプロセスがなく、それ自身で確実であるというニュアンスが強い点は、「推して知るべし」よりも「自明の理」に近い表現です。

【文例】由美子さんは、所得が低いのにブランド品ばかり買っている。やがて家計が破綻するのは火を見るより明らかだ。

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