「土台無理」とは?
「土台無理」(どだいむり)は、副詞的用法の「土台」が「無理」を修飾する構成の言葉であり、元々実現することが不可能なこと、はじめからできないこと、を意味しています。故事成語のようですが、そうではありません。
「土台」が、「はじめから」を表し、「無理」が、「できないこと」を表しています。いろいろと努力してみたが結果として無理だった、というのではなく、最初から無理なときに使用されます。
「土台無理」をより深く理解するために、「土台」と「無理」の意味をそれぞれ説明していきます。
「土台」の意味
「土台」は、名詞と副詞の二つの用法がある言葉です。まず名詞の意味をご紹介しましょう。
- 木造建築の骨組みの最下部にあって建造物の柱を受ける横材。
- 建築物の最下部にある基礎。
- 物事の根本、事象の基礎。
副詞としては、はじめから、根本から、もともと、などの意味を持ちます。「土台無理」では、副詞としての「土台」が用いられています。「どだい、無理」と表記するとわかりやすいですね。
「無理」の意味
「無理」は、日常会話にも頻繁に登場する言葉です。大きくわけて下記の三つの意味を持ちます。
- 筋がとおらず、道理に合わないこと、また、そのさま。
- 実現するのが難しいことや、そのさま。
- 困難を押し切って行うこと、強引に行うことや、そのさま。
「土台無理」の「無理」は、二番目の意味で用いられています。
「土台無理」の使い方
「土台無理」は、根本から無理、そもそも無理、というきわめて強い不可能を表す言葉です。その使い方の例をあげると、下記のような場合に使われます。
- 自分の才能や資質から判断して、最初から実現が困難だという場合
- 物事の状況が悪すぎて、試みるまでもなく無理とわかる場合
さらに、上記2つの用法から派生して下記のような使い方もできます。
- いろいろ努力してみたけれど、最初から無理だったという自虐的な使い方。
- 所詮~だったものなあ、もともと無理だったのはわかっていたけれど、虚しい努力をしたものだというニュアンスで「土台無理だった」と過去形での使い方。
「土台無理」の文例
(A男)
僕に結婚式の司会を頼みたいって?人一倍緊張するし、声は小さいし、司会だなんて、土台無理な話だよ。
(B子)
落ちこぼれ女子高生が東大に受かった映画を観て、もしかしたら私だって、と一瞬夢見たけれど、平均偏差値45で勉強嫌いなら土台無理よね。
(C男)
業界トップを目指して頑張っている我が社だが、首位メーカーの販売店数はうちの二倍なのだから、土台無理な挑戦ではあるな。
(D子)
フィギュアスケーターを夢見ていたの。でも、才能とお金がなければプロになれないことがつくづくわかった。土台無理な夢だったのよ。
「土台無理」の類語
元々が、「どだい、無理」という言い回しであるため、類語というよりは言い換えの表現が多数存在します。
「根本的に・元々・初めから・元来」などの言葉の後に、「不可能・無理」を付けた言い回しがすべて類語と言えますが、ここでは、それ以外で類語となりうる言葉を二つ挙げてみます。
「無理筋」
無理筋(むりすじ)とは、物事を進めてゆく筋道ややり方が整わず、実現が不可能であること、無理な点がある作戦や手順、方策のことを意味する言葉です。将棋や碁において、理屈にあわない無理な指し手を意味する用語でもあります。
【文例】
- 社長の反対勢力の役員たちがクーデターを企んでいるようだが、現在の会社の好業績や社長の功績を思えば、解任劇など無理筋だ。
「万に一つもない」
万に一つもないとは、読んで字のごとく、万ある可能性のうち一つもありえない、つまり不可能という意味の言い回しです。
【文例】
- 僕がハーバード大学に合格する可能性は、万に一つもないよ。