「精神衛生上」とは?
「精神衛生上」(せいしんえいせいじょう)とは、「精神衛生の立場から~」「精神衛生の観点から言って~」という意味の言い回しです。
「精神衛生上」の「上」は、「立場上」「関係上」のように、話題にしている事柄が「精神衛生」に関係することを示すために用いられています。
「精神衛生」とは?
「精神衛生」とは、精神保健やメンタルヘルスとも言い、精神の健康を保ち、それを増進させるための科学的方策のことです。
例えば、諸種の精神病、神経症、依存症などを抱えている人は、物理的に身体を動かすこと自体はできても、その精神的な問題ゆえ、仕事やコミュニケーションなど、社会的適応に障害を抱えるケースが少なくありません。
そうした問題を科学的観点によって早期発見し、予防・治療する考え方が「精神衛生」です。「世界保健機関」(WHO)によって定義されている言葉であり、現代では、精神的健康は基本的な人権のひとつと考えられています。
「精神衛生上」の使い方
専門家でなくても使える
「精神衛生」は、上で述べたように精神的問題を科学的に言及する専門的な用語です。例えば、気分障害、うつ、薬物依存などの病気を抱えた人に対しては、精神衛生に基づいた専門的視点から対処する必要があります。
しかし、「精神衛生上」と言うときには、必ずしもその話題が科学的である必要はなく、また専門的な知見・診断に基づく必要もありません。
なぜならば、精神的問題を引き起こす要因は日常生活の中に広く偏在しており、例えば「心の平穏が乱れること」や「良心がとがめること」なども、広い意味では「精神衛生を害する(可能性がある)事柄」と言えるからです。
ゆえに「精神衛生上」は、「明確な根拠を用意できるわけではないものの、精神衛生の観点から言って何らかの影響があると思われる」という言い回しとして、専門家でなくても使用することができます。
基本的には「予防」の文脈で使う
「精神衛生上」は、基本的には精神的問題を予防するという文脈の中で用いられます。よく聞かれるのは、「精神衛生上、好ましくない」「精神衛生上、大切だ」などの形です。
もし本当に病気になってしまったら専門的に対処する必要がありますが、「予防」も精神衛生の重要な考え方です。病気にならないために、過度な負荷をあらかじめ避ける・軽減するという文脈で使われるのが「精神衛生上」という言葉です。
ただし、何が精神的問題の「予防」に当たるかは個人差も大きいため、単純に「個人的な気持ちで、なんとなく」という意図で「精神衛生上」という表現が使われることもあります。
用例
- 子育ては大変だろうけど、ずっと家にこもって子どもに付きっきりというのも、精神衛生上よろしくないよ。たまには羽を伸ばさないと。
- 彼の言い分には納得していないが、ずっと仲違いしたままというのも、私の精神衛生上好ましくない。もう一度話し合いの機会を持とう。
- 日々運動をし、よく笑うことは、精神衛生上大切であると医者も言っていた。
- 周りからは潔癖と言われるが、毎日部屋をすみずみまで掃除することは、僕の精神衛生上、どうしても必要なことなのだ。
「精神衛生上」の英語表現
「精神衛生」を英語で言うと、「mental health」です。既にカタカナ語としてもご紹介した「メンタルヘルス」ですね。
「精神衛生上」と言う場合には、基本的には「~のために」「~に備えて」という意味の「for」を前につけるのがよいでしょう。
また、少々堅めの表現ですが、「from a mental health standpoint」とすることで、「精神衛生の観点に立って(精神衛生上)~」と言い表すこともできます。
例文
- Continuing the job is not good for your mental health.(その仕事を続けることは、君の精神衛生上、好ましくない)
- From a mental health standpoint, you should not expect this result.(精神衛生上、今回の結果には期待しないほうがいいだろう)