「爪痕を残す」とは?
「爪痕を残す(つめあとをのこす)」とは、災害や事件が起こしたことが後まで影響して、被害がいつまでも残っている様子を表す言葉です。
どんなときに使う?
例えば大きな台風が来たとき、風雨の激しい時間はいつまでも続くものではなく、いずれは天候は回復します。台風が直撃してもライフラインに被害が出たりしなかったならば、台風が過ぎ去ってしまったあとは元通りの生活に戻れることも多いものです。
ところが台風が過ぎ去っても、停電がいつまでも復旧しないで日常の洗濯や炊事ができなかったり、水道が止まってしまって給水車に頼らざるを得なかったり、家が壊れてしまったりして、日常の生活に戻れないということもあります。
このようなときに、「台風が深い爪痕を残す」という表現が使われます。
「爪痕」とは?
「爪痕」には、次の二つの意味があります。
- 爪でひっかいてできた傷跡のこと。「猫の爪痕」「皮膚に残った爪痕」のように使われる。
- 災害や事件が残した被害や影響のこと。
1の場合は、「つめあと」と「そうこん」の二つの読み方がありますが、2の意味で「爪痕を残す」と使われるときは、「つめあと」と読むのが一般的です。
「爪痕を残す」例文
- この間の台風は強風と大雨がけたはずれだったため、直撃した地方のあちらこちらに深い爪痕を残していて、その被害はまだはっきりしていない。
- 先日の地震が大きな爪痕を残した九州地方では、いまだに多くの人たちが自宅に戻れずに、避難所での生活を余儀なくされている。
- 先の大戦は、敗戦国である日本に深刻な爪痕を残した。
- リーマン・ショックの衝撃は世界各国の経済にいまだに爪痕を残していて、日本もその例外ではない。
- 大雨で河川が氾濫して、近隣の低地に水が流れ込み、収穫間近だった畑にも並みならぬ痛ましい爪痕を残した。
「爪痕を残す」類語
「爪痕を残す」の類語には、次のようなものがあります。
- 猛威を振るう
- 傷跡を残す
- 深い傷を残す
- 悪影響が残る
- 負の遺産が残る
「爪痕を残す」英語での表現
「爪痕を残す」を英語で表現すると、次のようになります。
- leave scars on~
- leave traces on~
「leave」が「残す」、「scars」と「traces」がそれぞれ複数形の「傷痕」と「形跡」ですから、爪そのものは登場しないにせよ、日本語とよく似た表現ですね。
【例文】
That accident left deep scars on my mother.
あの事故は、私の母に深いキズ跡を残した(爪痕を残した)。
良い意味で使われる「爪痕を残す」
「爪痕を残す」という言葉は、基本的にはネガティブな意味で使われますが、最近では良い意味で使われていることもあります。その場合は、記憶に残るようなことをする、インパクトを与える、成果をあげる、存在を刻み込むといった意味合いです。
ただし、本来の意味とは異なるその使い方に違和感を覚える人もいるようです。ですから、オフィシャルな場では、そのまま「成果をあげる」、という言い方にしたり、「足跡を残す(そくせきをのこす)」などの慣用句にに言い換えたりするほうがベターでしょう。
「足跡を残す」とは、成し遂げる、成果や業績をあげる、と言う意味で、良い意味で使われる言葉です。
良い意味での「爪痕を残す」例文
- 今度のサッカーの大会では、たとえ負けたとしてもみんなの記憶に残るような爪痕を残してくるつもりだ。
- 映画に初出演した新人女優は、短いシーンの登場ながら、画面にくっきりと爪痕を残した。
- 若手の漫才師がオーディション番組出場への抱負を聞かれ、「出るからには爪痕を残します」と答えていた。
- 上司から、よく「営業マンなら、お客様に爪痕を残せ!」と言われたものだ。
- 合コンで、女の子たちに爪痕を残すようにはりきって自己紹介をしたが、すべってしまって失敗に終わってしまった。