「憂いて」とは?意味や使い方をご紹介

「憂い」は、「う・い」「うれ・い」と読むことができます。「憂いて」という日本語もありそうですが、なんと「憂いて」は誤りです。「憂」をめぐる言葉には、紛らわしいものが多くあります。今回は「憂いて」の誤用の経緯や、正しい言葉「憂えて」の意味と使い方をご紹介します。

目次

  1. 「憂いて」とは
  2. 「憂えて」の意味
  3. 「憂えて」の使い方
  4. 「憂えて」の類語

「憂いて」とは

「憂いて」は、残念なことに正しい日本語ではありません。そもそも、この誤った言葉の元となっている「憂い」に「うれ・い」「う・い」と2つの読み方があるため、「憂いて」も「うれ・いて」「う・いて」と読まれつつ、誤って用いられてきたのでしょう。

正しい用法は「憂えて」で、元となる動詞は「憂える」(うれ・える)です。したがって、「憂える」の意味を把握すれば、その誤用である「憂いて」の理解につながります。

今回は、「憂いて」の正しい用法である「憂えて」を解説します。ちなみに、「憂えて」を「う・えて」とは読みませんから、なんとも複雑ですね。

「憂えて」の意味

「憂えて」(うれ・えて)は、動詞「憂える」の連用形「憂え」に接続助詞の「て」がついて構成された言葉です。まずは「憂える」の意味をみていきます。

「憂える」は、大きく分けて次の4つの意味を持ちます。

  1. 良くない状態になるのではと心配し、不安を抱くこと
  2. 嘆き悲しむこと、嘆きや苦しみを人に訴えること
  3. 嘆願すること。
  4. 病気になること、病気に苦しむこと。

1と2が現代日本語に用いられており、3と4は古語の用法です。したがって、「憂えて」は、「良くない状態になるのではないかと心配して」「(良くない状態を)嘆き悲しんで、嘆きや苦しみを人に訴えて」という意味であることがわかります。

「憂えて」の使い方

「憂えて」は、「~を憂えて、~する(した)」というかたちで使います。あるいは、「~を憂えている(た)」「~が憂えている(た)のは、~だ」のように用います。

また、「嘆きや苦しみを人に訴えて」という意味で用いる場合は、必ず訴える内容をあとに続けます。

「憂えて」の文例

  • 小林先生は、鈴木君がいじめの標的となっていることを憂えて、ホームルームで他者を傷つけることのないよう訴えた。
  • 私は、幼いころから大好きだった川の汚染を憂えている。
  • 多くの国民が憂えているのは、悪政によって民主主義の根幹が揺らぎかけていることだ。

「憂えて」の類語

「危惧して」

「危惧して」は(きぐ・して)と読み、「危ぶみ、恐れて」という意味を持ちます。「危惧する」という動詞の連用形「危惧し」に接続助詞「て」がついて構成されている言い回しです。

「憂えて」のように、悲しみや嘆きの意味はありませんが、恐れ心配する、という部分での意味が重なります

文例:中村君は、自分の母校の経営が傾いていることを知り、廃校になることを危惧して多額の寄付をした。

「憂慮して」

「憂慮して」は、(ゆうりょ・して)と読みます。「心配して、思いわずらって、不安に感じ思いめぐらせて」などの意味があります。動詞「憂慮する」の連用形「憂慮し」に、接続助詞「て」がついて成り立っています。

「慮」は訓読みで「おもんぱか・る」と読み、あれこれと考えをめぐらせる、という意味があります。「心配し、不安に思う」という点で「憂えて」の類語たりえます。ただし、「慮」の漢字によって「あれこれを思いめぐらせる」という意味が加わっている点が相違しているでしょう。

文例:国のリーダーは、出生数が低下し、少子化が進む状況を憂慮している。

関連するまとめ


人気の記事

人気のあるまとめランキング

新着一覧

最近公開されたまとめ