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「ぼちぼち」の一般的な意味
「ぼちぼち」は、「そろそろ」と「ゆっくり」の同義語として使われます。それぞれ実際の使用例を見て意味を確認します。
「そろそろ」の同義語として
「電車の時間が気になるので、ぼちぼち（＝そろそろ）出かけましょう。」この場合は、電車の出発時刻まで少し余裕があるときの使われ方です。
反対に、出発時刻まで余裕がないときは次のようになります。「電車の時間が気になるので、すぐに出かけましょう。」
「ゆっくり」の同義語として
「時間があるのでぼちぼち（＝ゆっくり）歩いて行こう。」
関西の商人言葉としての「ぼちぼち」と「あきまへん」、「まあまあ」
「ぼちぼち」は関西の商人の間で日常的に使われる言葉です。ただし、独特のニュアンスを持った言葉として発達してきました。実際にどのように使われるのか会話形式で見ていきましょう。
道端でばったりと出会ったA商人とB商人、二人は日頃から顔見知りで親しい間柄です。A商人から声をかけます。
「ぼちぼちでんな」
A商人：「儲（もう）かりまっか？」（商売はうまくいっていますか？―標準語訳：以下同）
･･･「こんにちは」という挨拶のかわりに、「儲かりまっか？」と聞きます。
B商人：「ぼちぼちでんな。」（普通です。）
･･･一番差し障りのない返事です。良くも悪くもない普通の状態であることを意味しています。「ゆっくり」に近い意味です。
A商人：「そらよろしおうすな。」（それは結構ですね。）
･･･特に何かを聞き出すこともなく、日常の挨拶で済みました。
「あきまへんな」
A商人：「儲かりまっか？」（商売はうまくいっていますか？）
B商人：「あきまへんな。」（少し調子が良くないのです。）
A商人：「え～！どうかしやはりましたんか？」（え～！どうかされたのですか？）
B商人：「実はでんな、こんなことがありまして、もうさっぱりですわ。」（実を
言いますと、こういうことがありまして、全くだめです。）
A商人：「なんでそんなことになりましたんや？」（なぜそのようなことになったのですか？）
以下、B商人の不調の説明（愚痴？）と、A商人の聞き込みが続きます。
「まあまあでんな。」
A商人：「儲かりまっか？」（商売はうまくいっていますか？）
B商人：「まあまあでんな。」（少し好調です。）
A商人：「へ～！そら結構でんな。是非聞かしとうくれやす。」（へ～！それは結構で
すね。是非聞かしてください。）
以下、B商人の好調の説明（自慢話？）と、A商人の聞き込みが続きます。
商都大阪ではマーケティング活動は日常茶飯事
B商人は、「あきまへんな」または「まあまあでんな」のどちらの場合も、表面的なことを中心に話をします。反対に、A商人はB商人の話をもっともらしい顔をして聞いてはいますが、その原因もしくは本質的な問題点を聞き出そうと様々な角度から探りを入れます。
なぜなら、それがB商人に固有の問題なのか、あるいは業界にとって影響の大きい問題なのかを見極めることが重要だからです。このように商都大阪の商人は、日常のちょっとした挨拶の中にも商売のヒントを探っています。
「ぼちぼち」は生活の知恵が育んだ言葉
厳しい競争を強いられる商都大阪で生きていく中で、ともすれば人間関係がギスギスしたものになりかねません。そこで、「ぼちぼち」というなんとなく柔らかで、かつ少しとぼけた印象のある言葉が重宝されたのです。
つまり、「ぼちぼち」は、人間関係を円満に保とうとした大阪商人の生活の知恵が育んだ（はぐくんだ）言葉なのです。ここに「ぼちぼち」という言葉の真髄があります。ただし、「ぼちぼち」は大阪のみならず関西地方でよく使われる言葉です。
商人以外の人の間でもよく使われる「ぼちぼち」
関西では商人ではない人の間でも「ぼちぼち」は日常の挨拶でよく使われます。例えば、久しぶりに会った友人に対して「最近どう？」と聞きます。聞かれた方は大抵「ぼちぼちやなあ。」と答えます。その真意は「変わりはないよ。」、「普通にやっているよ。」という意味です。商人言葉が普通の人の間にも広がった例です。挨拶一つで人間関係が円満に回ればいいですね。