労る(いたわる)とは?労る(いたわる)の意味
弱い立場にある人や疲れているものに対して、思いやりの気持ちを持って接すること。優しくいたわり、慈しむことを指します。
労る(いたわる)の説明
「労る」は「いたわる」と読み、相手を思いやる優しい気持ちを表す言葉です。特に、病気の人や高齢者、疲れている人など、弱い立場にある人に対して使われます。例えば、長年連れ添った配偶者を労わる言葉をかけたり、受験で疲れた子どもを労わったりする場面で用いられます。また、人だけでなく、長年使ってきた愛車や体の一部(例えば「胃を労わる」)に対しても使えるのが特徴です。古語では「病気になる」という意味でも使われていましたが、現代ではほとんどその意味では使われません。読み間違いを防ぐため、「労わる」と表記されることもありますが、どちらも正しい表記です。
思いやりの気持ちを伝える素敵な言葉ですね。日常でもっと使いたいです。
労る(いたわる)の由来・語源
「労る」の語源は古語の「いたはる」に遡ります。この言葉は「労(いたわ)しい」という形容詞から派生したもので、元々は「苦労する」「疲れる」という意味を持っていました。平安時代の文献では「病気になる」という意味でも使われており、時間の経過とともに「苦労している人を慈しむ」という現在の意味へと変化しました。漢字の「労」は「力(ちから)と火(ひ)の組み合わせ」を表し、炎のように激しく働く様子を意味することから、疲れた人をいたわるという現代の用法に繋がっています。
思いやりの心を表す、日本語の美しさが詰まった言葉ですね。
労る(いたわる)の豆知識
「労る」と「労う」はよく混同されがちですが、全く別の意味を持つ言葉です。「労う(ねぎらう)」は「他人の功績を認めて感謝する」という意味で、目上の人から目下の人に対して使われることが多いです。一方「労る」は「弱い立場の人を慈しむ」意味で、立場に関係なく使えます。また、読み間違いを防ぐため「労わる」と表記されることもありますが、これは許容される表記です。さらに面白いのは、この言葉が人だけでなく物に対しても使える点で、例えば「長年使った車を労る」といった表現も可能です。
労る(いたわる)のエピソード・逸話
有名な落語家の桂枝雀さんは、高座で「労る」という言葉について面白いエピソードを語っています。ある時、弟子が「師匠を労わりたい」と言ったところ、「それは違うぞ、師匠を労う(ねぎらう)だな」と即座に訂正したそうです。さらに「労るは弱い者を慈しむこと、労うは功績を称えること。俺はまだ弱ってないぞ」と笑いを取ったという逸話が残っています。また、美智子様(上皇后)は、ご公務で施設を訪問された際、常に相手の立場に立ったお言葉をかけられ、まさに「労る」心を体現されていると多くの国民から敬愛されています。
労る(いたわる)の言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「労る」は日本語固有の和語であり、漢字は後から当てられた「宛字」です。この言葉は「イタル」(痛む)と同根で、もともと「痛みを感じる」という意味から発展しました。文法上は上一段活用の動詞で、「いたわらない」「いたわります」「いたわって」などと活用します。興味深いのは、この言葉が「他動詞」として機能する点で、対象を必要とするのが特徴です。また、心理的動詞としての性質を持ち、話し手の感情や態度を表現する際に用いられるため、日本語の情緒的な表現の豊かさを象徴する言葉の一つと言えるでしょう。
労る(いたわる)の例文
- 1 残業続きで疲れ切った同僚に、『少し早めに帰って休んだら?』とそっと労る言葉をかける
- 2 受験に失敗して落ち込んでいる子どもを、何も言わずにただそばにいて労る親の気持ち
- 3 長年連れ添ったパートナーが、お互いの体調を気遣いながら自然と労り合う関係
- 4 チームメイトがミスをした時、責めるのではなく『大丈夫だよ』と労る言葉をかけるリーダーの優しさ
- 5 年老いた親のことを思って、無理をさせないようにとつい口うるさく労ってしまう自分に気づく
「労る」と類語の使い分け
「労る」には似た意味の言葉がいくつかありますが、それぞれ微妙なニュアンスの違いがあります。適切に使い分けることで、より正確な気持ちを伝えられます。
| 言葉 | 読み方 | 意味 | 使用場面 |
|---|---|---|---|
| 労る | いたわる | 弱い立場のものを慈しみ思いやる | 日常的な気遣い全般 |
| 労う | ねぎらう | 功績を称えて感謝する | 仕事の成果に対する評価 |
| 慈しむ | いつくしむ | 深い愛情をもって大切にする | 家族や愛する人への感情 |
| 慰める | なぐさめる | 悲しみや苦しみを和らげる | 失敗や悲しい時のケア |
特に「労る」と「労う」の混同に注意が必要です。上司が部下を「労う」のは適切ですが、部下が上司を「労る」のは失礼にあたる場合があります。
現代社会における「労る」の重要性
ストレス社会と言われる現代では、互いを労り合う心がけがより一層重要になっています。職場でも家庭でも、ちょっとした気遣いが人間関係を良好に保ちます。
- メンタルヘルス対策としての労り - 職場のストレス軽減に効果的
- 世代間の相互理解 - 若者が高齢者を、高齢者が若者を労り合う
- 自己労り(セルフケア)の重要性 - 自分自身をいたわることも必要
- 多様性を認める社会 - 様々な立場の人を互いに労り合う姿勢
小さな労りの積み重ねが、大きな信頼関係を築く礎となる
— 日本のことわざ
実際の使用例と注意点
「労る」を使う際の具体的な例と、気をつけるべきポイントをご紹介します。適切な使い方をマスターして、より良い人間関係を築きましょう。
- 適切な例:『お疲れ様です。無理されないでくださいね』(同僚へ)
- 適切な例:『ゆっくり休んでください』(体調不良の家族へ)
- 不適切な例:『社長、お疲れを労って差し上げます』(目上への直接的表現)
- 代替表現:『お体をお労りください』(より丁寧な表現)
特にビジネスシーンでは、目上の人に対して直接「労る」という言葉を使うよりも、「お疲れ様です」や「ご自愛ください」といった慣用表現を使う方が無難です。状況と関係性に応じて、適切な表現を選びましょう。
よくある質問(FAQ)
「労る」と「労う」の違いは何ですか?
「労る(いたわる)」は弱い立場の人を慈しみ思いやることを指し、「労う(ねぎらう)」は相手の功績や努力に対して感謝や賞賛の気持ちを表す言葉です。労るは上下関係なく使えますが、労うは目上の人が目下の人に対して使うことが多いです。
「労る」は物に対して使っても良いですか?
はい、問題なく使えます。例えば「長年使った愛車を労る」や「疲れた体を労る」のように、物や自分の体に対しても使用できます。対象を大切に慈しむ気持ちがあれば、人以外にも適用可能です。
「労わる」という表記は間違いですか?
いいえ、間違いではありません。読み間違いを防ぐための許容表記として認められています。特にビジネス文書や公的な場面では「労わる」と表記されることも多く、どちらも正しい使い方です。
労ると慰めるの違いは何ですか?
「労る」は相手の状態に寄り添い慈しむ積極的な行為で、「慰める」は悲しみや苦しみを和らげる受身的な行為です。労るは日頃の疲れや努力に対して、慰めるは具体的な悲しみや失敗に対して使われる傾向があります。
ビジネスシーンで労る言葉をかける場合の注意点は?
目上の人に対しては「お疲れ様です」や「お体をご自愛ください」など、敬意を込めた表現を使いましょう。同僚や部下に対しても、相手の立場を考慮した適切な言葉選びが重要です。過度な干渉は逆効果になる場合もあるので、さりげない気遣いが望ましいです。