「荒唐無稽」の意味
「こうとうむけい」と読みます。「荒唐無稽」は、言っていることに根拠がなく、とりとめがないことや、その様子のことを言います。平たく言うと、話がでたらめなので現実味がない、という意味になります。
それぞれの漢字の意味を見ていくと、「荒唐」がとりとめがないことをさしています。この「荒」と「唐」は、ここでは特に意味はもっておらず、「コウトウ」(中国語では「huāng・táng」「フアン・タン」)という響きが、はてしなく広大な様子を表現しています。
「無稽」の「稽」は、考えるという意味です。そこに「無」がついて、考えがないとなり、そこから転じて根拠のないことやでたらめなことを指すようになりました。「無稽」を「無形」とすると誤りになりますので、ご注意ください。
この二つの「荒唐」と「無稽」という言葉が合わさって「荒唐無稽」という、根拠が無くとりとめのないことを指す四字熟語が生まれました。この「荒唐」と「無稽」の二つの言葉は、それぞれ別の書物に記された言葉が由来となっているのですが、どういう由来から「荒唐無稽」が誕生したのか見てみましょう。
「荒唐」の由来
紀元前300年頃の中国の思想家「荘子(そうし)」の著書、『荘子(そうじ)』の天下篇に、「荒唐之言」と記されているのが由来です。
「荘周(そうしゅう)その風を聞きてこれを悦び、謬悠(びゅうゆう)の説、荒唐の言、端崖(がけばた)の無きの辞を以てす」という一文の中にある言葉なのですが、どう言った内容かと言いますと、「荘周はその説を学んで喜び、でたらめな説や根拠のない広大な話を、果てしない言葉を使って書いた。」という意味です。
ここから「荒唐の言」が生まれ、「荒唐」がとりとめのないことや、根拠のないことを意味するようになりました。そして、この一文からはもう一つ「謬悠(びゅうゆう)之説」という四文字熟語も生まれていて、意味は「荒唐無稽」とほぼ同じで、何の根拠も無いでたらめな話のことを指します。
「無稽」の由来
紀元前500年頃の中国の思想家である孔子(こうし)が編纂したといわれている、中国最古の歴史書『書経(しょきょう)』の中の、「稽(かんが)ふる無きの言は聴く勿(なか)れ」という言葉が由来となっています。
これは、帝と「兎(う)」という人物の会話の中で「根拠のない話には耳を傾けないほうがいい」と、帝が兎に諭している言葉です。ここから「無稽の言」という言葉が生まれ、「無稽」という言葉が、根拠のないことやでたらめなことを意味するようになりました。
「荒唐無稽」の使い方
「荒唐無稽」の意味や成り立ちがわかったところで、どの様に使えばいいのか例文を見てみましょう。
1.そんな「荒唐無稽」な企画が、会議で承認されるわけがない。
2.あなたの主張は、「荒唐無稽」な作り話にすぎない。
3.世界中の人々から「荒唐無稽」だと笑われても、私は自分の夢を諦めない。
4.ガリレオの地動説は、当時の人々からは「荒唐無稽」だと受け入れられなかったが、現代ではその功績が見直されている。
5.その子どもが熱心に話す「荒唐無稽」な物語は、偽りだと分かっていてもどこか面白おかしく、本当のことのような温もりに溢れている。
いかがでしたでしょうか。「荒唐無稽」の意味や使い方をおわかり頂けたでしょうか。「荒唐無稽」という言葉は、とても聞きなれた言葉ですが、その中には相手を否定するようなニュアンスが含まれてます。ですから、使い方には十分に注意し、使う場所と相手を選んで使いたいものです。