それがしとは?それがしの意味
主に武士など男性が、自分自身をやや改まって指す古風な一人称。「わたくし」「拙者」に近い自称で、現代では時代劇や歴史小説の中で使われることが多い言葉です。加えて、名前をはっきり示さない「誰それ」「某(なにがし)」の意味で用いられる場合もあります。
それがしの説明
「それがし」は、読み方をそのまま「それがし」といい、漢字では「某」と当てられることもあります。中心的な用法は、武士をはじめとする男性が自分を指して使う一人称で、「拙者」「身共」などと並ぶ改まった自称として時代劇や歴史小説にたびたび登場します。もう一つの用法として、具体的な名前を伏せて「某(なにがし)」に近い意味で「誰それ」を指す不定称の使い方もあったとされ、こちらは古典作品で見かけることがあります。現代の日常会話で自分を指して用いることはほとんどなく、あえて古風・武骨な雰囲気を出したいときや、時代設定のある作品の台詞として使われるのが実情です。
「それがし」は、いかにも武士らしい響きを持つ一人称ですね。一人称と不定称の二つの顔を持っている点を知っておくと、古典や時代劇を読むときにより深く味わえます。
それがしの由来・語源
「それがし」は、指示語の「其れ(それ)」に接尾語的な「がし」が付いた形と説明されることが多い語です。もともとは名前をはっきり言わない人や物を指す不定称、すなわち「某(なにがし)」に近い「誰それ」の意味で用いられ、そこから、自分の名を明示せずへりくだって示す言い方として一人称に転じていったと考えられています。「なにがし」と「それがし」は語構成も意味も近く、古典では対にして「なにがしそれがし」と並べて『あれこれの人々』を指す使い方も見られます。厳密な成立時期や変化の過程には諸説があり、断定は難しいものの、自称としての用法は武家社会の広がりとともに定着していったとみられます。
一つの言葉が「誰それ」から「わたくし」へと意味を広げていく様子は、日本語の奥行きを感じさせますね。役割語として今も生き続けているのも面白いところです。
それがしの豆知識
「それがし」は現代ではもっぱら時代劇や歴史ものの台詞として耳にする言葉で、実生活で使う人はほとんどいません。同じ古風な武士の一人称でも、「拙者」がやや柔らかくへりくだった響きを持つのに対し、「それがし」は重々しく格式ばった印象を与えるといわれます。ただし、こうしたニュアンスの差は作品や演出によって描き分けられるもので、時代や身分によって厳密に決まっていたわけではないとされます。漢字では「某」と書かれることもあり、この字は「なにがし」とも読むため、文脈によって読み分けが必要になる点も知っておくと便利です。
それがしのエピソード・逸話
歴史小説や時代劇では、名乗りを上げる場面で「それがし、○○と申す」と自己紹介する台詞がしばしば用いられます。名を告げる直前に自分をへりくだって「それがし」と示すことで、武士らしい折り目正しさや気概を演出しているといえるでしょう。また、決意を述べる場面で「それがしにお任せあれ」「それがしが参る」と言い切る台詞は、視聴者や読者に頼もしさを印象づける定番の言い回しとされています。こうした使われ方から、現代の私たちは「それがし」という一語だけで、なんとなく甲冑や刀を帯びた武士の姿を思い浮かべてしまうのかもしれません。
それがしの言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「それがし」は不定称から一人称へと意味が移り変わった興味深い例です。名前を明示しない「誰それ」という不定の指示から、自分の名をあえて示さずにへりくだる自称へと転じる流れは、相手や自分を直接名指しすることを避ける日本語の婉曲的な言語習慣とよく調和しています。同様の発想は「なにがし」「それがし」だけでなく、へりくだった自称一般に広く見られるものです。また、「それがし」は文体(レジスター)としては古風で格式ばった書き言葉・台詞に属し、現代標準語の「わたし」「ぼく」とは明確に層が異なります。役割語として、時代劇の武士キャラクターを象徴する語彙の一つになっている点も特徴的です。
それがしの例文
- 1 それがし、○○の家臣にて△△と申す者にござる。
- 2 この一戦、それがしにお任せくだされ。必ずや役目を果たしてご覧に入れます。
- 3 それがしの一存では決めかねますゆえ、殿のご下命を仰ぎたく存じます。
- 4 古典の一節に、名を伏せて「それがし」と記された人物が登場する。
- 5 時代劇の脚本では、武士の一人称としてしばしば「それがし」が用いられる。
「それがし」の二つの用法と使いどころ
「それがし」には大きく分けて二つの用法があります。一つは、武士など男性が自分を指して用いる改まった一人称。もう一つは、名前をはっきり示さない「誰それ」「某」に近い不定称です。現代で耳にするのはほとんどが前者で、時代劇や歴史小説の台詞として登場します。一方の不定称の用法は、古典作品を読むときに知っておくと理解の助けになります。
- 一人称としての「それがし」=「わたくし」「拙者」に近い自称
- 不定称としての「それがし」=「誰それ」「某(なにがし)」に近い言い方
- 現代では時代劇・歴史小説の台詞で使われるのが中心
- 日常会話で自分を指して使うことはほとんどない
- 漢字で「某」と書かれると「なにがし」との読み分けが必要
古風な一人称の比較
「それがし」を理解するうえで参考になるのが、同じく古風な一人称との比較です。時代劇や歴史小説には「拙者」「某」「身共」など、いくつもの自称が登場します。それぞれのおおまかなニュアンスを整理しておくと、作品を読むときに人物像を捉えやすくなります。なお、これらの印象は演出や作品によって幅があり、あくまで一般的な傾向として捉えてください。
| 語 | おおまかな読み | 一般的な印象・使われ方 |
|---|---|---|
| それがし | それがし | 重々しく格式ばった武士の一人称。名乗りの場面で多い |
| 拙者 | せっしゃ | へりくだった柔らかめの武士の一人称。時代劇で定番 |
| 某 | それがし/なにがし | 自称にも不定称にも用いられる。読みは文脈次第 |
| 身共 | みども | やや尊大にも響く武士・目上の男性の自称とされる |
| わたくし | わたくし | 現代にも通じる改まった自称。性別を問わない |
こうして並べてみると、「それがし」は自称としての格式の高さと、名を伏せる不定称の性格を併せ持つ点で、独特の位置を占めていることが分かります。
現代で「それがし」に出会う場面
現代の私たちが「それがし」に出会うのは、ほとんどが創作や引用の中です。時代劇のドラマや映画、歴史小説の台詞、武士を題材にしたゲームやアニメのキャラクターなど、時代設定や武骨な雰囲気を演出したい場面で用いられます。役割語として、この一語だけで『いかにも武士らしい人物』というイメージを喚起する力を持っている点が大きな特徴です。
- 時代劇のドラマ・映画の台詞
- 戦国・幕末などを扱う歴史小説の登場人物の自称
- 武士を題材にしたゲームやアニメのキャラクターの口調
- 古風・武骨な雰囲気をあえて出したい文章やSNS投稿
- 古典を読む際に不定称「それがし」として登場する場面
日常のビジネス文書や会話でそのまま使う言葉ではありませんが、意味と背景を知っておくと、時代劇や古典を味わうときの解像度がぐっと上がります。「それがし」が持つ格式ばった響きと、名を伏せるという奥ゆかしさの両面を意識しながら、作品の中での使われ方に注目してみると面白いでしょう。
よくある質問(FAQ)
「それがし」は何と読みますか?
そのまま「それがし」と読みます。漢字では「某」と当てられることもありますが、この字は「なにがし」とも読むため、文脈によって読み分ける必要があります。特別に難しい読み方があるわけではなく、仮名で「それがし」と書かれることが多い言葉です。
「それがし」は主に誰が使う言葉ですか?
古くは武士をはじめとする男性が、自分を指して改まって用いた一人称とされています。現代の日常会話で自分を指して使うことはほとんどなく、もっぱら時代劇や歴史小説などの台詞、あるいはあえて古風な雰囲気を出したい場面で用いられます。
「それがし」と「拙者」はどう違いますか?
どちらも武士が使う古風な一人称ですが、「拙者」がややへりくだった柔らかい響きを持つのに対し、「それがし」は重々しく格式ばった印象を与えるといわれます。ただし、この違いは作品や演出によって描き分けられるもので、時代や身分ごとに厳密に決まっていたわけではないとされます。
「それがし」に一人称以外の意味はありますか?
はい。もともとは名前をはっきり示さない「誰それ」「某(なにがし)」に近い不定称としても用いられたとされています。古典作品では、人物の名を伏せて「それがし」と記す使い方が見られます。一人称と不定称の二つの用法を持つ点が、この言葉の特徴です。
「それがし」は女性も使いましたか?
一般には武士など男性の一人称として説明されることが多い言葉です。ただし、不定称としての「それがし」は性別を問わず用いられます。自称としての使用がどの範囲まで広がっていたかは資料や時代によって異なる可能性があり、細かな点は一概には言い切れません。